第十一章 山頂の共鳴
「無駄よ、ヒロミチ。その熱すぎる想い、私の布ですべて受け流してあげるわ!」
小林が霧の中を踊るように舞う。
「ハァッ!!」
ヒロミチが渾身の力で「ゲイ・リベレーション」を放つ。しかし、小林は蝶が羽ばたくような軽やかな身のこなしでそれを回避した。
「惜しいわね。でも、止まっている標的しか狙えないようじゃ、私には届かないわ」
ヒロミチは焦った。セバスとの出会いで力みすぎているのか。
だがその時、拘束されていた大亀が地響きのような声を上げた。
「……ヒロミチさん! 俺を使ってください!」
「大亀くん!?」
大亀は全身の筋肉を膨張させ、自分を縛っていた『脱力・シルク』を、その圧倒的な質量で力任せに引きちぎった。
「小林! あんたの動きは速すぎて捉えられねえ……。だが、俺が地面ごとあんたを固定してやるぜ!」
大亀が大きく跳躍した。
「マッスル・グランド・ドロップ!!」
150キロの巨体が山頂に叩きつけられ、激しい衝撃波が小林の足場を奪う。
「なっ……空中へ逃げるしか……!」
小林が宙に浮いたその瞬間、彼は気づいた。ヒロミチがすでに、彼の着地予測地点に拳を構えて待っていることに。
「小林さん、これが僕たちの……二人の愛の形です!」
逃げ場のない空中で、ヒロミチの拳が小林の胸元に吸い込まれた。
「ゲイ・リベレーション・フルバースト!!」
先ほどまでとは違う、澄み渡るようなエネルギーが小林を貫く。それは破壊の衝動ではなく、相手の魂を肯定し、孤独を癒やす光だった。
「ああ……。私の幻惑が……溶けていく……。なんて温かい拳なの……」
小林の仮面が割れ、その下から美しい涙がこぼれ落ちる。彼はゆっくりと地面に降り立ち、その場に膝をついた。
「……負けたわ。あなたたちのコンビネーション、完璧だった。ただの力と技じゃない。お互いを信じ切る『愛』に完敗よ」
小林は晴れやかな顔で二人を見上げた。
「小林さん、怪我はないかい?」
ヒロミチが手を差し伸べると、小林はその手をしっかりと握り返した。
「ええ。ねえ、ヒロミチ。私をあなたの旅に同行させてくれない? その『真実の愛』がどこまで届くのか、この目で見届けたくなったの」
「もちろんだよ! 大歓迎だ」
意外だったのはその後の大亀だ。
「へへっ、小林。あんたのあの布の術、あれ筋肉の凝りをほぐすのにも最高じゃねえか! 今度俺の背中も揉んでくれよ!」
「あら、大きな坊や。私の施術は高いわよ? でも、あなたのその逞しい背中なら、特別にサービスしてあげてもいいわね」
大亀と小林は、筋肉と美容という意外な共通点で、あっという間に意気投合した。
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