◇303 流石に真実は伝えない
ミーNaさんには重すぎると思って本当のことは伝えない。
……そんな必要無いのにね。
ミツキミから戻って来た私達。
代表して私がギルド会館に足を運んだ。
無事に? 依頼を? こなせたから? 報告しに来たんだ。
「あっ、アキラさん。本日はどのような御用でしょうか?」
「こんにちはミーNaさん。この間の依頼なんですけど」
私がギルド会館に足を運んだのは、この間の依頼が原因だ。
ミツキミであった一連の病気。あの真実は本当に辛い。
でも、私は言葉に出せなかった。本当にこれでいいのかな?
「届けてきました。達成、でいいですよね?」
私は村長さんから預かった証明証を見せた。
そこには村長さんのサインが入っている。
だから間違いなく依頼は達成されているけど、承認してくれるのはギルドだ。
「はい、確認させていただきますね」
ミーNaさんは丁寧なやり取りをしてくれた。
サインを確認すると、「はい」と首を縦に振る。
それで何が分かるのかな? 野暮だけど、前にNightが言っていた疑問を思い出す。
「確かに依頼はこれにて完了です。ありがとうございました」
如何やら無事に依頼は達成出来たらしい。
これで完了。肩の荷がドンと下りた。
何だか胸がザワザワしていて、正直本当にこれでいいのか悩んでいたけど、ようやく解放される。
「あの、アキラさん?」
「はい?」
「なにかありましたか?」
核心的なことをニュアンスは変えて、訊ねて来る。
追及されても答えないよ? 私だって、話したくないことは言わない。
何せ、ミツキミにはミーNaさんの知り合いがいる。
「Uサラさんのことですか?」
「は、はい」
UサラさんはミーNaさんの知り合いだ。
もしかすると、手紙か何かで報告されていたのかな?
如何しよう。変な話になってたら怖いな。
「あの、なにかありましたか?」
「いえ、なにもありませんよ。ただ……」
「ただ?」
ミーNaさんの目が泳いでいた。
言葉や表情から、ミーNaさんの感情が伝わる。
ドクンと胸を打つと、私は全部分かっちゃった。
「Uサラから、村長さんがもう薬はいいと言っていたみたいです」
「えっ!?」
それって如何いうこと? もしかして村の人達に全部話しちゃったのかな?
うーん、そんな風には全然見えないけど、私達が帰った後に何かあったのかな?
多分、上手く誤魔化しながら説明したに決まっている。
「あの、アキラさん。なにかあったんですか?」
「分からないです」
「……えっ?」
私は無表情で返答した。
もちろん全部嘘なんだけど、ミーNaさんは困惑する。
完全に理解が追い付いていないけど、視線が右往左往していた。
「ど、ど、どういうことですか?」
「分からないです」
「えっと、その……アキラさん?」
「分からないです。知らないです。一体なにがあったんですか?」
もちろん全部知ってる。でも絶対に答えたくない。
答える必要なんて無くて、ミーNaさんの方から聞きたい。
もしかして、村長さんは全部答えちゃったのかな?
「ミーNaさんは何処まで聞いているんですか?」
「えっと、Uサラからは村長さんが病気はもう治ったと。ウサギ病は現行の薬では効果が無いと伝えられたそうです」
「そ、そうなんですか……そっか」
村長さんは上手く誤魔化したみたいだ。
でもそれって、とっても批判を買うことになるんじゃないかな?
だって、何も解決していない。真実を覆い隠しているだけで、前には進んでいなかった。
「これはどういうことですか?」
「えっ?」
「ウサギ病は完治したんですよね、アキラさん!」
期待を込めた目を浮かべられてしまった。
痛い、痛いよ。だって、ウサギ病なんて存在しない。
だから一生完治することは無いから、何とも言い切れなかった。
(待って。ってことは、ウサギ病ってことになってるの?)
