↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネガティブだけど、正ヒロイン  作者: 小谷草
第3章 撲滅聖女と闇魔法を使う魔人
55/60

55 エリーゼの実力

 ロザリーたち一行は平原の奥へと向かっていた。


「学園の近くにはいくつか素材が取れる場所がありましてな。テール平原のほかにもレーベスの森という場所もあります。あそこで取れるクルール草はポーションの原料として最適で・・・」


 歩きながら、ジョスの講釈が続いていた。


「すばらしいですわ。学園で素材の最終方法まで学べるとは。貴族が通う学園というと戦闘とは無縁なイメージがありましたが、そうではないのですね」

「ええ。戦闘とは無縁な生徒が多いのは確かです。他の貴族との縁を求めて学園に来る生徒が大多数を占めている。ですが、選択次第では戦闘や魔法についても学べます。聖女様のお役に立つことだっていろいろ学べますよ」


 ジョスは得意気だった。


「精霊教の聖女としては、個人の戦闘力はなくてはならないものです。学園でそれを学べるのは何物にも代えがたい幸運ですわ」

「んふう! さすが聖女様。好奇心旺盛でいらっしゃる。わずかな時間しかご一緒できないのが残念ですねえ。聖女様と同学年には愚弟もおりますので、分からないことは彼を頼っていただければ。最近は、少しは見るところも出てきましたし。ねえ、ロザリー様?」

「はい?」


 目を瞬かせたロザリーに、シモンはねっとりとした視線を送った。


「愚弟は、あなた様の妹君と接するようになって素直になってきました。この場を借りてお礼を。あれは、水や土の資質が低いこともあって少し拗ねていたのですよ。身体強化向けの魔力の資質がなくて伸び悩んでいた。それをあなたの妹が変えてくれたそうではないですか」

「水と土の資質が今一つ・・・。それは、近接戦闘者にとって辛いことだね」


 パーティーの盾役ブレーズが哀れむようにつぶやいた。


「ええ。近接者として生きていくのは難しいと思われていました。ですが、ロザリー様の妹君のおかげでよい師に巡り合えたとか」


 シモンは楽し気に唇を歪ませると、大げさに腕を広げた。


「今思い出しても、あれは素晴らしいものでした。まさか風を使った身体強化をこの目で見ることができようとは」

「風を使って身体強化を使ったのか? それはなんというか・・・。弟君は、よほど良い師に巡り合えたんだな」


 うんうん頷くジローだった。


「風の魔力はほっといても動いちまうからなぁ。身体強化には向かねえだろ。戦闘中にずっと使い続けるとなると、青か黄色か・・・」

「もしくは、白ですね」


 エリーゼの言葉に、ロザリーはピクリと反応した。


「白の、属性ですか・・・」

「ええ。うふふふふ。身体強化は白の属性でも扱えるんです。白の強化は、4大属性を凌駕する。土よりも水よりも、ね。上下2属性は扱えるものは少ないですが、それだけにその恩恵は大きいのですよ」


 エリーゼは胸を張っていた。


「白・・・なあ。聞いたことがあるぜ。確か、魔法王国じゃあずいぶんと重宝されているらしいじゃねえか。王位を継ぐ条件が、あの属性を持っていることなんだろう? すげえ回復を使えるそうだが、身体強化にも優れてんのかよ」

「んふう! こっちでは白の使い手はほとんどお目にかかれませんからねぇ。ましてピレイル連邦では忌むべき属性とされていますし、あんまりいい印象を持っていないのかも。資質があっても目覚めることなく終わってしまうケースもあるそうですし」


 疑問符を浮かべるジローとシモンに、エリーゼは笑顔を返した。


「うふふふ。今日のお礼としましょうか。お見せしてあげますわ。白の身体強化のすばらしさを、ね」

「!!! 来た!! 5時の方向!!」


 エリーゼの言葉を遮って、デボラが前方を指さした。3年生は素早く反応する。慄くジョス教師を気にも止めず、全員が武器を構えた。そしてさりげない動作で、前方に向かって迎撃態勢を整えていく。


