騒がしく、沈黙を作る僕を
さて、シャリアは休むというには物々しい体制ではあるが、半分寝てるように毛布に伏せたわけで。
「どうする?」
俺はこいつと情報収集といこう。
「カカ様の決着までは長そうですが、もう中央の様子を見る余裕はありそうです」
「じゃ、見物するか」
しばらく歩くとしようかと思ったが、面倒なので風圧の魔法で飛ぶことにした。
そんなことすりゃ当然残党による待ち伏せもされるが…。
「ふむ、派手につっこんだ割には来ないな」
「おそらくそんなにいないです…」
いるのかどうかわかるぐらいの強さでなきゃ、基本どうとでもなるのか。
というか、そういうのが多分ないであろう俺らが理不尽な性質してるということなのだろう、多分。
ふーむ、どっちも動きが少なくなっちゃった。あのときと違って雑魚じゃコーキに釣り合わない程になっちゃってるね。
それは別に悪くないか。あ、それはともかく久しぶりに主演かな?
「さぁいくぞ、僕のステージの開演だ!」
それっぽい言葉とともに時空の魔法を使い、逃走を拒絶。
聖癒の力で若干補強中。なんていうか相性無視するなら一番無難な属性。
「イヤー、最初にやるのがメジャーなのすぎてびっくりだよ。まだ心を殺してなかったんだね」
「……風圧よ!」
私の司る混沌とはほど遠い、ほとんど真逆な、純粋な風圧属性が襲いかかる。
「結局この辺未だによくわかんないなぁ~?」
私の周りの奴ら、魔法適性が高すぎて形態化された魔法が本当にわからん。
知人の多くが、私の影響を受けて形態化された純粋な魔法への適性を落としているのもあるだろうけど。
「僕の歌を久しぶりに聴ける幸せな男!それが君だ!」
後久しぶりのこれ、結構きつい。疲れる。
まぁなんだかんだアラサーだからね。17+2+9。神とかいう種族になったとはいえ私はあの子と違って体を引き継いでる分ね。
というか、あの子はまだ前の年齢にもなってないのか。そっか。
「17さいとひゃくさんじゅーなんかげつ……的なのはさすがにあまりやりたくないなぁ」
二十数ヶ月ぐらいなら留学留年して現役JKだったのもあってやったけど。
「さっきの意識での拘束魔法さすがにつえーな」
時間には誰も勝てないのである、とでも言えばいいのか、余計なことを考えながら発動した魔法が想像以上の効果を発揮した。
「なんなんだこの意識は!」
「いやー乙女の秘密?ごめんごめん思考がそれちゃってさー」
「独り言だだ漏れてはいるが!?ふざけんな!?」
「にしても……そりゃあの魔女も敵の加護になるわけだ」
こいつ自身が敵なら、風の適性が飛び抜けていた彼女が目をつけられないはずもなし。
多分、上書きしたんだろう。
私や魔力の神みたいに破壊神だったり、こいつらみたいな始祖の神ならいけるだろう。
あるいは、創造とかの類でも…。多分、だけど。
私が、あの二人と混ざっていたときのことを思い出す。
私も大概錯乱させたなぁと思わざるを得ない。とはいえ、私からするとあの母親が危険すぎたのであれでよかったとは思うけど。
母親といえば私の母さん現行で迷惑かけてるところがあるよね。うん、まぁ、関係なく大変な目には遭いそうな子だけど。
「あれはもう運命がどーとかの能力ないとおかしいのでは」
それともオスってみんなそんな欲求抱えて生きてるん?
「……」
男だったことはないので知らんのよね、不本意なことに。
「ねぇ、自由を象徴したこの世で最初の神様」
どうしても、死ぬ前に聞きたいんだ。
「あなたの望むのは、どんな世界だ?」
それだけの言葉。あなたの象徴するものを、聞くだけの言葉。
「愛する者と共に生きる世界」
ああ、そうか。なるほどね。
「他の答え、知ってる?」
「聞く必要は、ない、だろ……う?」
彼は自我を捨て、消えた。しかし、分かった。
「原初の望みか。それに立ち返ることで、作り方を再現する。それができるなら、元々ある門を開き直すなんて、簡単だよね」
傷口が開くように。ヒビを広げるように。
神の世界の門を開いたのは、エゴなんだね。
我欲、望み、それらを抑圧する理性。
異端という言葉で、端的に壮大な行為への資格を示せるのは良し悪しかね。
「その気になれば、私がどれかの代わりになれるかもね」
私もおとりに回るだろうし、最悪の場合それでもいいだろう。
「ま、いいや。今やってることさっさと終わらせて、適当に放浪したいや」
結局のところ導くって行為は定住しない方が効率いいことがそろそろわかってきたし。
「私の望みはそれだけなんだけど、ね」
これがなかなか難しいのである。
とりあえず森羅と魔力潰さないとだ。いや直近だと確実にそれが多分一番難しいんだけどね。
ああそれと、あの子が聖癒の神じゃないってことは、そういうことだよね。
(「となるとシアちゃんは…」)
(ん?どうした?)
(「シアちゃんが最初の聖人っての、嘘っぽいな」)
(は?)
最初の奴らが、その属性を担う神になってる。人の前に神がいないのがやや気にかかるけど、今の問題においてはどうでもいいことだろう。
(「多分、最初の聖女ではあるんじゃないかな?相当古い時代なのは間違いないし」)
神の世界への扉。それを開いたのは決して彼女ではあり得ない。彼女もまた、異端ではあったようだが。
「彼女が無垢を属性に掲げているのは、なんだか奇妙だよね」
誰が決めた?というか、彼女の属性の性質は、誰が知っている?
「なーんとなくだけど、異端はあまりにも混沌に近い」
複数の矛盾を抱えている。ぶつかり合い続けるような無茶な均衡を保っている。
(「無垢、単一の性質。うーん、なんも思いつかないなぁ」)
(そんなん知らん。それより聞いたろ、シャリアと合流したらあっちの都合次第ですぐ入るぞ)
(「わかってますよ」)
そっちはどうせすぐじゃないだろうし、今はこれ考えておかなきゃ。
にしても声が遠いなぁ。




