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【第二部完結】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
第二部 オルディア編

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102/110

102.看板を下ろす、但しまた上げる

旅に帯同していたメンバーは既に各々が自分の生活に戻っている。シルヴィアはアトリエに戻りビアンカ、リヴィオと再会を喜んだ。


「大活躍でしたね、ビアンカ。」

「いえ、ヴィア様のお力になれて本望です。」

「リヴィオも大変でしたね。ありがとう。」

「別に……。」

少し離れていた間に、リヴィオは反抗期を迎えているようだ。


シルヴィアはアトリエの中をぐるりと見て回ると正面入り口から外へ出る。

「ちょっと、寂しいですね。」

アトリエの看板をしばらく眺めた後、【重力減少】と【磁石】を発動して看板を下ろした。


「ヴィア様、何をしているんですか?」

シルヴィアのおかしな行動が気になって外に出てきたビアンカ。リヴィオも後をついて出て来る。


「ん?ちょっとね……。」

そう言いながら手に持っていたペンキでちゃちゃっと手を加え、再び看板を上げた。『白魔術師ヴィアのアトリエ』と書かれていた看板が………『白魔術師とビアのアトリエ』に修正されている。


「な、何ですかこれ!」

それを見たビアンカは目玉が飛び出るほど驚いている。リヴィオは一瞥するとため息をついてアトリエの中に戻っていった。


「私、マルティーニ伯爵なので領地に行かないとお母様に怒られるんですよ。」

「へ?」

ビアンカは当然の反応を返す。アトリエの中に入り、シルヴィアはマルティーニ伯爵領の屋敷での話をビアンカに説明した。相槌を打ちながら話を聞いていた彼女は、最後に一つ大きなため息をつく。


「まあそうですよね。おかしいと思ったんですよ。」

ビアンカは遠い目をしている。


「今まで通りオーナーとして私が責任は持つわ。ビアンカはここの店長としてアトリエの管理をお願いできるかしら?」

シルヴィアは上目遣いでビアンカを見つめる。


「仕方がないですね。どこまでもヴィア様について行くと決めましたから。私でよければやらせていただきます。」

「よかった!ありがとう!」

シルヴィアは両掌をパチンと合わせて喜ぶ。


「けれど、白魔術師はどうするんですか?王宮の白魔術師様たちは帰られてしまうでしょうし。」

ビアンカは首を傾げる。


「ふふふっ。私にいい考えがあるの!」

シルヴィアは満遍の笑みでテーブルの上に置かれている包を開く。ビアンカは嫌な予感しかしていない。


「ジャーン!」

シルヴィアが取り出したのは白魔術士が身につけるローブだ。しかし、シルヴィアが身につけるにもビアンカが身につけるにもサイズが大きすぎる。


「絶対に着ないからな!」

危険を察知したリヴィオが突然大きな声を出した。


「えー。せっかく王宮でリヴィオ用のサイズのローブもらってきたのに。」

やはりリヴィオ用のローブであった。シルヴィアは口を尖らせて残念がる。しばらく粘ってみたが、リヴィオが首を縦に振ることはなさそうだ。仕方がないので壁に飾っておくことにした。


「まあ、ローブは着ないにしても薬や魔道具はリヴィオが作れるから白魔術師と名乗っても問題ないはずよ。」

「……分かりました。」

ローブを全力で拒否したリヴィオだが、これには異論ないらしい。それどころか少し嬉しそうだ。シルヴィアに白魔術師と認められたからかもしれない。


「じゃあ、後はよろしくねー。」

シルヴィアはその日のうちにマルティーニ伯爵領へと旅立っていった。


「本当慌ただしいですね。」

アトリエに残るビアンカは苦笑いだ。


「私たち、王宮に帰っても大丈夫でしょうか?」

王宮の魔術師たちの方がアトリエのことを心配してくれている。


「ええ、多分大丈夫だと思います。領地経営に魔力はそんなにかからないでしょうし、リヴィオの魔力の使用制限は緩和されるはずです。きっと何とかなりますよ。」

「……分かりました。」

「いろいろ教えていただきありがとうございました。」

魔術師たちは丁寧にお礼を言って王宮へと帰っていった。


「さて仕事に戻りましょうか。」

王宮の魔術師たちを見送ったビアンカは再び仕事に戻っていった。そしてアトリエにやってくるお客さんたちは見事に誰も看板の変化に気が付かなかった。


「これは…………どういう事だ。」

シルヴィアに会うためだけにアトリエを訪れたこの男、アーノルドを除いては。

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