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【第二部完結】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
八章.ダークホールとは、ボス撃破

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70.シルヴィアの葛藤

「がはっ……。」

魔術が当たった瞬間、アーノルドが吐血し苦しみながら倒れ込んだ。


「アーノルド!」

「きゃあ!」

聖魔術使いのエミリオでは相性が悪く効果が薄いと判断し、アーノルドに狙いを変えたのであろう。イレーネとオズワルドがアーノルドに駆け寄った。


「オズワルドはアーノルドには触れない方がいい。」

エミリオは攻撃を中止しながらも、視線と両手は魔人に向けて警戒を続ける。土埃がおさまると、中からゆらりと魔人の姿が見える。彼を覆っていたダークホールは消えている。そして同時にこの人のダークホールも消えていた。


「【土魔術 重力最大】」

「【土魔術 重力減少】」

「【土魔術 圧縮解除】」

「【土魔術 重力最大】」

シルヴィアは同じような魔術を四つ連続で発動した。


一つ目を魔人、二つ目を自身、三つ目と四つ目はバトルアックスにかける。するとどうなるのか、魔人這いつくばる、シルヴィア高く飛び上がる、バトルアックス使用サイズになる、バトルアックスごと魔人に墜落する。


ドオォォォーーーーーン!


めちゃくちゃすごい音がした。通常の人間であれば真っ二つになっているはずだが、魔人は身体は繋がったままだ。しかし血を吐いて意識は失っている。シルヴィアはバトルアックスの刃の部分に足をかけたまま叫ぶ。


「イレーネ!浄化を!」

アーノルドに対して白魔術をかけて良いものが悩んでいたイレーネは、立ち上がり恐る恐る魔人近づく。オズワルドも側に付き添う。アーノルドは以前としてのたうち回り、苦しんでいる。肌の色もだんだんと黒紫に変色してきている。


「早く!」

「はいっ!【浄化】」

シルヴィアの切羽詰まった声に、イレーネは慌てて詠唱する。すると魔人はどんどんと縮んでいき、あっという間に子どものサイズになった。ペルソの樹海にいたドラゴンのように魔人も消えて無くなるのだろうと誰もが予測した。しかしそこでシルヴィアがまた叫んだ。


「ストーーーープ!」

「え?!」

イレーネはその声に驚いて【浄化】をやめる。すると魔人の若返りもそこで止まった。


「シルヴィア、どうして止めるの?」

「このままだとその人、消えて無くなっちゃいます。」

「それでいいんじゃないのか?」

「……とりあえず、先にアーノルドを診ます。」

手や足、耳などが黒紫色になっている。


「チアノーゼかな。こんなに急激に……肺が心臓に穴が空いているかも。」

シルヴィアは頭を回転させる。


「アーノルドの胸部に向かってイレーネの浄化と私の超治癒を一緒にかけてみましょう。【白魔術 魔力回復】」

魔人の浄化で力を使い果たしたイレーネの魔力を回復する。


「分かりました!」

「行きます!」

「【浄化】」「【白魔術 超治癒】」


【浄化】を一緒にかけたのは、魔人の闇の魔力でできた何か物理的なものが刺さっている可能性を考えたからだ。その場合、【超治癒】だけかけても穴は塞がらない。そしてその考えは見事的中した。アーノルドの悶絶の表情が徐々に和らぐ。そのまま眠ってしまったようで寝息が聞こえてきたのでシルヴィアもイレーネも魔術を止める。シルヴィアは膝から崩れ落ち、両手も地面についた。


「おい、さっきの魔人がいなくなってるぞ!」

ランドルフが背後で驚きの声を上げている。


「まだ動けたのね。」

「周辺を探すか?」

「……いや、魔人の気配はしない。もう近くには居ないみたいだ。」

気配の探知に鋭いエミリオが周囲を確認し首を横に振る。


「どこへ行った……。」

「……。」

シルヴィアだけは黙ったままだ。皆、さすがに疲れたのだろうとそっとしておいてくれる。


「見つけた……。」

シルヴィアは誰にも聞こえない小さな声で呟く。何を見つけたのか。それは時間を少しだけ巻き戻そう。

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