83.エミリオ合流
「それじゃあ彼らが今どこにいるかも……。」
「正確な場所は分からない。」
ノエルは首を横に振る。
「そんな……せっかく急いでここまで来た意味が……。それに三人でオルディアを回るなんて危険すぎる。一刻も早く合流したいのに……。」
エミリオは険しい表情で視線を落とす。そんなエミリオの肩にノエルがぽんっと手を置く。
「エミリオが合流する事はもちろん覚えていたよ。だから、王都の西側だけ回ってすぐに戻ってくると言っていた。」
「え?オルディアの王都の西側といえば……。」
「エミリオ!」
突然頭の上からから声がしたため、エミリオはバッと夜空を見上げる。すると……月を背にして舞う三人の人影が目に入った。
「ヴィア!ランドルフ!オズワルド!」
空を飛ぶシルヴィアたちにエミリオは目を見開く。
「ぎゃーーーー!」
「……。」
ドッシーーーン、と音がしてランドルフとオズワルドが落ちた。その後すぐシルヴィアがふわりと地面に降り立つ。
「あー、ごめんなさい。間違えて途中で【重力減少】解いちゃいました。エミリオの姿が見えてテンションが上がって……。」
シルヴィアは苦笑いを浮かべる。
「ふざけんなよ、ヴィア!」
「だから城壁を飛び越えるなんて非常識な事はやめるように言ったんだ。」
ランドルフとオズワルドは土埃をはらいながら立ち上がる。
「落ちたのはほんの数メートルですよ。魔道具つけてるから怪我はないはずです。」
「まあ確かに。」
「……ヴィアに振り回されて、ヴィアに助けられる。」
ノエルがポツリと呟く。
「とにかく無事に合流できて良かったです!」
シルヴィアはエミリオに駆け寄る。オルディアの王都は国の西側に位置しているため、王都の西側にはほとんど国土は持たず、高い山に囲まれている。つまりエミリオと合流するため、シルヴィアたちはすぐに王都に戻ってくる予定だったのだ。
「ああ。皆んなも無事で良かった。」
エミリオはホッとした様子で微笑む。
「今日はもう遅い、とにかく休もう。くたびれた。」
オズワルドがフラフラとエミリオに寄りかかる。
「大丈夫か、オズワルド。」
「ヴィアが無茶苦茶な移動ばかりするから、オズワルドはずっと酔った状態で……。」
「可哀想に……。肩をかそう。」
「エミリオの部屋もすぐに用意させるよ。行こう。」
男四人で肩を寄せ合い移動を始める。
「え、ちょっと待って下さい。私が悪いんですかー?ねえ?ねえってばーーー!」
シルヴィアは慌ててその後を追いかけた。
翌朝、久しぶりにエミリオが指揮を執るミーティングが開かれた。1週間くらいしか経っていないが、すでに懐かしいとシルヴィアは思う。
「そうですか……。闇魔術の研究家や王宮の歴史学者でも治療法は分からなかったんですね。」
魔人に関する情報は抹消されているため、彼らが使う魔術についてももちろん記録は残っていないだろう。
「打つ手なしか。」
「……。」
一同は暗い顔でその場はしんと静まり返る。
「ま、まあアーノルドだし。急に起き上がって普通に動き始めるかもしれないから。」
ランドルフが明るい声で励ます。
「そう、ですね。私たちが落ち込んでいても仕方ありません。」
「ああ、早く仕事を終わらせて皆んなでアーノルドの所へ帰ろう。」
「それがいいな。」
何とも苦しい励ましだったが、皆に少し明るさが戻る。
「で、これからどうするんだ?」
「エミリオと合流できたことで、かなり推進力が上がると思います。予定通り、オルディア各地を順番に回っていきましょう。」
「ダークホールの再発は今のところ報告されていない。一度討伐した場所に再度魔物が増殖することはないはずだ。」
「エミリオも合流したし、ヴィアの暴走も少しはマシになるだろう。」
「ヴィアに舵を任せていたら、俺たちの命はいくらあっても足りないからな。」
あんまりな言われようにシルヴィアは頬を膨らませる。
「私だって頑張ってたんですから、そんな言い方酷くないですか?」
「ヴィアは頑張らなくていいよ。ほどほどがちょうどいい。本当、危ないから。」
エミリオにも嗜められて、がっくりと肩を落とすシルヴィア。それを他所にエミリオを中心とした男四人で次の目的地が決められていくのであった。




