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アンリ、現場検証の手伝いをする


 シャルル嬢は実家に行くと懐かしそうに目を細めていた。何となく部屋を見ると物が少なく、彼女が収容されていた監獄を思い出した。机には写本の道具やペンの汚れもあって、ちょっと笑ってしまった。ここでも写本をしていたんだな。


 サンソン神父から聞いたり、借りてきた資料で彼女の事件のあらましを思い出す。


 教会の修理費などのカンパ金について話しを聞いていたシャルルの父は家に帰ってきた後、ノアの母親が出迎えた。その後、ノアの母親はキッチンで軽食を作っていた。

 ノア嬢が言うにはシャルル嬢は二階に上がってきた父と出くわして口論となっていた。そして父を突き飛ばした。

 一方、シャルル嬢は部屋を出て階段下を見るとすでに父が倒れていたのを発見した。

 ちなみにダニエルは疲れて寝ていたらしい。

 父親の頭には大きな傷があり、これが致命傷となったのだろうと思われる。なんで【思われる】と言うと医師には見せていないから。他に目立つ外傷は無い。


 事件を考えると矛盾点が多いな、と思いながら僕は毛布やシーツを大量に包んでロープに縛り、ロールケーキのような形を作った。

 サンソン神父が「なかなか、うまく出来ましたね」と褒めてくれた。一方のシャルル嬢は「大丈夫なの?」と疑わしそうに見ていた。

 サンソン神父が写本を使って呪文を唱える。が、毛布には特に変化は無い。


「それじゃあ、始めましょうか」


 サンソン神父の言葉でシャルル嬢は「よいしょ」と言って、布とシーツで作った物を階段下に突き落とした。

 するとドスンドスンと重い音をさせながら階段下まで落ちていった。

 シャルル嬢は「やっぱり、そうだよね」と呟き、僕も当たり前だけど、そうだなって思った。そして一緒に見学していた警察の方も「確かに言われてみれば……」と呟いていた。


 すると、すぐにドアが開いて「何したんだ! お前ら!」とダニエルが出てきた。更にノアやシエルも子供時代のノアの部屋から出てきた。

 サンソン神父は穏やかな声で「大変申し訳ございません」と言い、さらに続けた。


「まず細い少女が、大きな男性を突き飛ばすとしたら、どうなるかを試していました」

「だったら、前もって言って欲しいんだが」

「すいません。これが階段に突き落とされた時、ものすごい音がしましたね」


 そう言ってチラッと階段下のロールケーキ型の毛布を見下ろしながら、サンソン神父は語り出す。


「これ以上重たいあなた方のお父様が突き飛ばされた時、ダニエルさんは音を聞いていないですね」

「あ、……でも、その時、俺は寝ていたから」

「だけどノアさんの悲鳴で起きた。そしてお母様も、そうでした。それよりも、どうして突き落とされた音を聞こえていなかったのだろうかと思いまして」

「ノアの悲鳴にかき消されたんだろ?」


 ダニエルさんが苦しそうに言い訳をする。だがサンソン神父はそれには追求しないで、階段下に落ちたロールケーキ型の毛布を立たせる。すると毛布に様々な色がついていた。


「この毛布に魔法で接触した所に色がつくようにしています」

「結構、色がついていますね」

「まあ、そうだよな」


 サンソン神父の話しに僕とシャルル嬢が相打ちを打っていると、またダニエルがイライラして「どういう事だよ」と怒った。


「もし突き落とされた場合、もっと擦り傷や痣があるはずだった」


 僕が言うとダニエルは静かになった。


「だけどシャルル嬢の父親は後頭部の傷のみだ。後頭部の傷は階段の一段目の角で頭を打ったとなっているけど、それしか無いのはおかしい」

「……」

「もしシャルル嬢の言葉を真実だった場合、父親は階段には登っていなかった。階段下に転んで頭を打った……のではないか?」


 だけど、この傷で人が死ぬのか? 推理をしていても、何か問題がある気がする。


「ああ、それからノアさん」


 サンソン神父は階段を登ってノアさんに近づく。それを守るようにシエルとダニエルが前に出た。


「シャルル嬢とお父様が言い争いになっていたと言っていましたが、どんな事を言い争っていましたか?」

「え?」

「言い争っているのだとしたら、怒鳴りあっていたんじゃないのでしょうか?」

「……」

「言い争いの内容、覚えていますか? 調書には書いていなかったので」

「……わ、私は……」


 真っ青な顔で震えながら喋ろうとしたノアだったが、突然糸が切れたように倒れてしまった。





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