第十二章 アンチゲイエナジー
山を下りた一行が辿り着いたのは、色とりどりの光が交錯する大都市「東京」だった。
「わあ、すごい活気だね!」ヒロミチが目を輝かせる。
「ヒロミチさん、あそこの屋台の串焼き、筋肉に良さそうですよ!」大亀も食欲を爆発させている。
そんな二人を横目に、小林は少し沈んだ表情で遠くのビルを見つめていた。
「……二人とも、ごめんなさい。私、ちょっと会わなきゃいけない人がいるの。少しの間、別行動にさせて」
「小林さん?」
ヒロミチが問いかける前に、小林は夜の雑踏へと消えていった。
小林が訪れたのは、街の外れにある静かなバーだった。そのカウンターの隅で、一人グラスを傾ける男がいた。
「久しぶりね……コレナガ」
男はゆっくりと振り向いた。かつてはヒロミチにも劣らぬ「ゲイ・エナジー」の使い手として期待されていた男、コレナガだ。しかし今の彼の瞳に、かつての情熱の灯火はない。
「……小林か。何の用だ。俺はもう、その世界からは足を洗ったんだ」
「今、面白い子と一緒に旅をしているの。ヒロミチという子よ。彼なら、あなたが諦めた『真実の愛の極み』に辿り着けるかもしれない」
小林はコレナガを仲間に誘うが、彼は冷たく笑った。
「愛? そんな不確かなもののために、俺はすべてを失った。誰がそんな夢物語を信じるものか」
コレナガは立ち上がり、鋭い視線で小林を射抜いた。
「そこまで言うなら、試させてもらう。そのヒロミチという男が、俺の絶望を塗り替えるほどの『愛』を持っているのかどうかをな」
翌日、ヒロミチと大亀が街を散策していると、突然周囲の通行人が立ち止まり、まるで操り人形のように二人を包囲した。
「な、なんだ!? 街の人たちが……!」大亀が身構える。
ビルの屋上に、コレナガの姿があった。
「俺は、他人の心の『隙間』を操り、負の感情を力に変える。ヒロミチ、お前が本物なら、この絶望に満ちた街の人々を、その愛で救ってみせろ」
コレナガが放つのは「アンチ・ゲイ・エナジー」。それは愛を信じられなくなった者の、冷たく鋭い波動だった。
街の人々は虚ろな目で、ヒロミチたちに襲いかかる。
「戦えない……。街の人たちを傷つけるわけにはいかないよ!」
ヒロミチは防御に徹するが、コレナガの冷徹な指揮により、包囲網は狭まっていく。
小林は物陰からその様子を祈るように見つめていた。
(ヒロミチ……。あなたの愛は、一度折れてしまった男の心をも、再び燃え上がらせることができるの?)
絶望を知る男・コレナガ。彼が突きつけた過酷な試練に対し、ヒロミチの「ゲイ・リベレーション」はどのような奇跡を起こすのか。街の喧騒の中、魂の試験が幕を開ける。




