シャルル、今後について考える
しばらくの間、写本を教えてもらった修道院で過ごしていた。その間に様々な事が起こった。
私の父親の他にイグニシア神父の毒飴を食べた疑いのある人間の墓を掘り出して、毒殺の証拠を暴いていった。
今回、神官の犯行と言う事で教会はかなりのバッシングを受けている。最近読み始めた新聞にもイグニシア神父の過去や教会の態勢などの情報がいっぱいあった。
そして私の事は全く書かれなくなった。世間のみんな移り気なんだなと思った。
比較的、穏やかな日々を過ごしている中、兄、ダニエルとも会った。
意外と兄は普通に話していた。もしかしたらこんなに普通に話したのは初めてかもしれない。話の内容は勘当処分を取り消そうと言う話しだ。
「また家族に戻るって事ですか?」
「まあ、そういう事になるな。と言っても俺達はバラバラに住むことになるが……」
私は「戻りません」と答えた。
「……これからも、ただのシャルルとして自由に生きたいです。昔より心が自由なんです。だから家には戻りません」
私の答えに兄は穏やかに「そうか」と答えた。激昂して、何か言ってくるんじゃないかって思って身構えたが特になく拍子抜けした。
何となくだけど憑き物が落ちた雰囲気があった。前みたいに切羽詰まった感は無い。
その後、兄が経営しているヨフギの草畑はノアの旦那さん、シエルによってお茶として販売する計画の話しを聞いた。健康にいいとか風邪予防になるなどの売り文句をつけて健康食品として売り出すらしい。
ノアの旦那さんはすごいな……と思った。
「ところでノアに会いましたか?」
「一回だけ、会ったな」
「そうですか」
結局、イグニシア神父の犯行と分かったら、ノアの虚言はうやむやになってしまった。
そもそも今回の事件は連続毒殺事件で、私の父やアンリが処方した薬を飲んだお婆さんの他に、ノアの母親も含まれていた。
ノアの母親はイグニシア神父の親族に近づいて、シエルと結婚させようと画策させていた。もしかしたらイグニシア神父が毒を盛ったって事を知っていたから、ノアの母親は殺されたのかと思った。
だが警察の発表だと違うらしい。
色々と真相が気になるけど、切羽詰まって調べようって気にはならない。
もう私を責める人間が居なくなった。
それだけで、満足だ。
*
ちなみにアンリは私が修道院に入った後からあっていない。多分、就活をしているだろう。
アンリの事件もイグニシア神父の犯行と分かったため、冤罪と認められた。
「これなら推薦状なくても、就活できるね」
嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ちが募っていく。
それを打ち消すように、私は写本を取り掛かる。今まで自分のために書いてきた写本だけど、この写本は違う。
この世界の秩序を守るための写本だ。




