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VRMMOのキメラさん〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!?【リメイク版】  作者: 水定ゆう
7ー4:月は何を知っていた?

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302/304

◇302 正しく供養してね

最後はちょっと怖め。

「とりあえず、私達のできることはこれで終わりだな」


 Nightは抱えていたものを全て吐き出した。

 吐き出された村長さんは可哀そうだけど、私達には如何することも出来ない。

 でも獣だったら……うーん、進行を遅らせることは出来なくても、何か無いのかな?


「Night、ウサギ病……獣に戻らなくて済む方法は無いの?」

「あれば苦労しない」

「そうだよね。でも、月が関係しているんだよね?」

「そうだな。この時期特有……もしかすると、月の光を拒絶すれば、少しは改善するかもしれないな」


 あくまでも可能性の話を繰り広げる。

 如何してもウサギの姿に戻るのを防ぐことは出来ない。

 それならいっそのことウサギに戻って、苦しまなくても済む方法が無いか探る。


 その中で一つ思い付いたのは、“月の光”を浴びないこと。

 多分だけど、この体質は治すことが出来ない。

 でも月が関係しているのは、直の被り方的にも明らか。

 それなら月の光を拒絶すれば、少しは苦しまなくても済むかもしれない。


「そう上手く行きますかな?」

「分からないな。そんなこと、試しても無い」


 村長さんも聞き耳を立てていた。

 長くて立派なウサギの耳で音を捉えると、不安そうに答える。

 Nightはやっぱり無責任で、村長さんは愕然とする。


「ですがそうですな。一度試してみてもいいかもしれませぬ」

「そうか。やるなら勝手にしてくれ」

「はいぃ……」


 本当にNightは最後の最後で突き放した。

 溜息が今にも零れて聞こえそうな村長さん。

 そう言えばだけど、今まではコレを呪いとか病気だと思っていたみたい。

 しかも“呪い”の方を重視していたみたいだけど、その時はどんなことをして、ウサギ病を鎮めようとしていたのかな?


(そう言えば、あの子が言っていたような……)


 私が見つけた女子。あの子は言っていた。

 この”呪い“って。しかも”月が映る“限りって言っていた。

 アレってどういうこと? 何だか胸がザワついて、今更だけど言動が妙だと思った。


「あの村長さん、一つ聞いてもいいですか?」

「なんじゃ?」

「この、ウサギ病のことを“呪い”って呼ぶ人って、どのくらいいますか?」


 私が気になるのは本当のソレだよ。

 私の読みが正しかったら、きっと村長さんの言葉は決まっている。


「ん? ああ、年寄りだけじゃな」

「そ、それじゃあ、子供達は?」

「病気だと思うて、日々治るのを夢見ておりましたな」


 それは聞きたくなかったな。だって、ウサギ病は病気なんかじゃない。

 一生治ることは無い。永遠に付き纏う体質だ。

 胸が痛くて仕方が無くなり、私達は視線を落とす。


 だけどこれでまた違和感が膨れ上がった。

 ウサギ病はその名前の通り、“病気”ってことになっているらしい。

 でも“呪い”って言う人もいて、それは高齢の人達だけ……やっぱりおかしい。


「あの、村長さんの家で寝込んでいた村人達って、あれで……」

「全員じゃな」

「全員!? それって、一人くらい大丈夫な人は?」

「今この村にはいませんな」


 村長さんの言葉が余計に引っ掛かった。

 この違和感は何? 凄く怖くて仕方が無い。

 全身に鳥肌が走ると、顔から血の気が引く。


「ええっ!?」

「おい、一体なにを怯えているんだ」

「いや、あの、その……」

「もしかして……おい、今まで呪いだと思って鎮めようとした過去があった筈だ。その時、どんなことをした」


 Nightは私の怯える様子に気が付いた。

 みんなも奇妙に思っていたけど、正直言葉にはしたくない。

 でもNightは流石の洞察力で読み切ると、村長さんを捲し立てた。


「えっ、いや、それは、その……」

「答えられないのか?」

「いや、関係無い。今の時代には関係無いことなのでな。答えることはできんのだ!」


 村長さんの態度が明らかに変わった。

 動揺している。知られたくない事実が隠れている。

 これは想像なんだけど、多分この村では今じゃなくてもっと昔、ウサギ病を体質だと受け入れられずに、呪いだと思って酷いことした。それで鎮めようとしたんだと、すぐに想像に合点が行く。


