第十七章 アンチゲイ団本拠地
ヒロミチを追って荒野を突き進んでいた中田は、かつてないほどの違和感に襲われた。
「何だ……? 音が、色が、消えていく……」
背後に立ちふさがったのは、アンチゲイ団の隠密部隊。彼らが放つ「虚無の鎖」は、中田の複雑なバイ・エナジーを絡め取り、その情熱を凍りつかせた。
「くっ……ヒロミチに会う前に、こんなところで……!」
多勢に無勢、さらに未知の波動に翻弄された中田は、意識を失い闇に沈んだ。
中田が目を覚ますと、そこは無機質な灰色の巨大なホールだった。壁には一切の装飾がなく、ただ冷たい空気だけが流れている。
「目覚めたか、バイの求道者よ」
玉座に座る影が、中田に語りかける。アンチゲイ団の最高幹部の一人だ。
「お前のその『迷い』に満ちたエネルギーは、磨けば至高の『無』へと至る。どうだ、我らアンチゲイ団の幹部となり、その煩わしい感情を捨て去る気はないか?」
中田はふらつきながらも立ち上がり、不敵に笑った。
「……断る。俺の迷いは、俺の情熱そのものだ。それを捨ててまで得る平和など、死んでいるのと変わらん。俺が意識しているのは、ヒロミチ……あいつの放つ輝きだけだ!」
「生意気な。ならばここで、その余計な感情ごと消し去ってやろう」
幹部の合図とともに、ホールに控えていた精鋭たちが一斉に中田へ襲いかかろうとした。
その瞬間、ホールの巨大な扉が、まるで花びらが散るように粉々に砕け散った。
「失礼。美しい調度品の一つもない、趣味の悪い部屋ですね」
霧と共に現れたのは、白銀の髪をなびかせるセバスだった。
「セ、セバス!? なぜここに!」中田が叫ぶ。
「退屈しのぎですよ。……さあ、無愛想な皆さん。私の美学に触れる準備はできていますか?」
「おのれ、侵入者め! 殺せッ!!」
アンチゲイ団の幹部たちが放つ、黒い虚無の波動が一斉にセバスへ集中した。爆発音が響き、ホールが揺れる。
しかし、爆煙が晴れた後、そこには傷一つ負わず、埃一つ付いていないセバスが立っていた。
「……何だと!? 組織の総攻撃をまともに受けて、無傷だと!?」
セバスは優雅に服の袖を払った。
「私の愛は、清らかな水と同じ。形を持たず、しかし何物にも染まらない。あなたたちの『無』など、私の美しさの前では、ただの淀んだ水溜まりに過ぎません」
セバスの瞳に、鋭い光が宿る。
「中田くん、立ちなさい。ヒロミチが待っていますよ。ここは私が少し掃除をしておきましょう」
セバスの圧倒的な実力に、アンチゲイ団の本拠地が震撼した。
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