75.新しいリーダーの誕生
陣形を組み直す。
……?
組み直す。
……?
組み直……
「何が正解か分かんねえな。」
「完全に同意します。」
「4人しかいないんだし、臨機応変に行こう。」
「そうだな。」
「……。」
ひと呼吸置いてから三人同時にノエルの方に振り返った。
「オルディアに入った瞬間、ノエルが指揮を取り始めた……。」
「やはり皇帝の血を継ぐ者、だな!」
「ここからはノエルについて行きます!」
三人は目を輝かせてノエルを見つめる。新たなリーダーの誕生だ。
「いや、雪山で先陣はちょっと……後ろから方角の指示出そうかな。」
ノエルは顔を引き攣らせて後ろに下がった。
まあ一悶着あったが、一旦雪山という事で炎魔術使いのランドルフが先陣。
「近づいてくる魔物は全部燃やし尽くす!」
オズワルドとノエルがそれに続く。
「まあ、妥当だな。」
「僕は指示と、弓での攻撃に絞らせてもらうよ。」
アーノルドとイレーネがいないため、殿と白魔術師としての役目を担うシルヴィア。
「魔力が切れると野営の用意も圧縮解除できませんので、皆さんできるだけ怪我のないようにお願いしまーす。」
「やばいなそれ。」
「ああ、気をつけよう。」
ただの白魔術で魔力が切れることはなかろうが、念には念を入れた方がいい。
「それじゃあ、行こう。オルディアへ。」
ノエルの言葉に三人とも頷く。
「まずはまだ魔物がうようよとしているこの山を無事におりましょう。」
「とりあえず真っ直ぐ進んでみよう。今のオルディアがどのような状態か分からないから、行き先も決められない。」
「オーケイ!」
「よーい……どん。」
まさかのオズワルドの掛け声で走り始めた一行。
「あ、気に入ったんですか?その言葉。」
「うるさい。間違えた。」
「いいじゃん、分かりやすいし。」
「では、これからは恒例にしましょう。」
「僕も言いたい。」
「あ、俺も。」
「じゃあ、持ち回りにしましょうか。」
年長組がいなくなった事で、精神年齢がガクッと落ちたのは気のせいではないはずだ。
「【炎魔術 炎魔劫火】」
木々がないのをいいことに、ランドルフはいきなり炎魔術の大技を繰り出す。
「草木があるところではやめて下さいね。山火事の鎮火作業してる場合じゃないので。」
「分かってるって!」
「遠距離にいる魔物は僕が仕留める。」
そういうと、ノエルは弓を引き絞り矢を放って魔物を仕留める。弓単独でもかなりの腕前だ。そして魔道具の効果もばつぐんだ。
「【土魔術 重力増大】【土魔術 磁石】」
「【雷魔術 白蛇雷鳴】」
「【炎魔術 刺突蒼炎】」
シルヴィアが集めた魔物をランドルフとオズワルドで仕留める。
正直、エミリオとアーノルドがいなくなり物理攻撃力がかなり落ちると思ったが、ランドルフとオズワルドが魔法と武器の合わせ技を完成させておいてくれたため何とかなりそうだ。もちろん、雪山でなければノエルの新技も役に立つだろう。
「ふう。何とか山を下りましたね。」
思ったよりも何とかなったが、やはり四人でダークホール周辺に集まっていた魔物を相手にするのはなかなか骨が折れる。個々の強さもさることながら、その数が厄介だ。
「先陣って疲れるんだな。」
息を切らして膝に手を置くランドルフ。
「大丈夫ですか?【白魔術 体力回復】」
「サンキュー、ヴィア。助かる。」
「いえ。今までは二人でやってましたからね、単純に二倍は動かないといけないです。」
「お前もな。」
「ヴィアは大丈夫?」
ノエルに加えてオズワルドまで自分の事を気遣ってもらえた事に目を丸くする。そしてすぐにじわりと視界が滲む。
「いちいち喜んだり、驚いたり、泣いたり忙しいやつだな。」
「ヴィア……泣いてる。」
「泣いてませんよ。汗ですよ汗。」
シルヴィアは涙を隠すために先頭を歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ。」
「分かりません!」
「分からないのに先に行くなよ!」
「ヴィア、こっちだよ。」
「世話が焼けるな。」
皆んなが優し過ぎて、調子を狂わせながらも新しい旅はスタートしたのだった。




