表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳴海探偵事務所へようこそ  作者: デン
夕暮れと忘れもの
PR
13/19

6月30日

ー午前11時12分。


鳴海探偵事務所はやけに静かだった。

数独しながら唸る声も、ヒィヒィと声を上げながら筋トレする声も、観葉植物に水をあげながら話しかける声もない。


原因は明らかだ。彩花が来ていないのだ。


いつもならもう1時間は前には、


「おっはよー」


とドアを開け遠慮も無しに事務所へ来ているはずだ。

そしてドカッとソファに座っては、何か始めているはずの時間だった。



「あっれー、珍しいなぁ。まだ彩花さんが来てないなんて。」


立花が時計を見ながら不思議そうに言う。


「もう来ててもいいはずなのですが……。何かあったのでしょうか。」


立花の言葉に、黒崎も心配そうに言った。


そもそも、本来であればここの職員でもなんでもない彩花が入り浸っているのがまずおかしいのだが、慣れというのは恐ろしいものである。



鳴海は仕事の手を止めず、でも一瞬だけ時計を確認した。

そして小さく息を吐き、


「……こういう時は大概面倒事を、」


持ってくる。

そう言い切ろうとした時だった。


ドタドタドタと足音が聞こえ近付いてくる。

次の瞬間、


バタン!


とドアベルの音がかき消されるほど、大きい音を立ててドアが開いた。


驚いて全員がドアの方を向いた。

入ってきたのは、つい今話題に上がっていた張本人の彩花だった。

走って息が切れたのだろう。両膝に手を置き呼吸を整えていた。


そして、


「ねぇねぇ、鳴海大変だよ大変!大事件だよー!」


彩花の大声が事務所中に響き渡ったのだった。


想像通り面倒事を持ってきた、と鳴海の顔に書いてあるが、彩花はそんな事はお構い無しに、


「いま説明するからこっち来て!」


と応接テーブルの方へ手招きしている。


鳴海はこめかみを押さえ、深いため息をついた。

そして、


「……分かったから静かにしろ。」


とだけ彩花に言った。




ー午前11時20分。


半ば強引に全員を応接ソファに座らせた彩花は、よし、と頷く。そして3人を見ながら話し始めた。


「あのね、商店街のおじちゃんおばちゃんから聞いたの。」


何処から持ってきたのか、商店街の地図をサッとテーブルの上に広げる。


「最初に声を掛けられたのが酒屋のおばちゃん。気になる程じゃないんだけど、店の前で売ってる甘酒が無くなってたり、試飲用の日本酒が入ったコップが減ってたりしたんだって。」


そう言うと酒屋の場所にホワイトボードペンで赤マルをつけた。

彩花はさらに続ける。


「その話し声が聞こえたみたいで、次から次に商店街の人達が集まってきてさ。……肉屋のおじさんに惣菜屋のおばちゃんでしょ。あと八百屋のおじちゃんに、」


「待って待って、1つずつ教えて!」


話がまとまらなくなりそうな予感がした立花が、一旦彩花の話を止めた。


「おっけー。じゃあ肉屋さんのおじさんの話からいくよ!おじさんから聞いたのはね……」


彩花は商店街の人たちから聞いた話を1つずつ話していく。

黒崎はそれを聞きながら彩花の代わりに地図に赤マルをつけ、立花はメモを取ることにした。



「……意外と被害件数が多いね。」


話を聞きながらメモを取っていた立花が言う。

地図に丸を付けていた黒崎も、その数を見て困惑した表情だ。


「本当にちゃんと事件だったんだね。」


と半ば冗談めかして言った立花の言葉に、


「だから最初から大事件だって言ってるじゃん!」


きぃー!と声を上げながら彩花は地団駄を踏む。

黒崎は2人の様子に表情を思わず崩し、ふふ、と笑いながら仲裁に入ったのだった。



鳴海はそんな3人の様子に苦い顔をしたが、一旦無視をすることに決め、地図に視線を落とした。

そして少し考え込んだあと、


「……立花、まとめてくれ。」


と探偵事務所の所長として指示を出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