異変と妖怪と始動
2ヶ月は長かった。すみません。
霊夢といえば幻想郷でも名の知れた存在ではあるが、普段の彼女からはその様子を伺い知ることはできない。
異変が起きれば素晴らしい活躍を見せるものの、そう毎日異変が起きるはずもなく専ら神社の管理や人里への買い出し、やって来る人妖たちとの歓談に終始。トラブルシューターの威厳も何もあったものではない。
そんな霊夢のもとに今日も客人がやって来た。前回のように着地で掃いた落ち葉を吹き散らかすことはしない。その代わり、霊夢が干していた巫女服が吹き飛んでいった。
そのまま地面に落ちれば洗濯の手間がフイになってしまうところだが、地面を蹴って飛び上がり全て空中で掴み取った。
「ヒュウ! やるなぁ霊夢」
下で口笛を吹く魔理沙を睨み付け再び竿にかけ直した。
「人のことはいえないけど、あんたも暇ね」
「いやあ、私は暇なんじゃなくて気ままなんだぜ」
ずかずかと上がり込む魔理沙。縁側に腰かける。
「幽霊の一件には驚いたがあれから何もないな。この魔理沙さんには異変という活躍の場が必要だってのに」
薄いお茶をいれる霊夢。きちんと出すあたり言葉ほど魔理沙を邪険にするつもりはないようだ。
「冗談じゃないわよ。バカのバカ騒ぎなんてそうそう起きなくていいの。こっちの身がもたないわ、まったく」
魔理沙としては異変解決という行為にどこか喜びを感じている節がある。長い付き合いの霊夢もそれをよく理解しているのだ。
「それで? 愚痴りに来たわけ?」
「いやいや。また森で新しいキノコを見つけたからお裾分けだ」
あんたが持ってくる食べ物の信用と神社の信仰は同じくらいねと霊夢。前回のことがあってさすがに懲りたのだろう。
その後は年頃の少女らしい話に花を咲かせる……が、その余裕はあまりなかった。
談笑する二人のもとへさらなる来客が現れた。
早苗だ。息せき切ってこちらへ駆けてくる。
「霊夢さん魔理沙さん大変です! 人里に妖怪が!」
***
霊夢たちが神社を飛び立つ一時間前。
幻想郷のどこかにある洞窟で例の五人が秘密裏に動こうとしていた。
「幻想郷についての情報収集も一通り済んだ。行動を起こすぞ」
残りの四人が頷いた。
「どう計画を立てる? 基本ここでは俺ら以外みんな敵だ」
「それならもう考えてある。まずは土着の妖怪に人里を襲ってもらう。黄、いけるか?」
「任せてくださいっス!」
フアンスと呼ばれた男が洞窟を飛び出して行った。
「黄はうまくやるだろうけどさ、次はどうするのよ?」
二人いる女の一人がリーダー格に尋ねる。
「まあ焦るな。時間はたっぷりある。それに黄の役目はあくまでも人里にトラブルシューターたちの目を向けさせることだ。本気でやりあうまではしない」
ここで黙っていたもう一人の女が挙手して発言した。
「じゃあ、何もすることがないなら黄さんの活躍を観戦に行きませんか?」
とくに反対する理由もなかった。四人は洞窟をあとにして人里のほうへ向かった。




