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【第二部完結】ヒロインは早々にシナリオから離脱したい  作者: 朔島 涼
第二部 オルディア編

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100/109

100.マルティーニ伯爵として

ロゼフィアーレの王都に戻った一行は、国王陛下への報告を終えると、そのまま数日王宮に止まり、帰還パーティーに出席して褒賞を与えられた。シルヴィアは白魔術師ヴィアとしてではなくマルティーニ伯爵当主としてパーティーに参加している。腰まであるストロベリーブロンドの長い髪を後ろで一つに結び正装の白い騎士服を颯爽と着こなす姿に、男女問わず熱い視線がシルヴィアに送られる。今回の功績と、今まで表に出てこなかったマルティーニ伯爵が姿を現すということもあってパーティー前からかなりの注目を浴びていたのだ。


「何かめちゃくちゃ見られてる気がしますが、気のせいですかね。どこかおかしいですか?」

「何もおかしくないよ。いつも通り、完璧だ。」

「完璧すぎて注目を集めちゃったわね。」

「まあ、黙っていればそれなりに綺麗な容姿をしているしな。」

「いつもみたいに大声で意味の分からないこと言ってればいいんじゃないか?ははっ。」


褒賞を与える側のエミリオは壇上に上がっているため、それ以外のメンバーで固まっている。イレーネは辺境伯家との婚約が済んでいるためオズワルドと同じ立ち位置だ。そして、彼らのシルヴィアに対する評価が浮き彫りとなる。


「なるほど、オズワルドとランドルフの中では、私は『いつも意味不明な事を大声で喋っている変な女』という括りなんですね。」

シルヴィアは半眼でオズワルドとランドルフを見る。


「何だそれは。そんな括りがあるとすれば、そこに分類させる奴はお前ひとりだ。」

「確かに、そんな奴見た事ねーな。」

「あははは。確かに、ヴィアみたいな子が二人もいたらびっくりだね。一人だけでもだいぶびっくりだけど。」

「アーノルドまで、酷くないですか?」

「ふふ、皆んな失礼よ。」

イレーネまで笑っている。


「しかし、これだけヴィアに注目が集まってるのにアーノルドが平静でいられるのもびっくりだな。」

「そうね。少し前のアーノルドならヴィアをマントで隠して誰にも見えないようにしていたんじゃないかしら。」

「確かに……。」

「そんなことある訳……」

「そうだね。」

アーノルドがシルヴィアの言葉を遮って肯定した。そしてめちゃくちゃ嬉しそうに笑っている。シルヴィア何故か寒気がした。


「でも、今の私にはコレがあるからね。」

そう言うと、胸ポケットから小さく折り畳まれた一枚の紙を取り出した。シルヴィアはそれを見た瞬間、指先が冷たくなるのを感じた。


「じゃーん。」

アーノルドが嬉しそうに広げたその紙は、シルヴィアの予想通り『婚約誓約書』であった。そして注目すべきは、すでに国王陛下の認可印が押されている事だ。もちろんシルヴィアは何も聞いていない。さっとイレーネの方を見る。


「だって、あの……。アーノルドが起きたら渡すように言われていたもの。渡さずにいてアーノルドから怒られるのは怖くて。」

そう言いながらゆっくりとオズワルドの背に隠れた。次にアーノルドを見上げる。


「昨日提出してきたんだ。陛下は少し迷っておられたようだけど、エミリオが説得してくれたよ。」

「陛下はエミリオにとシルヴィアをご所望だったからな。」

補足の情報を付け加えたオズワルドにアーノルドの睨みが入る。オズワルドは目を逸らして黙った。


とりあえず『ロゼフィアーレの平和のために』認可印を押してくれたらしい。誰も『シルヴィアの平穏』は願ってくれないようだ。

「まあ、渡してしまったものは仕方ありません。責任を取りましょう。」

どこまでも男前なシルヴィアである。


「これからも末永くよろしくね、ヴィア。」

そう言いながらアーノルドはシルヴィアに向かって片手を差し出した。どこかで聞いた事のあるセリフだなとシルヴィアは思う。初めて聞いたその時から少しずつ覚悟を固めていっていたかも知れない。


「よろしくお願いします、アーノルド。」

シルヴィアはアーノルドの手に自身の手を重ね、にこりと微笑んだ。





会場中がポジティブな視線を五人に送る中、シルヴィアとアーノルドに対して冷たい視線を送る男が一人。

「アーノルドはあの女のどこがいいんだ……。」

光の当たらない柱にもたれかかり、じっとシルヴィアたちの様子を窺っている。


「あら、ルッカ様。こんな所にいらしたんですね。」

美しい女性に話しかけられたその男は冷たい表情を一瞬で消し去り、甘い笑顔を浮かべる。


「やあ、今日も美しいね。私を探していたのかな?」

そう言いながら柱の裏側に女性をエスコートする。


「ふふっ、そうよ。貴方に会いたくて来たようなものだから。この後はお時間あるかしら?」

その女性は男にしなだれかかり、男は女性の腰に手を回す。


「ああ、もちろんあるよ。何時間でも。」

その男の答えに女性は頬を染め、満足そうに微笑んだ。

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