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鳴海探偵事務所へようこそ  作者: デン
夕暮れと忘れもの
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14/17

【立花メモ】

被害状況

・酒屋→甘酒1つ、試飲用の日本酒少量

・肉屋→コロッケ、メンチ1、2個

・惣菜屋→ショーケースの惣菜少量ずつ

・魚屋→小魚1、2匹

・八百屋→売れ残りの野菜数本

・駄菓子屋→小さな駄菓子1、2個

・団子屋→みたらし団子1本、豆大福1個


共通項

・被害量、額は少ない

・食料品店に限る

・金品を盗まれるといった被害は無い



立花はサッとパソコンでメモをまとめたあと、印刷し全員に配っていく。


鳴海は貰ったメモに目を通した。そして小さく息を吐く。

文章にするとよくわかるが、被害自体はそこまで大きなものではないようだ。

ただし複数店舗に渡っているのがわかる。

地図を見れば赤い丸は散らばっており、店舗同士が隣合っているわけでもなく、あちこちで小さな被害が出ているといった状況のようだった。


ただしこの被害状況については、彩花がたまたまその場で聞いただけの状況に過ぎない。

他に被害が出ている可能性も否定はできなかった。



鳴海は頭の整理をするかのように、そっと目を閉じた。

そして再度小さく息を吐いた後、


「商店街に行き、状況確認をする。」


そう言ってソファから立ち上がった。


「了解でーす所長。」


と、軽い返事をしながら立花が立ち上がる。

黒崎もソファから立つと、彩花の方を向き微笑んだ。


彩花も嬉しそうにパッと笑顔を見せたあと、ソファから飛び上がるように立ち上がり、そして


「さっすが鳴海、ありがとう!よっ、地元のヒーロー!」


褒めているのか何なのかよく分からない言葉を投げかけた。


「所長、ヒーローに転職したんですね。」


と、からかう立花の背中を鳴海は軽く小突き、その後彩花の方に視線だけ向けると、


「お前もさっさと支度しろ……。」


呆れながらそう言ったのだった。



ー昼12時38分。


お昼時の商店街は賑わいを見せていた。


買い物客や昼食を求める人々、そして客を呼び込む景気のいい声。

商店街の天井のスピーカーからは、流行りの曲が声に紛れて時々うっすらと聞こえてくる。

ふと横を見ると、惣菜屋のおばちゃんの店にたくさんの人が並んでいるのが見えた。

おばちゃんと目が合い、手をぶんぶんと振る。

するとおばちゃんもニカッと笑って手を振り返してくれた。


ガヤガヤしてどこか雑然としていて、でもなんだか懐かしい……。

そんな商店街を見回しながら、彩花は最初に話を聞いた酒屋のおばちゃんのところまで鼻歌混じりに歩いていく。


ご機嫌な彩花を先頭に、鳴海や立花、黒崎も後をついていっていた。



すると、


「おー、彩花ちゃんじゃないか!」


と呼び止める声が聞こえた。

彩花は声のする方へ顔を向けると、肉屋のおじさんが歩きながらこちらに向かってきた。

いつの間にか肉屋の前まで来ていたようだ。


「なんだい、みんなお揃いで……。もしかして朝のことをもう話してくれたのかい!」


鳴海たちの姿を確認すると、肉屋のおじさんは驚いたように言った。


「話は聞きました。もう1度伺ってもよろしいですか。」


鳴海はそう言うと1歩前へ出る。

先に肉屋で話を聞く事にしたようだ。


……鳴海も笑顔で話聞きゃあいいのに。


といつも彩花は思うが、肉屋のおじさんは全く気にする様子もなく、


「すまないねぇ鳴海さん。助かるよ。もちろん、いくらでも話すさ。」


人の良さそうな顔で彩花に話した事と同様の事を話し始めた。



「……てなわけさ。まあ大した被害でもないしな。」


と、肉屋のおじさんが言いながらも不思議そうな顔をして続ける。


「それにしても、そこらのガキ共のイタズラかと思ったんでね。通りかかった悪ガキ共とっ捕まえて聞いてみたんだがなぁ。みーんな口を揃えて『やってない』ときたもんだ。不思議なもんだよ。」


盗まれたのは、言っちゃ悪いけど大したものじゃないし、小学生の悪ガキかと思ってたんだけど違うんだ……。


難しそうな顔をしながら彩花は考え込む。

彩花がうんうん唸っている横で、やはり同じような事を考えていたのか、黒崎やメモを取っていた立花も不思議そうな顔をしていた。


「ちなみに無くなった前後で何か変わったことはありませんでしたか。」


と鳴海が聞く。


「いんや、なにも……。でも、あー……。」


「どんな事でも構いません。解決の糸口になる可能性もありますので。」


鳴海のその言葉に肉屋のおじさんは少し悩みながらも、あんまり関係ないかもしれねぇが、と話し始めた。


「商店街のみんなとも話してたんだけどな。最近鈴の音が聞こえるって。確かにこの季節だから、そろそろ風鈴を出してるとこだってあるかもしれねぇがよ。だけど随分と近くで聞こえるもんだから。そういやぁ、その鈴の音が聞こえるって話し始めてからだなぁ。商品が無くなったのって。」


肉屋のおじさんは思い出したかのように言った。

鳴海は少し考え、なるほど、と小さく呟いたあと、


「そうですか。貴重な話ありがとうございました。」


と言って話を終えることにしたようだ。

鳴海は後ろを振り返り3人を見た。

次の聞き込みに行く、と鳴海の視線が告げている。



「おじさんありがとう。また何かあったら教えてねー!」


彩花が改めて肉屋のおじさんに挨拶をすると、


「ちょっと待ちな!……ほら!」


と、店のショーケースから大判のコロッケを4つ取り出し全員に手渡した。


「持っていきな。揚げたてで美味いと思うからよ!」


肉屋のおじさんはにっこりと笑う。

手のひら程のサイズもあるこの大判コロッケは、このお店の1番人気メニューだ。


そういえば昼食がまだだった事を思い出した彩花は、出来たてアツアツのコロッケにヨダレが垂れそうになるのを我慢する。そして、


「おじさんいつもありがとう!」


とぶんぶん手を振って別れたのだった。

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