49.ヴィアのアトリエ、さらに新サービス始まります
シルヴィアが母からマルティーニ伯爵領を丸投げされていた頃、王都のアトリエではまた新たなサービスが開始されようとしていた。
「よお、ビアンカ!あの魔道具の効果やっぱりすげーな!今までは絶対に足を踏み入れられなかった場所まで余裕で回って来れたぜ。」
今日も朝から大盛況のアトリエに常連客のジルドがやって来た。かなり興奮した様子で採取物の入った袋をカウンターに載せる。
「それは良かったです!うちのヴィア様は本当に凄いんですよ!」
ビアンカも同じテンションでシルヴィアを褒め称えつつ、袋の中身を確認する。
「採取困難なものが多いですね!ありがとうございます、めちゃくちゃ助かります!」
「僕だって魔道具を使えればそれくらい……。」
「こら、リヴィオ。そんなこと言わない。それに、ヴィア様が許可していないところに行かせるわけにはいかないからね。」
「……。」
リヴィオは不貞腐れてアトリエの奥に入ってしまった。
「そういやふと思ったんだが、アクセサリーに魔術付与できるんなら、武具にも同じように付与できるんじゃねえか?」
「まあ……確かに。できるかもしれないですね。」
「やっぱりそうか!もちろん金は払うから、試しにやってみてくれよ!」
「いいですね、やってみましょう!一晩お預かりしても良いですか?」
「おうよ。」
「では、明日お受け取りお願いします。お代は上手くいったらで大丈夫ですので。」
「よし、頼んだぜ!」
ジルドは自身のツーハンドソードをカウンターに置くと、店を後にした。
「こんにちは。ヴィアちゃんはいるかい?」
ジルドと入れ替わりで入って来たのは近くにある食堂の店主パオロだ。
「パオロさん、こんにちは。ヴィア様は出張中で。今日はどうされたんですか?」
「いやね、最近眠れない事が多くて。よく眠れる薬なんてあったりするのかなーと。」
「では、まずは夕食後のコーヒーをやめて下さい。それから、寝る前に面白い本を読むのも禁止です。全く興味のないとてつもなく面白くない本だけOKです。」
「何でそんな事知ってんだよ、怖いなビアちゃん。」
「ふふふ、ビアンカさんには何でもお見通しですよ。」
ビアンカはふふん、と得意げな表情を浮かべる。
「うぅ……まあ、一回やってみるよ。」
パオロは元気がなくなってしまった。おそらく食後のコーヒーと寝る前の本は彼にとっての癒しなのだろう。しかし、睡眠をしっかり取らず身体を壊してしまっては元も子もない。
「はい、ぜひお願いします。で、それでもダメならこの薬を飲んでみて下さい。」
ビアンカはパオロに小さな紙袋を手渡す。
「これは?」
「気持ちを落ち着ける効果がある薬です。それでも眠れない時だけ飲んでみて下さいね。1500ソルです。」
「おお、ありがとう。」
「1回1包ですよ!絶対に飲み過ぎないでくださいね!」
「分かった分かった。」
「寝る30分くらい前に飲むんですよ!」
「はいよー。」
パオロは受け取った薬を大事そうにを両手で持ち、足取り軽く店を出ていった。
「だ、大丈夫かしら……。」
ビアンカはそんなパオロを心配そうに見送る。
彼の姿が見えなくなったところで、ビアンカはカウンターに乗ったままのジルドのツーハンドソードを両手で持ち上げる。
「重…。」
ゴトンと音を立てて剣先を床に置いた。鞘に入っているため、多分大丈夫だろうとビアンカは判断する。そのままズルズルと引きずりながらアトリエの奥まで運ぶ。
「すみませーーん。白魔術師さんたちー、この剣に魔術付与お願いしまーーす。」
引きずられてきたツーハンドソードを受け取り、白魔術師たちは五人で取り囲む。
「武器に魔術付与……。」
「ヴィア様に教えていただいた魔術式を応用するか。」
「うーん。」
王宮白魔術師五人が一晩頭を悩ませ、翌日には『攻撃力10倍』の効果が付与されたツーハンドソードが出来上がった。
「お試し価格で、3000ソルで大丈夫ですよ!ちなみに『攻撃力10倍』なので、取り扱いには十分お気をつけ下さい。護身用に街中で使用する可能性があるなら、もう一本持っておいた方がいいかもしれませんね。」
「……攻撃力10倍か。確かに怖ぇな。もうちょい調節出来なかったのか?」
ジルドは顔を引き攣らせながら自身のツーハンドソードを恐る恐る受け取る。
「すみません。ヴィア様より伝授してもらったのが『10倍』の魔術式だけなので、2倍とか3倍とか出来ないんですよ。」
ビアンカは苦笑いを浮かべた。
しかしながらこちらもすぐに注文が殺到し、1回5000ソルで常時受注する事になった。武器は『攻撃力10倍』防具は『防御力10倍』だ。もう言うまでもないが、ロゼフィアーレ王国の冒険者と騎士団の戦闘力がさらに爆上がりした。




