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シエル、親族会議に参加する

 自分の家に着いたのは深夜近くになってからだった。出迎えていた執事に「みんなは寝たか?」と聞くが、「まだ会議は終わっていませんね」と言い、シエルはうんざりした顔になった。

 そして親族が集まる食堂に入った。

「遅くなってしまい、申し訳ございません」

「おお、ようやく来たか。主役が」

 冗談交じりに誰かが言い、思わずシエルは顔をしかめた。


 シエルの一族 スミルア家は当主の祖父をはじめ、跡取りの長男であるシエルの父、実業家の次男、嫁に行った三女、三兄弟。兄弟全員、結婚しており、シエルの従妹もかなり多い。

 未成年の従兄弟たちは乳母達に二階や三階で寝かされているだろう。もちろんシエルの子であるウィルも専用の乳母が四六時中、目を離さずに世話をしている。

 食堂にいるのは大人だけではあるが、かなりの数だ。一族全員って会議をするのは王政が貴族税を上げた時以来だ。


 シエルの父が「随分と遅くなったな」と言ったので「ノアと話していた」と答えた。


「優しいな、シエル」

「惚れてんだな」


 からかい口調で言う従妹達にキッとシエルの母は睨みつけた。

 そして「元々ノアを紹介したのは、あなたでしょ!」と実業家の二番目の兄に怒鳴る。それを彼はため息交じりで、話し出す。


「確かにそれは謝るよ。知り合いの貴族からノアの結婚相手を探しているって言われて、紹介したんだ。だけど結婚を決めたのは君達だろう?」


「しょうがないじゃない! あの子は貴族としての常識も礼儀作法もちゃんとしていたし、母親が平民だったけど、のちにある貴族の後妻をしていたと聞いた。事件は終わっていると言う事になっていたから、特に問題ないと思っていたけど」


「その事件が冤罪で、しかも【法の書】の写本で証明した。誰も思いつかないよ。新聞では【犯人をギロチンにかけてやりたい】と言って有識者から批判されているけど、彼女を同情と共感したって言う人は多いみたいだ。というか、警察の冤罪事件はこれだけではないって言う意見も多いぞ」


「殺された父親を悪く言いたくないけど、よくいる贅沢を忘れられない貴族だったみたいだね。犯人とされた娘はほとんどネグレクトのような扱いだったらしい。理由は母親の実家からの金銭的な援助が無かっただけ。そもそも母親の実家も貴族としてやっていけなくなってしまい、家を取り潰されていたからね。その仕返しなのかお金がもったいないからという理由で大した医療施設の無い病院で、娘を出産させたらしい。しかも母親は病弱だったため、出産の際に亡くなってしまった」


「ある意味、母親を殺したと言っても過言じゃないね、殺された父親。母親の実家の人もシャルル? って子を引き取りたいとしていたけど、父親は全部断ったらしい。それなのに貴族としての教育もほとんど受けさせなかった。しかも彼女は魔導書の写本が出来るくらいの魔力があるのにも関わらず、魔法の勉強さえもしてこなかったらしいな。いや、その前に女の子なのに男性の名前を付けるなんて、ねえ」


「そういう点ではダニエルって言う兄も苦労人だな。ガキの頃から領地管理も任されたらしい。それで出来なかったら虐待されていて、可哀そうだよ。父親は自慢の息子と言っていたけど、子供は軽蔑していたみたいだ」


「あの子の父親もヤバいけど、後妻に入ったノアの母親も負けず劣らずだ。事件の概要だけを聞くと警察はどうしてシャルルを犯人として捕まえたのかって思うくらい証拠が揃っていない。しかもノアの目撃情報だけで犯人を捕まえたらしいね。恐らくノアの母親も裏で糸を引いているんじゃないかな?」


「あー、それね。生前ノアの母親が知りあいの貴族に会った時、父親の事件を話した時『ノアはうまくやったわ』と言っていたらしいね。どういう事? って聞いたら誤魔化したらしいけど、絶対に擦り付けたんだなって思う」


「だけどノアの母親は、後に不審死をしているよね。これも本当は事件なんじゃないのかな?」


 どこから集めてきたんだろうっていうくらい様々な情報が叔父、叔母、従妹達から出てくる。それをシエルは黙って聞いていた。そしてノアやダニエルを思い出す。彼らはとても静かな人達だった。嫁に行った叔母や実業家などになった叔父、社交界にデビューした従妹達はどこで手に入れたか知らないが自分たちが得た情報を喋りたくて、とっても喧しい。親族の中で静かなのは、自分の父親と祖父くらいだ。

 

 親族の喧騒に頭が痛いシエルに、父親は「ノアはなんて言っているんだ?」と聞いてきた。


「ノアに今日、この話しをしたがパニックになって話ができる状況じゃ無かった」

「パニックを装っているんだな」


 バッサリと言い捨てる父親を無視して、シエルは話しを続ける。


「彼の兄にも話しを聞いてきた。そして事件を担当する極刑調査員と言う神父にも。この事件について、これから事故と事件、両方に視野を入れて調べ始めるらしい。そしてノアも協力する事になっています」

「それでいつ、ノアと離縁するんだい?」


 不躾な事を聞く祖父の質問はすぐに答えられず、シエルは黙る。騒々しい鳥のように情報を言い合っていた一族に長い沈黙が流れた。


「この事件の真相が明らかになってノアが犯人だった時、離縁します」


 この意見に母親は「遅過ぎない?」と聞く。一族のほとんどがそれに同意するかのように頷いたり、「そうだよ」と言っている。


「確かに遅いかもしれません。だけどまだ真相が明らかになっていないままで離縁をして、もしこの事件がノアは貶めた犯人や関係者でもなかった、彼女も罠に嵌められたと発覚した場合、我が一族は非難される可能性があります。だったら、この事件の真相が分かり冤罪の話題が冷めた時に離縁した方がいいでしょう」


 シエルは「だから、ノアとの離縁はもう少しだけ待っていてください」と言って締めくくった。




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