サンソン、警察のお偉いさんに会う
「……資料はこれだけですか?」
サンソン神父は少し呆れ気味に聞いて、出された資料をパラパラめくって見る。しかも前回、見た資料と全部同じで眉をひそめて口を開く。
「資料が少なすぎると思います。しかも殺人事件だったら、検死くらいはした方がいいですよ。普段もこれだけなんですか?」
「いえ、そんな事はありません。ただある事情がありまして」
この国の警察のトップが嫌そうに説明する。
「この事件が起こった時、テロ事件が起こって人員不足だったんです」
「それで冤罪が起こった」
サンソン神父の言葉にシャルルの領地にいた警察のトップは「あんたは何もわかっていない!」と怒鳴った。
「あの時は人員も時間も無かったんだ! あんな、ありふれた事件なんて」
「警察にとってはありふれた事件でしょうが、シャルル嬢にとっては重大事件ですよ。そもそも、あのテロ事件について軽く調べただけで、地方と都市部の警察の連携が取れていない事が分かります。改善した方がいいと思いますよ」
警察の怒りを買うようにサンソン神父は言い、そして「まあ、それについて、私は関係ないですけど」と聞いた。
「それから、この事件を殺人事件として調べたのは、どうしてですか?」
「え? 突き落としたと言っていたので……」
「もしかしたらシャルル嬢が転んで父親が支えようとしてバランスを崩してしまって、階段から落ちたとかの可能性もあるかもしれないですよ。そうすると目撃者は突き落としたって見えたのかもしれない」
「待ってください。父親とシャルル嬢は仲が悪かった。転んで支えるって可能性は……」
「あくまで可能性の話しですよ。目撃者である少女の言葉をすべて信じてシャルル嬢を犯人にするのはいささか横暴じゃないのでしょうか?」
この指摘に警察関係者は目を逸らして苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
サンソン神父は更に「事件か事故か」と更に続けた。
「これだけしか証拠が無いのに証言者のみの言葉だけで、殺人事件とするのもおかしな話だ。どうしてこれを殺人事件にしたんですか?」
「……」
「そもそも、この事件を当時担当していた方はいらっしゃらないのですか?」
サンソン神父は聞いたが彼らは厳しい顔をして俯いた。しばらく沈黙をした後、署長は口を開いた。
「あの、我々に任せられませんか?」
「任せるとは?」
「この事件の再捜査ですよ。今度は真っ当に……」
「残念ですが、聖女候補のシャルル嬢は私、極刑調査員に捜査を希望していますし、法王もこの件について捜査せよと命令を下されています」
サンソン神父は「あ、そうそう」と言って、思い出したかのようにこういった。
「私が頼んでいた例の事件についての資料は持ってきてくださいましたか?」




