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【第三部再開】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
六章.ゲームの強制力、最大のピンチ

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47.マルティーニ伯爵とは

次に一行が向かったのは、マルティーニ伯爵領にある領主の屋敷だ。いきなり出てきたそれは誰だと思うだろう。マルティーニ伯爵とは、シルヴィアの母方の祖父が持っていた爵位で、祖父が他界してからはシルヴィアの母が当主代理として領地経営をしている。引き継ぐ男子がいなかったのだ。別に当主は女性でも構わないのだが、爵位を持つパートナーと婚姻を結ぶと、別の爵位の当主にはなれないそうだ。


五つ目のダークホールがあるペルソの樹海が、マルティーニ伯爵の屋敷に近いという事で、お邪魔することになったらしい。シルヴィアは手を回していないので、エミリオと父の間で何かやり取りをしたのだと思う。


ちなみに、今まで浄化してきた場所も、プリモの森はアーノルドの生家の領地、ラヴィア火山はランドルフの生家の領地であるが、屋敷の場所がダークホール離れていたこと、シルヴィアが気を使うだろうということで、立ち寄ることはなかった。なぜ自分だけ?と思ったが、シルヴィア以外の全員が高位貴族もしくは王族のため今までにも交流があり、家族ぐるみで顔見知りだそうだ。社交界すごい。


「ようこそいらっしゃいました。エミリオ殿下。イレーネ殿下。ノエル殿下。アーノルド様。オズワルド様。ランドルフ様。」

出迎えたのはやはりシルヴィアの母であった。


母が王都のタウンハウスに滞在することは滅多にないため、シルヴィアとは久しぶりの再会だ。名前を呼びながらそれぞれの顔をきちんと見て笑顔を向けているところは、流石公爵夫人である。きちんと顔と名前が一致しているからできる事だ。自分には絶対に真似できない。


「それから……。」

ようやくシルヴィアの方を向いた母。自分との再会を喜んでくれるのだと思い、次の言葉を待つ。


「おかえりなさいませ、マルティーニ伯爵家当主様。」

しかし、シルヴィアに投げかけられたのは、全く意味のわからない挨拶だった。


「「「おかえりなさいませ。」」」

周囲にいた執事や使用人と思われる方からも視線を向けられ、思わず後ろを振り返る。……誰もいない。


もう一度母の方を見る。やはりこちらを見ている気がするので、自分を指さしてみた。すると、うんうんと頷かれる。


「マルティーニ伯爵は貴方よシルヴィア。」

母はシルヴィアによく似た美しい顔に穏やかな笑顔を浮かべている。冗談ではなさそうだ。


「わ、私が?」

シルヴィアはあんぐりと口を開ける。そして驚くべきことに、シルヴィア以外の誰も驚いていないのだ。ややこしい。


「何で皆さんそんなに平然としているんですか?」

当然の反応だ。シルヴィアは自分の事を平民であると思っていたし、周りもそう認識していると思っていた。


「ごめんね、ヴィア。」

「おそらくもう皆んな知ってる事なんだ。」

「ふふ、やっぱり気が付いていなかったのね。」

「お前みたいなやつが平民であってたまるか。」

「まあ、そんな訳ねえよな。」

「うん。」

自分よりも周りの方がシルヴィアの事を知っているようだ。今はどういう状況なのかと怖くなってくる。


「お疲れでしょうから、先に皆様を客寝室に案内して頂戴。シルヴィアには話があるから応接室に。」

使用人にテキパキと指示を送った後、シルヴィアを連れて応接室に入った。向かい合ってソファーに腰掛けると、すぐにコーヒーが出てくる。流石だ。


「さて、何から話しましょうか。」

母はカップに口をつけると、思い出すようにゆっくりと話し始めた。

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