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【第三部再開】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
六章.ゲームの強制力、最大のピンチ

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52.嫉妬じゃありません!

次に見つけたのはアーノルドだった。

「何やってんだあいつ……。」

「……。」

アーノルドが相手にしていたのは、ウィスプではなくサキュバスだった。


サキュバスと言っても、この世界の彼らは前世でイメージしていた可愛い女の子の姿ではない。尻尾の長い、ちょっと大きいゴブリンのような姿をした……いわゆる鬼だ。アーノルドはその鬼に対して一生懸命、愛を囁いている。かなりシュールな絵面だ。しかしサキュバスがアーノルドに触れようとした瞬間、急にアーノルドの様子がおかしくなる。

「……きみ、誰?」


そしてヴィアは弓を引き……絞らず、ダガーを握りしめてサキュバス目掛けて飛び込んだ。


「私のヴィアはそんな事しないよ!」

「アーノルドに触らないでください!」

二人の声が重なり、アーノルドはサキュバスの顔に拳をシルヴィアは胸にダガーを同時に突き立てた。サキュバスには物理効果も有効なようだ。


ずしゃっ。


シルヴィアがかなりの勢いで突っ込んだので、サキュバスとともに数メートルほど飛んで地面に倒れる。下敷きになっているサキュバスが息絶えている事を確認してシルヴィアは起き上がり、ダガーを引き抜く。すると後ろからとんでもなく甘い声が聞こえた。


「ヴィア?」

恐る恐る振り返ると更に甘い笑顔を浮かべるアーノルドがいた。


「今のは妬いてくれたのか……」

「絶対に違います!」

食い気味に否定した。


断じて嫉妬などではない。推しのアーノルドが、醜い鬼に騙されて、穢されそうになっていたから咄嗟に身体が動いたのだ。例えば、相手が普通の人間で、アーノルドが心から愛する方となら別に問題ないのだ。それが推しというものだ。推しという言葉を省いて、その事を一生懸命説明したところ、アーノルドの激おこモードの笑顔を再び引き出してしまった。ランドルフと二人で震え上がる。


「へぇ。ヴィアは俺が他の人とくっついてもなんとも思わないんだね。俺だったら相手を八つ裂きにしてしまうかも。」

恐怖の微笑みを浮かべたままそんな事を呟いている。ランドルフはそっとシルヴィアから距離をとる。


「えっと……。」

そんなに怒らせるつもりではなく、ただ単純に本当の事を伝えたかっただけのシルヴィアは困り果てる。しかしこれ以上余計な事は言わないでおこうと、話題を変えることにした。

「……あの、つかぬことをお伺いしますが、魔力は残っていますか?」

「え?」


ちなみにアーノルドは魔力が使えた。サキュバスは魔力を吸い取らないようだ。シルヴィアとランドルフの魔力が全て無くなっている事を伝えると、アーノルドは驚きとても心配してくれた。激おこモードの笑顔は影を潜め、シルヴィアの作戦は見事成功した。そして、メンバー全員の魔力が無くなっている可能性は少しだけ低くなった。イレーネに憑いている魔物も魔力を吸い取らないタイプである事を願いながら再び他のメンバーを探し始める。


「他の四人もすぐに見つかるといいね。」

「はい。一人でも多く魔力が残っていると助かります。」

「今のところ、3分の1だな。」

「確率的にはあと一人か二人ってとこか。」


アーノルドの魔術で辺りの植物を一掃する案も出たが、花粉や香りなどが幻覚の要因だと思われるため、風魔術で舞い上がらせると逆効果だと一旦見送ることにした。他のメンバーと合流して、魔力の残っているメンバー次第で解決策を考える方がいいだろう。ランドルフがダメだったので、エミリオの聖魔術もしくはオズワルドの雷魔術のどちらかが無事であって欲しい。


「……結果次第では引き返す必要がありますね。」

最悪の事態を想定し、シルヴィアは硬い表情で歩を進めた。

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