◇299 ウサギ病の真実
このオチを書きたいがために、ここまでのフラグを建て続ける。
「って、そうじゃないですよ!」
ここに来て我に返る。
そうだよ、そう。私達が知りたいのはそうじゃない。
なのにMa=ンゲツノミコトさんはキョトンとした顔をする。
「『そうじゃない、だと?』」
「そうじゃないですよ!」
何にも分かってくれていなかった。私はボケだと思ってた。
でもこの反応はマジそうで、私はついつい敬語を捨てる。
フランクな口調になると、Ma=ンゲツノミコトさんに伝えた。
「私達が知りたいのは、ウサギ病のことです」
「『ウサギ病?』」
「そうだよ、ウサギ病だよ!」
Ma=ンゲツノミコトさんは目を閉じた。
瞼の向こう側で必死に考えると、“ウサギ病”に付いて検索する。
忘れていたって言うか、意識していなかったみたいで、何だかなだった。
「まさか、忘れていたのか?」
「『そんな筈はありませんよ。そうだ、忘れていたなどあり得んな』」
絶対に忘れていた。顔色は変わらないけど、汗を垂らしていそう。
実際には全く汗を掻いていないんだけど、普通に書いているように見える。
私達はムッとした表情を浮かべると、Ma=ンゲツノミコトさんを見損なった。
「『ウサギ病とは、風土病のことだな』」
「そうだ。だがそんなこと、この土地で祀られている限り知っていてもおかしく無いだろ。なにを今更」
「『それが今更では無いのですよ』」
そう言えばも何も、話に脈絡が無かった。
私達は一度説明した筈で、それを聞き取ってくれた筈。
なのにこの態度でこの反応。忘れている……って言うのかな? それとも認識とのズレがあったのかな?
——まるで、最初からウサギ病なんて知らない——
みたいに、私は見えてしまった。
如何してかな? 如何して、そんな風に見えるのかな?
Ma=ンゲツノミコトさんの表情がそう語り掛けて来るんだよね。
「えっ!?」
「どうした?」
「なにかあったのー?」
自分一人で納得して、驚いちゃった。
まさかそんなことあるの? それじゃあれは一体なに?
私は真実が知りたくて、Ma=ンゲツノミコトさんに言葉を投げる。
「あの、Ma=ンゲツノミコトさん」
麺と向かってMa=ンゲツノミコトさんを見た。
声を掛けると、全て把握していたみたいに、私の顔をジッと見つめる。
目と目が合うと、全て見透かされる。
「『なんです? 我らに用でもあるのか?』」
「はい、あります。あの、そう言うことですか?」
「『ふっ』」
やっぱりそうだったんだ。
私は改めて訊ねると、Ma=ンゲツノミコトさんは笑った。
あまりに不適だったからかな? 私は自分の想像力が怖くなる。
「やっぱりそうだったんだ……」
言葉の余韻を残しちゃった。
私は本当の意味で理解すると、凄く悲しくなる。
だって、ミツキミの人達がやってることって、ただの……
「アキラさん、なにが分かったんですか?」
「実はね……」
雷斬に訊ねられたので、答えようとした。
その瞬間、Ma=ンゲツノミコトさんは口走る。
鋭い真実を突き付けると、言葉を失う。
「『……だ』」
Ma=ンゲツノミコトさんは口にした。
その真実はあまりにも残酷だ。
仕方が無いの一言で片付けようと思えば簡単だけど、私は何だか嫌だった。
「それって本当ですか!?」
「『本当です。これが真実だからな』」
Ma=ンゲツノミコトさんは決して揺るがなかった。
頭を抱えたくなるけど、本当にこれが真実なの?
それじゃあ、一体如何したらいいの?
そもそも、説明が出来ないよ。そんな残酷な真実、口にしたくない。
「あの、どうしたらいいんですか?」
「漠然としているな」
「でも、漠然としていないとダメだよ?」
Ma=ンゲツノミコトさんに訊ねた。
如何したらいいのか分からなくて、先にNightが口にする。
あまりにも漠然としているけれど、漠然としていないと辛い。
「『無理だな』」
Ma=ンゲツノミコトさんはバッと口にした。
鋭い矢が胸を射ると、ドクンドクンと溢れ出す。
結局神様でも如何にもできない。これはそう言う話題なんだ。
「『無理ですよ。ウサギ病は……な』」
Ma=ンゲツノミコトさんは追い打ちを繰り出した。
私達は黙らされると、何も言い返せなくなる。
この真実、伝えたくないな。帰ってもいいかな?
