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紫と会合と七人

「それでは会合を始めさせていただきます。司会進行は私、八雲紫が務めます」

 慣れた様子で紫が音頭をとった。

 

 博霊神社の居間には既に各勢力の長が集まっていた。


 霊夢、魔理沙、妖夢、早苗のトラブルシューターたち。


 冥界の白玉楼からは西行寺幽々子。


 迷いの竹林の永遠邸からは蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)。


 人里近くの命蓮寺からは聖白蓮(ひじりびゃくれん)。


 実は紫はもっと多くの勢力に声をかけていたのだが、集まったのはこの七人のみだった。来ていない面子はほぼ予想通り。


「いない方々については後で私がなんとかしますのでご心配なく。まずは状況を確認しましょうか――」



 紅魔館が謎の侵入者に襲われ、迎撃に出た美鈴に咲夜さらにはレミリアまでもがやられたという知らせは紫を通じてすぐに皆に伝えられ、事態の発覚から迅速に会合開催の運びとなった。


 レミリアといえば幻想郷に最初の異変を起こした勢力の強者として知られており、その彼女がやられたとなれば当然混乱も大きくなる。


 すぐにこのことを天狗が新聞で一般に伝えてしまうので混乱はここからさらに大きくなるだろう。



「――といったところ。皆さんから何かありますかしら?」

 話終えた紫は霊夢が用意したお茶をぐいと飲み干した。


「まず聞きたいんだけど……」

 幽々子がおずおずと手を挙げた。


「紅魔館って幻想郷の勢力の中で一番人の多いところよね。あれだけいて誰も侵入者を見ていないの?」


「私もそれが気になったのよ。あのとき屋敷にいた全員に訊ねたのだけれど誰も侵入者について覚えていなかったわ。正確に言うと何らかの力で『覚えられないようにさせられていた』ってところかしら」


 紅魔館の者も会合に呼びたかったのだが搬送されたレミリアらについていってしまったと紫はため息をついた。


「そうだったのね。知覚に訴える程度の能力を持っているということなのかしら。ねぇ妖夢」

「は、はい」

 顎に指をあて考え込む幽々子と実は話を聞いていなかった妖夢。


「私からも質問よろしいでしょうか?」

 今度は白蓮だ。

 僧侶なのに金髪に紫のグラデーションのロングウェーブという直接見なければ想像すらできない髪の持ち主でもある。


「その侵入者さんはもしかして外の世界から来たのではないでしょうか? 私達を別とすれば、紅魔館を襲うなんてそんなことできる人も妖怪もそうそういませんよ」


「それについては私も同意見。実は先日、一瞬だったんだけど外の世界からこっちに迷い込んできた反応があったの。私が接触する前に消えちゃったから妖怪にでも食べられたと判断したんですけどね。今も反応が追えないところから察するにどうやら幽々子の指摘どおり気配や反応を隠すような能力を持っているみたい」


 霊夢が例の笑い茸を食べた夜のことだ。笑い転げていなければ何より彼女がいち早く彼らに気がついたことだろう。


 きらびやかな衣装に身を包んだ輝夜も白蓮に続いた。

「じゃあ、私も。これは質問じゃないんだけど伝えるように言われてたからね。うちで預かってる吸血鬼たちは永琳が面倒を見てる。目を覚まして証言できるようになるまでにはまだかかるけど運び込まれた段階でとりあえず命に別状はないって」


 元は月の姫である輝夜と医学をはじめとしたあらゆる分野に通じる永琳の主従は本拠地である永遠邸を怪我人のために解放することを決めていた。彼女らは今回の会合にも予想よりも協力的であった。


 今はレミリアたちへの薬の投与、そして主を目の前でやられた妖精メイドらの心のケアを行っているとのこと。


「敵が次の行動を起こす前に話を聞けるといいのだけど。とにかくその件については永遠邸にお願いしますわ」

 永琳に任せておけば問題ないとその場の全員が判断した。

 

 さて、と紫が話題を転換した。


「まず、今回の事態は既に異変の域を超えている。弾幕ごっこだけでの解決は望めないと思っていいわ。殺し合いも辞さないくらいの覚悟でいってほしいと思います」


 紫の言葉に一同頷いた。


「それともう一つ。皆のことを信用してないわけじゃないんだけど次に敵と遭遇したら、うまく時間を稼いで私に知らせてほしいの。スキマを使って援軍を送ります。それすら間に合わなくて自分の身が危なくなったら一般の避難を待って逃げてください。敵の情報を得ることさえできれば後に繋がります」


 異変であれば霊夢らに任せておけば確実に解決してくれる。しかし意図も分からず敵意だけを見せて襲ってくる相手に対して彼女らがどこまで通用するかは微妙なところだ。


「現場に残存していた妖力からレミリアがスピア・ザ・グングニルを敵に対して使用していたことが分かっています。つまり、それに耐えるような相手だということです。何度も言いますが無理をしないでください」


「ちょっと待った」

 ここまで黙っていた魔理沙が発言した。


「レミリアは外でやられたのに屋敷の中に運び込まれてたんだよな? それにあの門番はともかくとして咲夜も命に別状はないときた。わざわざ紅魔館を襲ってあれだけ暴れておいて不自然じゃないか?」


 妖夢も魔理沙に同調した。

「私も気になっていました。聞かせていただいた状況からしてその気になれば三人とも殺すことができたはずです。いや、死んでほしかったとかそういうつもりではありませんけど……」


 日頃から異変の解決に駆け回っている者ならではの意見だ。言われてみれば二人の主張は的を射ている。


「すると紅魔館を攻撃しながら殺すつもりはなかったと? そんなことがあるのでしょうか」

 あくまで異変を起こす側だった白蓮からすると不可解に思えるようだ。


 ここで紫は一番気になる人物に目を向けた。

「霊夢はどう思う?」


「どうもこうもないわよ。異変なら適当に待ってから動けばいいけど今回はそうもいかない。分からないことは敵を見つけて直接聞けばいいのよ」


 巷では妖怪退治の赤い通り魔として恐れられる霊夢。普段は出不精なのだが今回はやる気になっているようだ。

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