「ふざけているな。そんなものを、この世界の❘管理AI《神》はよしとしたのか?」

「か、神……? 満月の神様はMa=ンゲツノミコト様がなにをよしとして」

「そう言うことじゃない。はぁ、悪いがこれ以上は関わる気も無いな。人間の業をこれ以上見下ろす気にはなれない」

「う、うん。実際にあったことだとしても、嫌だな」


 どの時代でもきっとあったと思う。

 現実にだって、そう言った話はあった筈。

 それこそ今は色々と便利と不便の狭間だから、なかなか起こらないとしても、昔はねって気持ちになる。


「はっ。そんなことで、体質が改善する筈が無いだろ」

「そんなことは! ……分かっておるが。……えいやっ、関係無い! 関係無い部外者は黙っておれ」


 村長さんは突然癇癪を起した。

 反応を見るに、きっと最近もあったに違いない。

 最低だな……って言えない。だって、何が何だか分からなかった筈で、でも私は目を背けたくて、凄く嫌になる。


「ねぇー、一体なんの話してるのー?」

「フェルノは分からないままでいいわよ」

「えー、どうしてー?」

「分からない方がいいことも世の中ありますからね。そうですよね、アキラさん、Nightさん」

「う、うん」


 雷斬とベルは気が付いているみたいだ。

 それならフェルノには知らないままでいて貰おう。

 余計な話にならないことを祈って、私達は出来ることを完全に失う。

 と言うよりも、これ以上の被害を食い止めただけでも、きっとよかった筈だ。


「私達は帰るぞ。そして、もうこの村には来ないかもな」

「えっ!?」

「それと、もう二度とそんな酷いことを繰り返さないでください。後、ちゃんと弔ってあげてくださいね」

「うっ……分かっておる」


 村長さんも改心してくれたみたいだ。

 流石に表情から裏は無くて、表だけ。きっと村長さんも分かっていたんだ。

 少なくともこれから先のことは分からない。でも、真実は伝えた。それを如何受け取るかは、ミツキミの人達次第だから。


「あっ、待ってよNight!」


 先に帰ろうとしたNight。興味を失ったみたい。

 そうだよね、Nightはそうするよね。分かってたよ。

 私達は追い掛けようとすると、急に背中を撫でられた。


『待って、ちゃんと、伝えて』

「えっ!?」


 ピタリと足が止まった。ほんの一瞬だけ声が聞こえた。女の子の声だ。

 でも周りには女子の姿は無くて、しかも【幽体化】が強制発動された。

 ほんの一瞬の出来事で、まさかのバグを疑うよ。


「どうしたのよ、アキラ?」

「はい。鳥肌が立っていますよ」

「そ、そうなの?」


 ベルと雷斬が振り返る。心配してくれたみたい。

 でも私にも分からないんだ。けれど鳥肌が立ってる。

 何が起きたのか明確には分からないけれど、何故かあの声には聞き覚えがある。


(今の声って……)


 今の声は……一体誰だったかな? よく思い出そうとする。

 そんな中、頭の中に記憶が蘇った。何故かゲーム内の景色がフラッシュバックする。

 これには意味があるのかな? 私がおかしくなっちゃったのかな? 怖さが勝るけれど、何かしないといけない気がする。


「あっ、そうだ! 少しだけ待ってて」

「「「ん???」」」


 だから私は体が勝手に動いていた。その足は一旦村長さんの所に戻る。

 一体何故かは分からないし、みんな困っていた。私のことを目で追い掛けるけれど、今の声はきっとそうだ。


「すみません、村長さん!」

「なんじゃ?」


 落ち込んでいる村長さんの前までやって来た。汗は掻いていない。そんなに疲れていないから。

 でも腰を落として視線を合わせる。目を見て話そうと努力するけれど、なんだか聞き辛い。

 そこで不思議な言葉をなぞってしまう。なんでかな、変な私だよ。


「あの村長さん、この村って女の子いませんか? その、話しがシッカリできる十歳前後くらいの」

「そんな子、この村には今はおりませぬな……」

「今は? あの、その、もしかしてなんですけど、ちゃんと(・・・・)してくださいね(・・・・・・・)

「ん!?」


 私はしどろもどろになった。でもこれだけは言わないと行けない。そんな思いだった。

 不思議な言葉が湧き上がって来る。言った方がいい気がしたからだ。でもなんでだろ?

 想いを繋ぎ止めたような感覚に陥ると、私はスッとする。代わりに村長さんは目が泳いでいた。


 何を“ちゃんとする”のかな? なんで“ちゃんとしないといけない”のかな?

 私にはそれ以上のことを訊く勇気は無かったし、理由も無かった。

 ただ一つだけ、この言葉には鋭くて根幹に当たる呪いが隠されているのだけは伝わる。それがなにかは知らないけれど、ウサギ病と関係があるのかな? 分からないままだよ。 


「あの、変なことを言っちゃってごめんなさい。気にしないでください」

「ま、待ってくれんか? どうして、そんなこと……」

「えっと、会ったから、です。それじゃあさようなら」


 私も変なことを言っている気がした。でも何となく分かった気がする。

 気が付きたくなかった真実が見えそうで見えない。そんな気持ち悪い状態で、私は村長さんに絡まれても無理。

 対応出来ないから急いでこの場を離れた。これでよかったのかな?


「何故、何故なんじゃ? どうして、知って……うっぶ!」


 村長さんは狼狽えていた。秘密でもあったのかな? 分からないよ。

 私は振り返ることはしなかった。耳も塞いでいた。

 吐き気を催しているみたいな声がしたけれど、耳元で『ありがとう、お姉さん』と聞こえて来た方が怖くて逃げだしていたんだ。

 でも温かくて、もしかして感謝されたのかな? 本当に不思議な気分だよ。


「なんの話をしていたんだ?」

「ううん、なんでもないよ?」

「……そうか」

「なになに、なんの話ー?」


 今のは私がふと思ったことを口走っただけ。別に意味は無いんだ。

 ただ気になっていたことが溢れて来た。それだけのこと。……なんだよね?

 でも如何して、如何して急に【幽体化】が? 一瞬だけ半透明になった体を撫でた違和感を抱えながら、私達はミツキミを後にした。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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