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【第三部再開】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
第三部 マルティーニ伯爵領編

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107/116

107.シルヴィア銅像が立つ、著作権の侵害です!

「ねえ、ヴィア。明日王都でお祭りがあるみたいなんだ。一緒に行ってみない?」

ある朝、朝食の席でアーノルドから楽しげな誘いを受けた。

「いいですね、行ってみましょう!」

シルヴィアは二つ返事でオーケーした。



翌朝、身支度をしていたシルヴィアの部屋にアーノルドがやってくる。

「ヴィアはこれを着てくれる?」

そう言って渡されたのは正装の騎士服だ。普通に怪しい。しかし、アーノルドも正装服に身を包んでいるため、そういうお祭りなのかも知れない。シルヴィアは言われるがまま騎士服に着替えた。


準備が整い屋敷を出ると、シルヴィアは目玉が飛び出るほど驚いた。王宮の馬車が止まっていたからだ。この馬車に乗り込むのは、浄化の旅へ行く前にアトリエに迎えがきた時以来だ。嫌な予感しかしない。しかし王宮から来た馬車を空で返すわけにはいかない。シルヴィアは不審がりながらも座席に座り、隣に座るアーノルドをジト目で見つめる。

「いや、本当。お祭だから。」

アーノルドは笑顔のまま額に汗を滲ませている。そしてシルヴィアは何もいっていないのに、なぜか言い訳を述べている。これでもう、何かシルヴィアが困ることが起こるのは決定だ。


王宮に到着すると、メイン通りにつながる門の前に停められているオープン馬車に乗せられた。隣には聖女服を着せられたイレーネが乗り込んだ。オズワルドに「すぐに終わるから。お祭だから。」と説得されている。絶対におかしい。


まもなく門が開き、オープン馬車は走り始めた。メイン通りには民衆がこれでもかと詰めかけている。

「何ですかね、これ。」

「わたくしにもさっぱり。何が何だか。」

笑顔で声援に答えながら二人は首を傾げる。馬車が進み中央広場が目に入ると、その疑問はすぐに解決する。


「な、何ですか、あれは!」

一応笑顔を保っているが、シルヴィアはもうその対象物に向かって指を差してしまっている。

「えっ……。」

イレーネも手を振るのをやめてしまった。しかし民衆の視線もシルヴィアの指差す方に向けられたため、それに気がつくものはいない。


「わたくしたちの、銅像……ですわね。」

「銅像お披露目のお祭りですか。」

二人はもう笑う気力もなく半眼で銅像を見つめる。広場に入ったところで馬車を降ろされ、残りの道のりは徒歩で歩かされる。再び注目を浴びたため、二人は一応笑顔を作る。精一杯の苦笑いだ。


「なんで、私たちだけなんですか……。」

遠目に見てもイレーネとシルヴィアの銅像だと思ったそれは、近くで見てもやはりイレーネとシルヴィアの銅像であった。当たり前だ。しかし、その大きさが半端ない。


「台座の大きさからして半端ないですね。」

「どおりであんな遠くからはっきり見えた訳ね。」

聖女服を着たイレーネと騎士服を着たシルヴィアの銅像が手を取り合い微笑んでいる。

「それにしても美化しすぎではないでしょうか。イレーネはともかく私はこんなに美しくありませんよ。」

「それはないわ。ヴィアの美しさはこれでも足りないくらいよ。」


シルヴィアとイレーネが小声で話していると、広場の中央で待ち構えていたエミリオによってふたりの紹介が始められた。銅像の台座にも同じ内容が刻まれているが、嘘はいけない。話を盛りすぎている。そして百歩譲って銅像になるのならば七人全員並べればいい。そうすれば単純計算ででも一人当たりの大きさは半分以下だ。


「ロゼフィアーレを救った二人の栄誉を讃え、銅像を建てることになった。二人の功績に拍手を。」

その言葉で民衆から大歓声が起こった。イレーネとシルヴィアは最後の力を振り絞って笑顔を作った。



「で、どこがお祭りだったんですか?」

シルヴィアは頬を膨らませている。

「本当のことを言って来てくれないと困るから……ごめんね。」

アーノルドが眉を下げて謝る。

「話が違うわ。」

イレーネもそっぽを向く。

「すまない、イレーネ。」

オズワルドも困った顔をしている。


「これから毎年今日が『二人の聖女際』になるんだ。間違いではないよ。」

そんな中エミリオだけが笑顔でソファーに座っている。王宮の控え室に戻ってきた五人はコーヒーとお菓子を並べたテーブルを囲んでいる。四人のジトッとした視線がエミリオに集中する。おそらくアーノルドもオズワルドもエミリオに頼まれて仕方なく二人を連れてきたのだろう。


「私は聖女でもないですしね。」

「銅像にはマルティーニ伯爵と刻まれているが、祭りの名前の中に入れ込むのは反対もあってね。」

「ヴィアは心が聖女そのものだからね。何も問題ないと思うよ。」

もう好き勝手言っている。肖像権の侵害を訴えたいところだが、この世界にそのようなものは存在しない。そもそも自分の顔はクリエイターによって作られたものだったなとシルヴィアは思う。


トントントン。


そこへ扉をノックする音が響いた。入ってきたのはランドルフだ。

「よお、『二人の聖女』。お疲れさん!」

久しぶりの再会に喜びかけたが、その言葉でシルヴィアのテンションはガタ落ちした。

「すまないランドルフ。今それは禁句だ。」

エミリオは苦笑いで謝る。

「何だせっかく屋台の食いもんを買い込んで差し入れに持ってきた……」

「ありがとうございます!」

シルヴィアのテンションは再びマックスまで上がった。

「お、おう。」

いきなりのハイテンションに気圧されて、ランドルフは後ずさる。

「ふふ、ありがとうランドルフ。せっかくのお祭りなのにいつまでも不貞腐れていても仕方がないわね。」

「はい!これぞお祭りです!」

気持ちを持ち直した二人は、久しぶりに揃ったメンバーでお祭り気分を楽しんだのだった。

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