「うひょう! やっぱりだ! サベージュトロオゥを見た時から、絶対にいると思ったたんだ! ねえシモン! あれだ! あの肉は、絶対に手に入れないと!」

「んふう! 落ち着きなさいブレーズ。聖女様の前ですよ」


 シモンがなだめるが、ブレーズの興奮は止まらない。


「落ち着いていられるわけないじゃないか! ほら! トランクィボファンだ! ああ! 王都に来て、またあれの肉が食えるとは思わなかったなぁ!」


 ブレイズが指さす先には、角のない牛が生徒たちを睨んでいた。


「気を付けてよね!! 下手に傷つけると肉の味が落ちちゃうんだ! 魔核をつぶしちゃうのは絶対にダメ! 急所だけを当てることができれば、最高級の肉を味わえる!」

「ふふふ。ブレーズ様はあれの肉に興味がおありですね。いいですわ。私の手で、魔物の急所だけを、貫変えていただきますわ」


 言った瞬間だった。エリーゼが姿勢を低くして魔物に突撃していく。ジョス教師が止める間もなかった。それほどさりげなく、そして素早い動きだった。


「!! 速い!」

「うふふふふ!」


 エリーゼが、先頭のトランクィボファンにメイスを叩きつけた。脳天をつぶされた魔物を見ることもなく、次のトランクィボファンの頬を殴りつける。そして、背後から襲いよるサベージュトロオゥを躱すと、魔物を率いるリーダーへと向きなおった。

 

「ぐごおおおおおおおおお!!」

「あはっ!」


 吠えるサベージュトロオゥに、狂笑を浮かべたエリーゼ。突進してくる魔物をあっさりと躱すと、その顎めがけて渾身の一撃を振り上げた。


「聖女様! あぶない!」


 デボラから警告が飛んだ。突出して魔物をつぶしたエリーゼめがけ、もう1体のトランクィボファンが突撃してきたのだ。


 だが、エリーゼに慌てる様子は微塵もない。


 襲い来る猛牛に手をかざすと――。


「エアライン」


 緑の魔法を放った。


 風の弾は、狙いたがわず猛牛の眉間へと吸い込まれていく。弓で打ち抜かれたように崩れ落ちる猛牛を見ることもなく、エリーゼは次の魔物に狙いをつけていく。


 狙いは、逃げようと後退した3体のトランクィボファン。


「がは! がはっ!」

「うふふふ! 逃がさない。リターナー」


 今度は黒い魔力だった。地面から伸びた影が、3体のトランクィボファンに絡みついた。魔物たちはもがき、逃げようとするが、黒の魔力は牛の魔物が動くことを許さなかった。


「し、白に、緑、そして今度は、黄色と黒の複合!?」

「さて今のうちに。動きを辞めた魔物たちを、倒してしまいましょう」


 エリーゼの言葉に、ロザリーたちは掃討戦に映るのだった。



◆◆◆◆



「いやあ! さすが聖女様! 見事な腕前です!」

「いえいえまだまだです。魔物を倒せたのは皆様の援護があればこそですわ」


 ジョス教師が褒め称えてもエリーゼは済ましたままだった。


「なにをしらじらしいことを。俺たちがいなくてもこの程度の魔物なぞあしらえたんじゃねえか」

「いえいえ。皆さまがいてからこそですよ。皆さまが後ろに控えていたから私は思いっきり戦うことができた。一人ですべてを決めようとしては思わぬ事故もありますからね」


 涼しい顔をするエリーゼに、ジローは不機嫌そうにうなった。


 追従するジョス教師に対し、ジローたちは複雑だった。自分たちだけでは苦戦するはずの魔物の群れを、エリーゼは一人で倒してしまった。その事実に打ちのめされるパーティーメンバーも少なくはなかった。


「んふ! 細かい指導は後日として、今は演習中ですから」

「そうだね。魔物はかなり間引いたと思うんだけど・・・」


 シモンが言うと、ブレーズが焦ったように周りを見渡した。平原の中心部辺りに到達した一行だった。さすがに魔物は見当たらない。かなりの数を、倒すことができたようだ。


「うん! 周りに魔物は見当たらない」

「私のフィーデンにも反応なかったし、あらかた固唾いたんじゃない」


 デボラは興味なさそうに、それでも太鼓判を押した。


「んふう! この演習の目的は果たしたと言えるのではないでしょうか」

「あ、ああ。そうだな。では、戻るぞ! 無事に学園に戻るまでが演習だ! 気を抜くなよ!」


 威厳を取り繕うかのような、ジョス教師だった。


 一行は、来た道を引き返していく。緊張感が抜けたのは一瞬だけ。エリーゼとジョズを除く全員が、わずかな油断も見られなかった。特にロザリーは死きりに周りを見渡している。


「? ロザリー様?」

「あ、いえ。シモン様。私たちも戻りましょうか」


 注意を振り切るかのように、ロザリーは来た道を戻っていった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。