「本当に無理ですか?」
「『……できなくはないが、そのためにはあの村の人間達を全員滅ぼす必要があるな』」
「それは……ダメだよ」
Ma=ンゲツノミコトさんは流石に神様だ。
規格外の言葉を平気で口にすると、頼んだら本当にしてくれそう。
「ちなみに、頼めば本当にしてくれるのか?」
「『もちろんですよ。我らの試練を超えてみせたのだからな』」
「超えてみせたからか……」
Nightさん、そんなこと頼まないでよね!?
後、Ma=ンゲツノミコトさんはやらないでね。
頼んだらやってみせるのは、絶対に違うよ。
「まさか頼んじゃうの!?」
「頼む訳が無いだろ、バカが」
「だよね。よかったー」
Nightなら本当にやっちゃいそうだった。
だからホッと胸を撫で下ろすと、安心してしまう。
って、安心しなくてもいいよね? 安心なんて関係ない。
「どうするのよ? 真実を伝える気?」
「伝えてもいいのかな?」
「別に、その義理は無いわよ。依頼は終わったんだから、引き返したって構わないでしょ?」
ベルの言い分はとっても正しい。
私達が責任を負う必要は無い。嫌われるくらいなら、引き返してもいい。
無理をして、嫌な思いをしてまで、ミツキミの人達を助けるのも違った。
でもなー、ここまでやったんだけどね。
軽くオブラートに伝えてあげた方がいいのかな?
せめて村長さんにだけなら、もしかするとバチッと来るかもしれない。
私の胸がドクンと波打った。
きっとこれが最善で、私が思い付く出来るだけの善意。
善処すると、単純な直感が唸っていた。
「どうする気だ?」
「私? 私は……」
Nightに問い掛けられてしまった。
如何しよう? 何が正解かな?
そう思っていると、雷斬の目がある。
「アキラさん」
「うん、そうだよね。このままにするのは気持ち悪いから、上手く誤魔化して伝えよう」
私の本心を揺さぶっていた。
もしかして、曝け出せってことかな?
私がやりたいのは……このままは気持ち悪いってことだよ。
「本当に伝えるつもり?」
「お前にそんな高等テクニックができるのか?」
「うっ!」
Nightにズバリと言われてしまった。
うーん、出来ないことは無いと思うよ?
でも難しいと思い、私は目が泳いで思考を揺らす。
「それじゃあ一人だけ、一番理解力のある人に伝えるのはどうかな?」
「となると、村長か?」
「うーん、それがいいかもね」
村長にだけは真実を伝えてもいい。
でも優しく、オブラートに、出来るだけ傷付けないようにしたい。
注文が多いかもしれないけど、そうしないと激昂されそうだよ。
「分かった。お前の考えを飲もう」
「ありがとう、Night」
「仕方が無いわね」
Nightとベルは受け入れてくれた。
渋々って感じだったけど、結局折れてくれてありがとう。
「Ma=ンゲツノミコトさん」
「『なんです?』」
私はMa=ンゲツノミコトさんに感謝を伝えた。
だってここまで色々教えてくれたのは、Ma=ンゲツノミコトさんのおかげだから。
試練はヘンテコで大変だったけど、無事に乗り越えたって気になる。
「ありがとうございました。またここに来てもいいですか?」
「『ふっ。我らの試練を無事に超えてみせたのですよ? 構わない』」
「ありがとうございます」
Ma=ンゲツノミコトさんは認めていた。
まさか本当の試練を超えてみせるとはって顔だ。
何よりもまた来ることを快く思ってくれてホッとなる。
「それじゃあ、みんな。一旦村に戻ろっか」
私は前向きに捉えていた。
全員に声を掛けると、ミツキミに戻る。
村長さん只一人に真実を伝えることを決め、電子の神様に別れを告げた。
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