◇297 月をひとっ跳び
いると思って書いた回です。
——レベルアップ! “アキラ”のレベルが18になりました——
——ドロップアイテム獲得! 月兎の白毛を獲得しました——
私はツキトエを倒した。
最後まで諦めず、みんなの力を終結させた。
全てを乗せた拳は、ツキトエに突き刺さったみたいで、無事に倒せた。
おまけにレベルまで上がった。一気にレベルが三つも上がった。
これって、ステータスがドン! と増えたってことだよね?
最高の結果に私は息を切らすと、膝を突いて崩れる。体力が持たない。MPがほとんど削れていて、苦しかった。
「はぁはぁはぁはぁ……たお、せた?」
何だか実感が湧かない。
体が重くて動かなくなると、地面に崩れる。
そんな私を支えるように、みんなが手を貸してくれた。
「大丈夫か!?」
「アキラー」
「アキラさん!?」
「もう、無理しすぎなのよ」
みんな私のことを心配してくれた。
体をユックリ起こしてくれる。足がフラフラしちゃって、上手く立てない。
でもみんなに体重を分散して預けると、何とか耐えられた。
「ありがとうみんな」
「全く、無理のしすぎだ」
「あはは、そうだね」
私はついつい笑っちゃった。
何だかダサいよね? 自分でも思うのもなんだけど、心がフラフラする。
そんな中で、急にアナウンスが鳴った。レベルアップ以外に、何か手に入るのかな?
——固有スキル:【キメラハント】が新しいスキルを獲得しました——
——適合率判定の結果、スキルとの相性を確認し、固有スキル:【キメラハント】に、ツキトエ:【月跳】を追加しました——
「新しいスキル?」
何だか新スキルを手に入れたみたい。
ツキトエを倒したことで、新しいスキルを手に入れたらしい。
【月跳】って何? このスキルは一体何が出来るの?
「どうしたのよ、アキラ。急に黙っちゃって」
「新しいスキルを手に入れたみたいだよ」
「新しいスキル?」
ベルに問われて、私はポツリと答えた。
このスキル、何が出来るのかな? ツキトエの能力の一部だよね?
ちょっと使ってみようかな? 私は早速使ってみた。
「【キメラハント】+【月跳】」
一体何が起こるのかな?
楽しみにしていると、変化は明らかだった。
私の脚がパッと変わっていて、まるでウサギの脚だった。
白くてモフモフした毛が、両脚を纏っている。
それから筋力が増強したみたいで、足腰は強化される。
そのおかげかな? 何だか力強くて、地面をトンと蹴れば、空の彼方まで飛べそうだった。
「それがお前の新しいスキルか?」
「うん。なんだか空を跳べそうだよ」
「あはは、飛ぶんだねー」
「“飛ぶ”じゃなくて、“跳ぶ”だ」
フェルノの言葉をNightは訂正した。
別に訂正しなくてもいいんだけどね。
そんなことを思っていると、雷斬はポツリと呟いた。
「そう言えば、なにかアイテムは手に入りましたか?」
「私はなにも無いよー」
「こっちもよ」
「私もだ。マズいな、ツキトエを倒したことを証明するために証拠が無いぞ」
Ma=ンゲツノミコトさんは、ちゃんと説明しないと聞いてくれないかもしれない。
私はインベントリを開いた。手に入ったアイテムを取り出す。
これが証拠になればいいけど、大丈夫かな?
「ねぇ、コレはどうかな?」
私はインベントリから、月兎の白毛と言うアイテムを取り出す。
このアイテムは、ツキトエから手に入ったもの。
きっとMa=ンゲツノミコトさんなら分かってくれる筈だ。
「それ、お前が手に入れたのか!?」
「うん。もしかして、一番ダメージを与えた人だけが貰えるってことかな?」
「その可能性はあるな。だが、これでいい筈だ」
Nightが言うなら間違いないと思う。
私は一旦インベントリの中にアイテムを戻す。
「それじゃあ、みんな。ちゃんと帰ろっか」
「そうだ。おい、雷斬」
「はい。アキラさん、私の背中に」
雷斬は私を背負ってくれるみたいだ。
いいのかな? 私は立ってるよ? ちゃんと歩いてるよ?
何だか悪い気がすると、流石に背中に乗るのは止めた。
「大丈夫だよ。私、ちゃんと歩けるよ?」
「歩けるって、その足でか?」
私の脚は白いモフモフで覆われている。
なんだか温かそうに見えるけど、実際温かい。
Nightは首を捻る中、私は証明することにした。
「見てて。ちゃんと私……」
地面をトン! と蹴った。
その時だった。脚がバネみたいになると、体がやけに軽くなる。
まるで風船になった気分で、体が地面を離れた。
「あ、れ?」
気が付けばみんなの姿が小さく見える。
コレってどういうこと? もしかしなくても、私宙に浮いてるのかな?
何だか足裏に地面を蹴った感触が残るけど、図上を見上げれば月が綺麗だった。
「もしかしてこれ、調整を間違えちゃったのかな?」
初めて使うスキルで、何が起きたのか分からなかった。
でも確かなのは、私は今、宙に浮いてる。
重力に押し戻されそうな感覚はあるけれど、それ以上の高揚感があった。
「「「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」」さん!?」
みんなの声が聞こえて来た。何言ってるのかな? もしかして私の名前を叫んでる?
ちょっと気恥しくなっちゃうな。そんなことを思うと、みんなにはどんな風に見えているのか気になる。
きっとカッコ悪いなんだろうな。そんなにカッコいい体勢じゃないのは分かってる。
でも今の私にはこの姿勢制御が精一杯なんだよ。
もっと練習しないと……とか思っていると、本当に月が綺麗に見えた。
「うわぁぁぁぁぁ、綺麗な満月」
この時期特有、そしてこの満月山だからこそ見られる景色。
本当にお月見には最高だよ。NPCも元気だったら。
色んなことが引っ掛かるけれど、今この瞬間だけは違う。
私だけがこの距離感で月を見ている。今にも飲み込まれてしまいそうな迫力と、月の使者を倒した私を讃えるみたいな感覚に浸る。
「手を伸ばしたら届きそう……だけど」
スッと手を伸ばしてしまった。
何だかピュアで可愛いことを言っちゃう。
でも本当に届きそう。あー、届かないかな?
「ん? そう言えば、これって“飛んでる”んじゃなくて、“跳んでる”んだよね?」
今更だけど、忘れちゃったらダメだった。
今の私は飛んでる訳じゃないんだ。跳んでいるんだよ。
マズい、マズいマズい。このままじゃ……ですよね?
「って、ことは……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、着地の練習はしてないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
私の体が地面に向かって急落下する。
完全にミスった。ミスっちゃったよ。
不安定な体勢になって、足から落ちて行くと、満月の代わりに地面が近くに見えた。
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