ケモノとメイドと防衛戦線
人間の里は文字通り人間が住む場所なのだが、半人半獣が講師を務める寺子屋や天狗が作った新聞を売る店が存在するなど人外に対して完全に排他的というわけではない。幻想郷における人妖の共存という秩序のもとで成り立っている。
しかし、今は異常事態だ。異変の時ですら最低限の自重をする妖怪たちが人間の里を目指して闊歩している。この知らせは直ちに里じゅうに知れ渡り、人々はみな自らの家にこもり事態に備えている。
そして咲夜がそんな人間の里にたまたま買い物に来ていた。彼女の当初の予定では今ごろは全ての品目を揃えているはずだったのだが、妖怪襲来の知らせに皆店を閉めてしまったのだ。
人がいなくなった静けさのなか、茫然とする咲夜に声をかける者があった。
「ちょうどよかった。手を貸してくれないか!」
振り向くと青い服に銀髪の女性。上白沢慧音だ。何を隠そう彼女こそ半人半獣にして寺子屋の講師を務める人間の守護者。当然この事態の収拾のために奔走している。
「人間たちは既に私が避難させた。南の街道は命蓮寺が守ってくれている。頼む、私と一緒に北の守りについてほしい」
「私もか弱い人間なんだけどね。いいわ、浮わついた妖怪たちにお灸を据えてやりましょう」
館で待っているお嬢様への言い訳を練りつつ咲夜は慧音とともに妖怪の撃退へ向かった。
***
「ふぅ……こんなところッスかね」
一仕事終えた黄は上空から里を見下ろしていた。そこへあとから追いかけてきた四人が合流。再び五人になった。
リーダー格が黄に話しかけた。
「首尾はどうだ?」
「いい感じッス。直にトラブルシューターたちが来るんじゃないですかね」
黄の能力が妖怪たちを興奮させ、凶暴にさせている。彼が直接手を下さずとも霊夢たちと戦うことが可能なのだ。
そして彼の言葉通り霊夢、魔理沙、そして早苗がこちらへ飛んで来るのが見えた。五人が彼女らに見つからないのは何らかの細工によるものらしい。
「さっそくお出ましだな。お手並み拝見といこう」
「ここから先へは行かせない!」
里へ繋がる街道を進む妖怪に威勢よく、そして容赦なく弾幕を浴びせる霊夢。光弾と御札が大きな渦となって敵を巻き込んでいく様は恐ろしくも美しい。
華麗に宙を舞う霊夢に爪や牙を剥いて襲いかかる妖怪たち。こちらはお祓い棒で打ち据えられる。
ここを霊夢に任せる判断をしたのか魔理沙と早苗は反対側へと飛び去っていった。
「おいおい。一人で全部相手取るつもりか? 流石に無謀だと思うが……」
「青、決めつけるのはまだ早いぞ。あいつは何か仕掛けるつもりだ」
どうやらサブリーダー然とした男は青というらしい。
霊夢の周囲に光が収束していく。大技を放つ構えだ。
「霊符【夢想封印】!
瞬間七色に輝く激しい弾幕が正確無比に敵を追尾し、まとめて蹴散らした。
「あれが博麗の巫女の夢想封印か。用心が必要だな。桃、緑。対策はできそうか?」
「そういうのは緑の担当でしょ。何か考えてよ」
「えっ……桃さんそれはないですよ」
女二人で擦り合いを始めた。呆れた顔の青。
「とりあえずここはもういいだろう。俺たちは霧雨魔理沙と東風谷早苗についても探りをいれにいこう。魂魄妖夢と十六夜咲夜についても現れる可能性がある。黄、引き続き頼むぞ」
霊夢らトラブルシューターを丸裸にする計画は着々と進行しつつあった。




