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【第三部再開】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
第二部 オルディア編

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80/114

80.地獄の【磁石】移動

「ぎゃああああーーー!」

「もう無理……。」

「……気持ち悪い。」

「ランドルフうるさいです!」

「ノエル、危ないから意識飛ばさないでください!」

「オズワルド口からなんか出てます!」


オルディアに入った翌日、シルヴィアがいきなり全力で移動しようとしたところ、とんでもない大惨事になった。そのため今はスピードを少し落として移動している。


「誰もがお前のように頑丈だと思うなよ。」

「ご、ごめんなさい。」


とはいえ、2日目以降は三人とも【磁石】による高速移動に慣れて、普通に会話できるレベルになった。当初の7割くらいのスピードで進めている。


「もうそろそろ王都が見えてくると思う。」

「無事であってくれ!」


オルディアに入ってから4日目。予定よりも1日遅れで王都に到着できそうだ。そんな会話をしている間にも米粒ほどの大きさの建築物が目に入る。


「あれか。」

全員が目を細める。


「……っ!先に行きます。」

シルヴィアは自分にかかっている【磁石】だけ解除し、一度地面に降りる。


「「「え?」」」

全員が振り返った。


「【土魔術 磁石最大】」

しかし、振り返った先にシルヴィアはもういなかった。一瞬にして抜き去り、遥か先を進んでいる。ぐんぐん米粒だった建造物に近づき、それが王都をぐるっと一周囲む城壁である事が分かる。


「間に合った。」

何に……か。ドオオオーン、と大きな音と共にその城門が壊される瞬間に。


「【土魔術 圧縮解除】」

シルヴィアはバトルアックスを解除して右手に持ち構える。


「で、でかい……。」

そのまま切り込もうとしたが、作戦を変更する。城壁の周りをさらに取り囲むオーガの群れ。城壁の大きさで遠目には分からなかったが、群全体が通常のオーガよりもかなり大きい。


「【土魔術 重力増大】」

城門から中に入ろうとしているオーガの群れを地面に落とす。しかし、城門が崩れた事に気がついた周囲のオーガたちが雪崩れ込んでくる。


「っ……。全部防ぎきれない。」

「【氷魔術 氷魔結散】」

城門をくぐりかけた数体のオーガが氷漬けになり砕け散る。【凍結】よりも攻撃範囲は小さいがかなり極力な魔術だ。


「雪山じゃなければ僕も戦力になるよ。」

「ノエル!」

「【炎魔術 炎魔劫火】」

「【雷魔術 雷神滅落】」

「ランドルフ!オズワルド!」

城壁を取り囲むオーガの群れにそれぞれ大技を繰り出した。三人がシルヴィアに追いつき、全員で城門の前に並ぶ。


「石の城壁外なら、俺も全力出せるな。」

「同じく。」

「気をつけて下さい。オーガの上位種、ハイオーガです。」

「なるほど、でかいと思った。」

「しかし、お前の魔道具を付けていては、普通のオーガ相手にするのと変わらんな。」

「……確かに。」

無数のハイオーガを前に全員怯む事なく立ち塞がる。


「俺とランドルフで城壁を一周してくる。」

「お前とノエルでここを守れ!」

「分かりました!お気をつけて!」

「ああ。」

「じゃあな。」


ランドルフとオズワルドは一緒に行動するのかと思ったが、ランドルフは反時計回り、オズワルドは時計回りに魔術を発動しながら走って行ってしまった。


「魔道具をあてにして油断しなきゃいいけど。」

「ヴィア、こっちも油断できないよ。」

ランドルフとオズワルドの魔術を掻い潜った個体が城門に向かって走ってくる。片っ端からノエルは氷漬けにして砕き、シルヴィアは地面に這いつくばっている個体を回転しながら落下してバトルアックスでとどめをさす。


「ヴィア、その技。」

「以前アンティカで挑戦した技です。あれからこっそり練習していたので、もう酔いませんよ。」

シルヴィアは血まみれのバトルアックスを肩に担ぎ、ニコリと笑う。


「……ヴィア自身はすごく可愛いのに、すごく怖いね。」

「褒められているのか、貶されているのか分かりませんね。」

シルヴィアは苦笑いしながら再び高く飛び上がった。

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