②
【立花メモ】
依頼者
・内山 剛
・30歳 男性 会社員
・2年前に結婚
・夫婦仲は良好(本人談)
依頼内容
・身辺調査
調査対象
・内山 蘭子
・30歳 女性 アパレル店員
調査対象概要
・勤務はシフト制
・依頼者と休日が合わないこともある
・2か月前より外出が増えた
・スマホを依頼者から隠す仕草
・頻繁に他者と連絡を取る様子あり
・疲労が見られ就寝時間が早くなった
・男性と歩いていた目撃情報あり
立花は完成したメモを人数分印刷する。全部で4枚。ちゃんと彩花の分がある。
「今日もメモが1枚分多いようだな」
「プリンターがご機嫌だったんでしょうね」
と軽口を叩きながら鳴海にメモを渡し、自席へと戻っていく立花の姿に、黒崎もついふふっと笑い声が漏れてしまったようだった。
アイスコーヒーを1口、鳴海はゆっくりと飲んだ。
カラン、と氷がぶつかる音がする。
要点を押さえた分かりやすいメモにさっと目を通し、そして質問すべく鳴海は内山に声を掛けようと口を開く。
が、その声に被せるように事務所の奥から別の声が飛んできた。
「ねー、内山さーん!奥さんと結婚前に浮気で喧嘩したことあるー?」
「どうして毎度毎度俺より先に質問するんだお前は…」
鳴海はこめかみを押さえて小さく呟く。
予想外のところから飛んできた質問に内山は少し驚きつつも、いいえ、と答えた。
「交際中にそのような喧嘩をしたことはありませんでした。何か怪しい行動をしていたりもありませんでしたし…。」
「じゃあさー、奥さんの見た目は?最近着る服変わったとかメイク変えたとか?」
「特に…いや、そういえば…」
と、少し考えたあと内山は話す。
「最近好んで着ている服が変わったような…気がします…。腕の部分がふわっとした服や、スカートの頻度が増えたような…。うぅ…。」
話しているうちに辛さが込み上げたのか、とうとう内山はポロポロと涙を流し始めた。
そんな姿を見て、流石の彩花も
ありゃあ〜、こりゃもう浮気ですわ〜。
と口から出そうだった言葉を何とか飲み込んだ。
黒崎がティッシュとハンドタオルをそっと内山に手渡した。
すみません、と涙を拭い俯く内山の姿は本当に妻の事を愛している夫の姿にしか見えない。
彩花は鳴海のテーブルに頬杖をつき、書類が左肘の下でクシャッと音を立てたのも気にしないでうーんと唸る。
「まだ浮気だと決まったわけではありません。」
すすり泣く内山に淡々と話しかける鳴海。
「確かにお聞きした話の印象からは、その線が有力であるように感じます。しかしその決定的な証拠があるわけではありません。」
例えばホテルに2人で入っていった、明らかな身体的接触があるなど…と、具体的な例を挙げる鳴海。
聞いている内山は想像してしまったのだろう。
顔面蒼白になり、隣の黒崎が支えていなければ今にもひっくり返りそうだった。
「それをこれから我々が調査します。調査結果は包み隠さず全て内山さんにお伝えする事をお約束致します。」
「はい、…はい。どうかよろしくお願い…します。」
フラフラになりながらも何とか返事を返した内山は、
「我が家の住所です。妻は今日は仕事ですが、明日はちょうど私が仕事で妻が休みの日です…。」
と自宅住所の書かれた紙をポケットから取り出しテーブルへと置く。
確認するとここからさほど遠くない場所のようだ。
鳴海はその紙を自分の手元へ移動させ、内山が自宅を出る時間や連絡先を聞く。
「それでは明日より調査を開始します。」
「よろしくお願いします…。」
鳴海に深々と礼儀正しくお辞儀をし、内山は事務所を出た。
チリン…
とドアベルの音が響き、扉が静かに閉まる。
内山の姿が見えなくなるのを確認してから、彩花は大きな大きなため息を吐いたのだった。