やっぱり村長さんは村人達を騙しているんだ。
ウサギ病が一生完治しない、完全に体質だって分かっている。
だから言葉に出せないから、私は何も言えない。
「私からはなにも言えないです」
「えっ?」
完全に嘘を付くのはダメ。きっと後で色々バレる。
だったらここは上手く濁すことにした。
濁さないと、きっと険悪な空気になっちゃうから、私は如何しても否定しきれなかった。
「でも、どうやって連絡したんですか?」
「それは……こちらの手紙です」
「手紙!?」
えっ、私達が戻って来たのは数日前。
もしかして、最速で手紙が届けられたってこと?
ちょっと待ってよ。ギルド会館だけ優遇され過ぎだよ!
「そっか。字が書けるくらいには回復したんだ」
本当に風邪の強化版くらいには、とんでもないことになってた。
でも字が書けるくらいには無事に回復に向かっているみたい。
なんだろう。ちょっと嬉しい。
「よかった。よかったー……のかな?」
「アキラさん、何処か含みがありますよね?」
「そ、そんなことないですよ。でも、よかったです。落ち着いたんですね」
もしかして、薬が効いたのかな?
それとも、Ma=ンゲツノミコトさんが何とかしてくれたのかな?
どっちにしてもよかった。私はホッと胸を撫でると、妙なことをミーNaさんは口にした。
「ですが、手紙には妙なことが書かれていたんです」
「妙な事ですか?」
「はい。ウサギ病の症状が回復に向かったのは、先祖の供養をしたからですよ」
「先祖の供養……」
もしかして、村長さんは分かっていたのかな?
私が伝えたかった言葉の意味を理解してくれたのかも?
ちゃんと先祖を供養した。そのおかげか、ウサギ病が回復に向かった。
(あれ? それって……)
もしかして、あの女子は本当にそうだったの?
冗談じゃなくて、幽霊だったんだよね?
“呪い”って言葉もシックリ来ると、不気味過ぎて怖くなる。
体がつい身震いしてしまうと、私はミーNaさんに変な顔をされちゃった。
「どうされたんですか、アキラさん?」
「な、なんでもないですよ」
これは胸の内に仕舞っておいた方がいい。
でもきっと、フェルノ以外は気が付いていた。
後で話した方がいいのかな? そう思っていると、ミーNaさんは忘れないうちに報酬を手渡す。
「どうぞ、アキラさん。報酬です」
「ありがとうございます。お金と……木箱?」
「のようですね。中身は拝見していませんが」
「なんでいていないんですか!」
「そう言う約束なんです。これはギルドを通したものではないですから」
渡されたのはジュエル。まあお金だよ。
それからpも貰えた。これでまたランクが上がるかな?
いよいよCに行けるかもと期待する。
だけど気になるのはこの木箱。小さいな。
中身は何だろう? 確認したいけど怖い。
何たってギルドが職務放棄した奴だよ? 受取っていいのか分からないけど、置いて行くのも悪い気がした。
とりあえずスッと手を伸ばして手の中に包む。
「ありがとうございます、ミーNaさん」
「はい、こちらこそありがとうござました」
私はミーNaさんから報酬を受け取る、インベントリに仕舞う。
それからクルンと振り返ると、スタスタと扉へ向かう。
速く報酬を確認しないとね。私はそう思う中、ちょっとだけ確認する。
「なにが貰えて……木箱? 中身……ッ!」
「どうされましたか、アキラさん?」
木箱の中身を少しだけ見た。立派な箱で、蓋を開けてみる。
肝心の中身は……意外に小さい? って……言葉を失う。
悲鳴さえ小さく上げてしまうのが限界で、それを聞いたミーNaさんや周りの人の視線が痛い。
「な、なんでもないですよ。なんでも」
不審そうに思われちゃったかもしれない。
でも流石に言えないし、震える手も何とか抑える。
木箱の蓋を絞めて、私は苦笑いを浮かべていた。
「もしかして、あの時聞こえた声とか私に伝わった……うおっ、変な感じだよ」
身震いをしちゃった。だけど嫌じゃなかった。
怖いって感情はもちろんあるけれど、伝えられてよかった。
寧ろそっちの方が高まると、私は受け取った報酬を、すぐさまインベントリへ本当に戻してからギルドホームに戻った。
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