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【第二部完結】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
八章.ダークホールとは、ボス撃破

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66.時間を下さい、本当に

パチパチと薪のはぜる音でシルヴィアは少し覚醒する。ああソファで眠ってしまっていたのだな、と思うが瞼が上がらない。もう少しこのままでいようと思っていると、ガチャリとドアが開いて誰かが談話室から出て行った。扉の方からエミリオの声がしたので、出て行ったのはエミリオかもしれない。静かだなと思ってまた意識が遠のき始める。


しかしふと嫌な予感がしてシルヴィアはパチリと目を開ける。

「ち、近くないですか?」

寝起きには刺激の強すぎる、破壊力抜群の美しいご尊顔が目の前にあった。


「おはよう。」

人好きのする笑顔を浮かべたアーノルドだ。至近距離で聞くその声も色気がありすぎてぞくりとする。


「な、何をしてるんですか?」

シルヴィアは怪訝な顔で尋ねる。


「寝顔が可愛いなーって思って見てたけど、寝起きの顔も可愛いね。」

とりあえず距離を取りたくて後ずさりたかったが、ソファの背が邪魔をして思ったよりも動けない。ちょっと眠っていただけなのだが、なぜ急にこんなにも危機的な状況に陥っているのだろうか。


「あの……。」

「ん?」

せっかくとった距離を、すぐさま詰められる。先ほどよりも近い気がするのは絶対に気のせいではない。


「こんな所で眠ってしまってすみませんでした。部屋に戻りたいのでちょっとだけ退いてもらってもいいですか?」

「何で?」

更に目の前に迫ってくる推しと同じ顔に耐えられず、アーノルドの胸を思い切り両手で押し返す。


「何でって、悪ふざけが過ぎますよ。アーノルド。」

「ふざけてないよ。私はいつでも真剣だ。」

「……っ。」

全力で押していた手をやんわりと取られ、口付けられた。


「私は……ヴィアの事を愛している。ずっと……ずっと一緒にいたい。……どちらかこの世を去るその時まで。」

「ーーーーーーっ。」

「ダメかな?」

そう言いながらも、シルヴィアの手首の周りにに口付けをするアーノルド。まるで手錠をかけられている錯覚に陥る。そしてシルヴィアが一番弱い、眉を下げた笑顔を繰り出すところが本当にあざといと思う。


アーノルドの顔も声ももちろん好きだ。前世の頃から本当に大好きだ。しかし推しだったアーノルドと今のアーノルドは違い過ぎて頭が大混乱している。さらに一番の問題は、シルヴィアの『推し(好き)』はアーノルドの『愛してる』とは全く性質が違うものなのだ。


「じ、かんが欲しいです。」

「時間?」

「今はまだアーノルドをそういう風には見れない……です。」

「私の事は嫌い?」

「……嫌いじゃないです。」

次に出されるであろう質問が頭をよぎり、シルヴィアは少し躊躇って答える。


「じゃあ好き?」

やはりその問いが投げられる。


「そりゃもちろん『推し(好き)』ですがっ……。」

「私も大好きだよ。」

思い切り抱きしめられ、耳元で囁かれる。時間が欲しいってくだりはどうなったのだろうか。思いっきり胸を押し返しているがびくともしない。魔術で吹き飛ばす……のは違うか。ソファー壊れたら困るし。股間を蹴り飛ばす……のも違うか。再起不能になって責任を取るなんて事になったら元も子もない。大声を出す……のも違うか。見知らぬ人が来て、戦闘が始まったら死人が出るかもしれない。シルヴィアは泣いていた。心の中じゃなくて普通に。


ガチャリ。


「「あ……。」」

ちょうど良いところにオズワルドとイレーネが帰ってきた。泣きながら『助けてくれ!』と目で訴える。


ガチャリ。


「待った!なぜ閉める。戻ってこーーーい!」

結局、シルヴィアは泣きながら大声で叫ぶ。


「あははははは。」

シルヴィアを抱きしめたまま大爆笑のアーノルドであった。

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