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【第二部完結】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
六章.ゲームの強制力、最大のピンチ

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51.ウィスプの仕業

ウィスプには人に幻覚を見せる能力はない。前世の姿に見えていた時点でウィスプ自体が変化していたとも考えにくい。そしてあの幻聴。前半部分はシルヴィアの心の声と対話していたため、ウィスプの声ではないはずだ。おそらく他に原因があるのだろう。7人同時に幻覚をかけて操り、広範囲でその効果を維持している。


「……植物系の魔物の仕業か。」

関係ない植物には申し訳ないが、焼き払ってしまった方がいいだろうとシルヴィアは思う。


ランドルフの捜索が第一優先だ。そしてシルヴィアが見た幻覚は、絶対にこの世界に存在しない人物であったため何の躊躇もなく攻撃できた。しかしアレがこの世界に実在する人物に見えていたらどうだろう。


「他の皆んなが危ない。」

さらに幻聴と人の言葉を話す魔物。この樹海に生息する魔物たちは人を惑わせる特性を持つようだ。ウィスプに投げつけられた言葉を思い出し、シルヴィアは美しい顔を歪める。


「……厄介ね。」

そう呟きながら、シルヴィアは地面に膝をつく。そして右手を地面に当てて魔力を込める。いや、込めようとした。


「【土魔術 そく……え?」

シルヴィアは両手のひらを表にしてまじまじと見つめる。


「魔力がない……。」

『土魔術しか使えない小娘がぁ!』ウィスプが発した言葉を思い出した。何でそんな事が分かるんだ……と思っていたが、魔力を吸い取られていたようだ。

「やられた。魔力がないと、ちょっとだけ戦えるただの小娘だよー。」


何度も同じ道を通っているため、魔物がほぼいない事が唯一の救いだ。【圧縮解除】もできないため、唯一使える大きさの弓を握りしめて、キョロキョロしながら木々の間を歩く。すると何と都合のいい事に炎魔術師のランドルフの姿が見えた。しかし彼が対峙しているのは先ほどとは別の個体のウィスプ。


「あー、コレはもう炎魔術は期待できないな。」

そう呟きながらも、弓を引き絞り細工した矢を放つ。


「えっ!」

「があああああーーー。」

目の前の人物に突然矢が刺さったため、ランドルフは驚き振り返る。


「ヴィア、なんて事を!」

ランドルフの大切な人だったのかもしれない。シルヴィアは半眼でランドルフの目の前のウィスプを指差す。


「よく見てください。」

「え?」

ランドルフはウィスプに視線を戻すと、大きな悲鳴をあげて後ずさった。


「うわあああーっ!な、何だお前!」

「ぐふっ……ぐ…ぐっ……。」

「ウィスプです。幻覚で知人に見えるようになっているみたいです。」

矢の突き刺さったウィスプは先ほどと同じように蒸発するように消えていった。


「いやー、助かった。ありがとう、ヴィア。」

「いえ、私もランドルフを探していましたので。」

「俺を?」

「はい。ちょっと所用で早急に炎魔術が必要でして。……ちなみになんですが、今魔術は使えますか?」


使えなかった。やはり魔力は全て吸い取られていたようで、小さな炎を出す事すらできなかった。早く他の5人を救出しなければ、全員が魔術を使えなくなってしまうかもしれない。そうなるとかなりの痛手だ。イレーネに至っては【浄化】もできなくなり、この先に進む意味もなくなる。最短期間でこの旅を終えたいシルヴィアにとっては痛恨の遠回りである。


「一刻も早く全員見つけましょう!」

「ああ。」

ランドルフも深刻な表情で頷く。


とは言え、幻覚の解けたメンバーが二人いることと、ハルバードで接近戦を任せられるランドルフを見つけたことでシルヴィアは少しホッとしていた。魔力ゼロ、所持武器が弓とダガーだけ、で視界の悪い樹海を進むのは正直かなり怖かった。


「俺が炎魔術使えないとなると、オズワルドの雷魔術かエミリオの聖魔術あたりが使えると助かるな。」

「はい、とにかく幻覚が厄介です。原因となる植物系の魔物を探し出して早く一掃したいところですね。一度解けてるので二度目はかかりにくいと思いますが、気を付けてください。」


シルヴィアたちははぐれないように細心の注意を払いながら他のメンバーを探し始めた。

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