サンソン、連続毒殺事件の犯人に極刑を与える
光の丘に日が沈んでいく。それをサンソン神父と犯人は眺めていた。
「夕日がきれいですね、イグニシア神父」
「……」
「同じ神に仕える人間として、刑を処するのは悲しい事です」
「……」
「もう一度、聞きます。どうしてこんな事をしたんですか?」
周囲には法王や枢機卿などが並んでいる中でイグニシア神父はニヤニヤ笑いながら言う。
「……サイコロ遊び、ですよ」
「賭け事ですか?」
「そうですね。神様と」
思わず顔をしかめるサンソン神父にイグニシア神父は笑う。
「カゴの中に毒のある飴を一個だけ仕込んでおく。そうして信者たちは生死のクジを引いていたんですよ。彼らは知らない。自分が生きるか死ぬかと言う選択をしている事に。私と神だけがこれを知り、生と死を提示させていました」
「……」
「誰も知らないで飴を嬉しそうに取っていく。それでいつも誰が死ぬのか死なないのかを探っていた。だけどいつも私は外れてばかりでした。あの薄幸な写本の少女は誰よりも多く飴を取って行きましたが生き延びて、滅多に来ない者ばかりが死んでいく。それが不思議でした」
「……」
「人の生死を見定めて、死神と私は賭けていました」
「でもバレましたね。たまたま毒の飴をもらった私とあなたが殺した人間の関係者が出会い、そして罪は暴かれた」
サンソン神父は静かにほほ笑んで「これはきっと神のお導きですね、私が信じる神の」と言った。
日は沈み月明かりが照らす頃、サンソン神父はパラッと【極刑の書】を広げた。真新しい書には【シャルル】の文字が刻まれていた。
「そう言えば極刑とはどういった刑でしょうか?」
イグニシア神父は「死刑ってわけではないでしょう」と軽く笑って言う。恐らく死刑では無いので、軽く見ているのだろう。
イグニシア神父が仕込んでいた毒入りの飴を食べた人間はシャルルの父親とアンリの事件の被害者である老婆、それからノアの母親など五人ほど。だがこの男の被害者はこれだけではない。きっとたくさんの人間が被害に遭っているはずだ。だが被害者が名乗り出る事は無かった。死んだ者を掘り起こすのは忍びないと思う者達が多かったのだ。
サンソン神父は「ええ。殺すわけでは無いです」と答えた。
「では、始めます」
サンソン神父は呪文を唱えると、イグニシア神父はすぐに奇妙な顔になった。そして手錠で繋がれている手を見て震えた。
「何がどうなっているんだ!」
イグニシア師は怒鳴り、頭を抱える。彼の手は蹄になり、真っ黒な毛がどんどん生えてきて、額には角が生えていった。
イグニシア神父は大声で叫び、「嫌だ!」と泣き、許しを請う。数十分の間、人間ではない家畜の姿に変えられパニックになり絶望するが、最後は人の言葉を言えぬ羊となった。
「これが、今の世界での正義です」
サンソン神父はそう言いながら新たに生まれた罪深き羊を撫で、極刑調査官が世話をしている羊たちの群れの中に入れてあげた。




