サンソン、みんなで真犯人の所へ行く
「ダニエル兄さんはどうして、こんなにノアの事を庇うんだろう」
「そりゃあ、恋しているからじゃないですか?」
シャルルの素朴な質問にアンリは当たり前な口調で答えた。
「ダニエルさんの顔を見ればわかりますよ。恋していて、でも手に入らない。だけど大切にしたいって」
「ふうん」
「シャルル嬢はそういう事は疎そうですから、分からないでしょうけど」
アンリの言葉にシャルルは顔を歪めて「そうですね」と言った。サンソン神父は彼らの会話を聞いて少し笑う。
そしてシャルルは「シエルさんって優しそうですね」と呟いた。
「なんか余裕があって、ノアの事をいつも気にかけていて……」
「羨ましいですか?」
「……一応、女の子だからね。こんな事が無ければ、結婚できただろうなって思って」
「まあ、シエルさんは女性にモテそうですよね」
そこでサンソン神父は「私はそうは思いませんね」と話しに入った。
「彼は何を考えているのか、分からない所がありますので」
それをあんたが言うのか……とシャルルとアンリ、そしてずっと黙っている警察の人はそう思っている顔になった。
この反応にサンソン神父は軽く笑う。
そんな会話をしているうちに、真犯人の居場所についた。
*
神聖な教会の礼拝堂の椅子にて、疲れ果てたように座るイグニシア神父がいた。そしてその周りにはサンソン神父と同じ真っ黒な神父服を着た極刑調査官の若者が見張っている。
サンソン神父が来た瞬間、若者たちは「お疲れ様です」と一礼する。
「報告します。教会を捜索した所、例の飴が百個中三個発見されました」
「ありがとう」
サンソン神父は座っているイグニシア神父を見下ろし、口を開く。
「あなたが祭りの時に渡す試作品の飴、あの中に毒を入れていましたね」
「……」
「ヨフギの草とイチロの実を混ぜると毒になる。これは普通の人は知りません。イチロの実自体は珍しいし、使う人間は教会の者を限られている」
「……」
「最初にここへ訪れた際、僕に渡しましたね、この飴。私は後で舐めようと思ったけれど、忘れて、そのままにしたら、飴は崩れて中身が出ました。見たことがある粉末だったので調べて見たらヨフギの草とイチロの実でした」
「……」
「最初は僕を殺そうと思っているのかと思ったんです。だけど、シャルル嬢のお父様の事件を調べるとあなたに会った後で亡くなっているんですよ。他にもアンリ君が間違えて処方した薬を飲んだ方も、ノアさんの母親も、ここの教会を訪れています。彼らの墓を調べれば、毒入りの飴を舐めているか分かりますよ。イチロの実は死体が腐敗しても防腐の魔法がありますから」
サンソン神父は一旦、ここで黙る。イグニシア神父は疲れたように笑う。
「ひとまず、私を毒殺しようとした罪で連行します。だが……調べればたくさんの余罪が出てくるでしょうね」
「……」
「ところで、どうして無差別に毒入りの飴をここに住んでいる人に渡していたんですか? 恨みでもあったんでしょうか?」
ずっと黙っていたイグニシア神父は口を開く。
「神様と遊んでいたんですよ」
*
パラパラとシャルルは写本を見る。すべて教会に寄付してきた物だ。アンリはぼんやりと写本のある図書室を眺める。
サンソン神父と警察の方がイグニシア神父を問い詰めているだろう。
アンリは写本を眺めるシャルルに話しかける。
「事件がひと段落したら、何がしたいですか?」
パラパラめくっていた写本の本をパタンと閉じてシャルルは静かに答える。
「とりあえず、写本をするかな」




