表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/42

アンリ、シャルル嬢の兄の対応を任される


「お待たせしました」


 そう言って教会の談話室で待っていただいているシャルル嬢のお兄さん ダニエルさんの前に立つ。

 シャルル嬢ではなく、僕が来たことでダニエルさんはイライラした表情になった。


「シャルルは?」

「具合が悪くて、こちらに来れないそうです」


 適当に嘘ついて、「何か伝えたいことがありましたら、お伝えします」と言った。

 ダニエルさんは舌打ちをして話し出す。


「どういうつもりだ?」


 いきなりそう言われて僕はなんと答えればいいか分からなかった。僕が戸惑っていると、説明不足と分かったダニエルがさらに話し出す。


「しょうもない写本を書いて、冤罪を証明したんだってな。しかもサンソン神父って言う奴を使って事件を調べ直そうとしているんだってな」


 彼女が【法の書】を写本した事によって冤罪を証明したことに、なんで怒っているのだろうか? それからサンソン神父って極刑調査官の人間だよな。彼女と教会の関係者の話しを盗み聞きした時、サンソン神父に会った事があるかって聞かれていたけど、なんでそんなに怒るのか?

 理解が追い付かないので、ダニエルが「まあ、あんたに言ってもどうしようもないな」とバカにした感じで言った。


 とりあえず答えられる事だけは言っておこう。


「確かにシャルル嬢は【法の書】を書いて冤罪を証明しました。というか彼女は最初からやっていないと訴えたのですが、信じてもらえないから書いたようです」

「あいつの言う事なんて信じるものか!」

「だけど、サンソン神父に頼んで事件を調べているのは知らないです。その人について彼女は会った事も無いですし」

「じゃあ、なんでやってきたんだ!」


 本当にイラついているようでダニエルは怒鳴る。短気な人だな、と思いつつ僕は「それは知らないですね」と困ったように言った。


「何があったんですか?」

「サンソン神父が父親を突き飛ばした事件について僕の所に聞きに来たんだ。しかもノアの夫に会って話しを聞きに行こうとしてきた」

「ノア? シャルル嬢の腹違いの妹さんでしたっけ?」

「そうだ! ノアは今、妊娠していて大事な時なんだ。それなのに事件の事を思い出して、もしもの事があったら……」


 どうやら腹違いの妹の事が心配だったようだ。確かに強いストレスがあれば、流産の可能性もあるからな。というか、妹さんは結婚しているんだ。


「ノアはあの事件後、精神的に辛そうにしていたんだ。しかも母親も事件後に亡くして……。そしてようやく心が通じ合う人と出会って結婚できたんだ。それをあいつは邪魔して」

「ちょっと待ってください。シャルル嬢は勘当していたから、ノアさんの結婚や妊娠なんて知らないです。だから邪魔なんて考えていないですよ」

「そうだ。あいつは我が家と無関係なんだ! それなのに、また私達と関わってきたんだ! あいつは!」


 ダニエルのあまりの気迫に僕は返す言葉が無かった。本当にダニエルはシャルル嬢を嫌っているんだろう。血のつながった妹ではなく、腹違いの妹を大事にしているのか……。


「もう一度、言う! 僕たちにとって父さんの事件は終わったんだ! 僕らの家から殺人犯が生まれて、それだけで醜聞が悪いのに頑張って立ち直らせて来たのに! それなのに、また蒸し返されて迷惑だ!」

「それは彼女を悪者扱いにしたいと言う事でしょうか?」

「悪者扱いじゃなくて、あいつが犯人なんだ! 貴族の娘として教養は無いし、現に何を考えているか分からない奴なんだ!」


 怒鳴っているダニエルを見て僕は思わず「……あなた、真犯人を知っているんですか?」と聞いた。


「真犯人云々以前に、シャルルが……」

「普通だったらシャルルが犯人じゃないかも、と知ったら誰が犯人なんだ? と戸惑いと疑問を抱きます。それなのにあなたは彼女が犯人じゃない事に憤っています。というか、犯人にしたい気持ちがあるように見えます」

「僕を疑っているのか?」

「疑ってはいません。だけど家族が犯人じゃないと分かったら、そこまで憤るのはどうかと」


 僕の言葉にダニエルは顔をゆがませて「お前は事情を知らないんだ」と言った。

 でも犯罪被害者にしてみれば、十年経って犯人が冤罪でしたって言われたら嫌だろうし、では真相は? と考えれば気持ち悪い気持ちになるだろう。


 これはシャルル嬢に会わせなくてよかったな、と思っていると、ダニエルは僕の方を見て「お前はなんなんだ?」と聞いてきた。


「あー、彼女の付き人です」

「付き人……。あいつも傲慢になったな。とにかく僕やノアに関わるな。僕らにとっては終わった事なんだ。もし真相が知りたかったら、国や警察の命令で言わないと僕らは動かない!」


 シャルル嬢の話しを聞いて兄のダニエルさんの印象はあまりよくなかったけど、直接会ったら短絡的なんだなと思った。恐らく腹違いの妹さんの周りをサンソン神父が嗅ぎ回ったから頭に血がのぼっているのかもしれない。

 それにしてもシャルル嬢ってマジで嫌われていたんだなと改めて思った。出産時に母親を死なせたにしても、どうしてあんなにも毛嫌いするのだろうか? しかも腹違いの妹の方が大事みたいだし。


 それから極刑調査官のサンソン神父も気になるな。僕達の知らない所でいろんなものが蠢いているようだ。


「もういい!」


 突然、ダニエルさんはそう言って僕を押し退けて「あいつに会いに行く!」と言って部屋を出て行ってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