第十五章 愛の螺旋
アンチゲイ団の幹部、「無愛のゼクス」。彼の振るう黒い杖から放たれるのは、あらゆる情熱を急速冷凍する『アパシー・ウェーブ(無関心の波動)』だった。
「無駄だ。愛などという個人の執着が、我々の平穏なる無に勝てるはずがない」
ヒロミチの黄金色のフェロモンが、ゼクスの波動に触れるたびに煤け、灰色に変わっていく。
「体が……冷たい……。僕、何のために戦ってるんだろう……」
心の奥底にある「ときめき」や「情熱」が吸い取られ、ヒロミチの瞳から光が消えかかる。
「ヒロミチさん、しっかりしてください!!」大亀が盾となってゼクスの攻撃を防ぐが、その強靭な筋肉も虚無の力で萎縮していく。
「ダメよ、このままじゃ全員『無関心』に飲み込まれるわ!」小林が叫ぶ。
ヒロミチの意識が深い闇に沈もうとしたその時、脳裏に雷鳴のような、それでいて艶やかな声が響き渡った。
『ヒロミチ、甘ったれるんじゃないわよ!!』
「トモヒロ師匠……?」
『愛は奪われるものじゃない、与え尽くすものよ! 相手が冷たいなら、あなたが太陽になって抱きしめてあげなさい! ゲイの愛は、全宇宙を包み込むほど広大なのよ!!』
ヒロミチの瞳に、爆発的な光が戻った。
「……そうか。倒そうとするから拒絶されるんだ。なら、その空虚ささえも、僕が愛してみせる!」
ヒロミチはゼクスの漆黒の攻撃をあえて避けず、正面から突っ込んだ。
「何っ、死に急ぐか!?」
ゼクスの驚きを無視し、ヒロミチはゼクスの細い体に、ありったけの情熱を込めて抱きついた。
「君の孤独も、その冷たさも……全部僕が暖めてあげる!!」
「な、何だこの熱量は!? 離せ、不潔な情熱を浴びせるな!!」
ゼクスが激しく抵抗するが、ヒロミチは離さない。至近距離から、全生命力を賭した必殺技が炸裂する。
「ゲイ・リベレーション・エターナル・ハグ!!」
黄金の光柱が夜空を貫く。しかし、ゼクスの「無」の根源は深く、ヒロミチ一人の力ではあと一歩、決定打に欠けていた。ヒロミチのオーラが限界を迎え、霧散しそうになったその時――。
「……一人で格好つけるなと言ったはずだ、若造!!」
背後から、かつてないほど濃密な紫色のオーラがヒロミチを包み込んだ。
復活したコレナガが、ヒロミチの背中にその掌を押し当てていた。
「俺の、一度は死んだこの愛……お前の光に上乗せしてやる! 往けぇ、ヒロミチッ!!」
コレナガの熟練された闘気がヒロミチの情熱と融合し、黄金と紫の螺旋となってゼクスを飲み込んだ。
「ぎゃああああああッ!! 心が……色が……世界に色が戻ってしまうぅぅ!!」
ゼクスの灰色の仮面が粉々に砕け散り、彼は光の中に消滅した。その後ろにいたアンチゲイ団の構成員も巻き込み同じく消滅させた。そして、街を覆っていた灰色の霧が晴れ、ネオンシティに再び、騒がしくも美しい光が戻ってきた。
「……やった、のか」
ヒロミチはその場に崩れ落ちた。コレナガがそれを支え、不器用に微笑む。
「悪くない一撃だった。ヒロミチ、お前の言う『愛』、もう少しだけ信じてみてもいいかもしれん」
大亀と小林も駆け寄り、四人はボロボロになりながらも勝利を噛み締めた。
しかし、空には不気味な三日月が浮かんでいる。アンチゲイ団の本体は、まだ動き出したばかりだった。
大亀はアンチゲイ団とはどこにあるのかとコレナガに聞き、愛を無くす組織を止めるためその本拠地へヒロミチ達は乗り込むことにした。
その頃、トモヒロの道場で。
トモヒロはヒロミチがアンチゲイ団を倒したことを気づき微笑をして言った
「ふふ、よくやったわヒロミチ」
トモヒロは鏡の前でリップを塗り直し、その向こう側に座る中田に視線を送った。
「中田、あなたも準備はいいかしら? 次の舞台は、あなたが主役よ」
中田は無言で立ち上がり、かつてないほど鋭く、妖艶な「バイ・エナジー」を全身から立ち昇らせた。
感想があればお書きください




