◇296 月のウサギ5
久々に出ました【ユニゾンハート】
こうなったら誰にも止められないぞ!
「来るなら来て。私は負けないよ!」
ツキトエ相手にバカな挑発を繰り出した。
でもそんなの関係無い。私は私に出来ることをする。
それが絶対に答えになるって信じているから、胸の奥で力が湧いた。
「あれ、この感覚……」
不思議な感覚に陥っていた。
胸の奥がザワついていて、とっても温かい。
この温かさは何? もしかして、これって……
「お前、なにしてるんだ!」
「アキラー、ダメだよー!」
「あの子、バカなの? ついにバカになったの?」
「アキラさん、大丈夫ですか。絶対にダメですよ!」
みんな私のことを心配してる。
そうだよね? 確かにバカなことしてるよね。
でも、全然怖くない。恐怖心が超越していた。
「……いや、なにか違うのか?」
Nightは分かってくれたみたい。
そうだよ。これは何か違う。
今の私は……もう止まらない。
「この感覚は、間違い無いよね。【ユニゾンハート】!」
私は高らかに叫んだ。拳を突き上げると、もう一つのスキルを発動する。
ドクンと心臓の鼓動が胸を打つと、私の中で力が湧き上がる。
表面だけじゃなくて、内側まで全部一つに重なり合った。
「アキラさん?」
「どうしたのよ。急に拳を突き出したけど……ん?」
確かに見た目が変化するとかじゃない。
でも私の中で何かが変わっている。
それが【ユニゾンハート】でNightとフェルノは気が付く。
「【ユニゾンハート】だと?」
「やった、いっけぇ、アキラ!」
声援が心地よくて、私の胸が高鳴った。
心拍数が上がると、【ユニゾンハート】が発動する。
ちなみにこんな感じ——
固有スキル:【ユニゾンハート】
条件:自身の能力を最大限に発揮し、強い絆を持つ者の固有能力を使用できる。
説明:感情エネルギーが100%以上になった時、ユニゾンハートの掛け声で発動する。自分自身の能力を最大限以上に発揮し、際限なく成長させ、絆で結ばれた仲間の固有能力を使用することができるようになる。
つまり、今の私は最強ってこと。
友達の固有スキルを全て使うことが出来る。
まさに無敵の状態で、湧き上がる勇気が世界を照らした——
「みんなありがとう。それじゃあ行くよ!」
何だか負ける気がしなかった。
もう感情論の話になっているけど、全身が一筋の光になったみたいに軽い。
一人じゃないって気持ちが全身を駆け巡ると、血液みたいに私を支えてくれるからかな? 自然と固有スキルが入って来た。
「【烈火心動】」
まずはフェルノの固有スキル。
【烈火心動】が発動すると、身体能力が超絶強化。
全体ステータスを向上(※つまりバフって奴)させて、ツキトエの耳を掴んだ。
「いっけぇ、アキラ!」
「うん。このまま……それっ!」
ツキトエの耳をギュッと掴んだ。
根元からじゃなくて、先端を摘ままれているから痛そう。
でもそんなの関係無くて、私は「おりゃぁ!」と声を出す。
「プギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ツキトエが悲鳴を上げた。
何たって、私はツキトエの耳を掴んだままクルンと後転。
ホイッと感嘆にツキトエを吹き飛ばすと、背中を地面に叩き付けたんだ。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァッ!」
痛いのはあまり前だ。だって、私の手にはいつの間にか手袋が付いてる。
でも手のひらには棘がたくさん付いていて、耳が千切れそうな程痛みが走る。
これはNightの固有スキルで、お世話になってる【ライフ・オブ・メイク】。私にはこのくらいしか作れなかったけど、ツキトエには充分効いた。
「私の固有スキル。通りで……ふん!」
Nightは拍子に拳銃を構えた。
バンバンバン! と引き金を引いて弾丸を放つ。
ツキトエは身動きが取れなかったみたいで、今回はちゃんと効いた。
「ありがとうNight! 後は……どうしよう」
雷斬とベルの固有スキルを発動したい。
でも問題があって、雷斬の固有スキルを知らない。
知らないから私も使えなくて、ベルの固有スキルを使った。
「ベル、借りるよ。【仮面装着】」
「いいわよ。貴女の本性を曝け出しなさい、アキラ!」
ベルの固有スキルはちょっとだけ難しい。
でもやってみることにすると、胸の奥から不思議な感情が湧き上がる。
ツキトエはそれに感化されたのか、ゾクリと背筋が凍って、全ての毛が逆立った。
「ツキトエがビビってるぞ」
「そうですね。アキラさんの援護に!」
「いや、ちょっと待ちなさい。嫌な風よ、これって……」
みんなが援護してくれそうだ。ありがとう。
でも、大丈夫なんだ。今の私は一人で戦っていない。
だって、みんなの能力が一緒なんだから、私はそんな必要無くて、体が先に動いた。何故かな? 凄く心が馳せて、とめどない喜怒哀楽とその先で待ち構える虚無が手招きをした。
「はっ!」
私は手のひらを突き出した。ツキトエの背中にはっけい繰り出す。
ズドン! と衝撃が走ると、ツキトエのHPが大きく削れた。
背骨が嫌な音を立てた。私は流石に伝わると、可哀そうなことをしたと思った。
「でも、ここで躊躇ったらダメ!」
思いっきり蹴りを繰り出した。
ツキトエの脇腹を抉ると、ズキンと痛みが走る。
スキルなんて使ってない。HPとMPを同時に減らすことに成功した。
「グギャキャァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
けたたましく泣き叫ぶと、ツキトエは逃げ腰の姿勢だ。
でも私の追撃は止まらない。
流石にやり過ぎると可哀そうだから、次の一撃で決める。
「これで終わらせるよ!」
私は覚悟を決めた。もう終わらせるんだ。
この瞬間を逃したらきっと次は無い。
ツキトエが一番弱っている今こそ、私が倒す絶好の瞬間だ。
「【キメラハント】。来てっ、【甲蟲】+【灰爪】!」
両腕を×を描いてクロスさせる。
今度は私が奪った、いいや私に身に付いた能力。
お決まりの武装で決めに掛かると、両腕が変化する。
「せーのっ!」
地面を蹴り込む私。体が加速度的に飛ぶ。
もちろんだけど、何が如何とかじゃない。
不安定な体勢も全部ひっくるめて、逃がさないって気持ちがツキトエの姿を捉える。
「いけっ、ツキトエはもう虫の息だ」
「GOGO、アキラー!」」
「「行ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
みんなの応援が聞こえて来る。
凄く嬉しい、私頑張っているんだ。
それが客観的にも伝わると、勇気が倍増、俊敏さが一段と増した。
「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
ツキトエの体を体当たりで貫く。
鋭く伸びた爪を折れないように、蟲の鎧が支える。
背中から貫かれると、ツキトエは絶叫を上げた。全ての防御を無視し、恐怖が包み込むと、HPを〇にした。
つまり倒したってことで、体が粒子状に溶けて消える。
「お、おっと……よっと、倒せた、よね?」
体がついよろけてしまった。
フラリとなると、転んでしまいそう。
私は何とか体幹の強さで断ってみせると、瞬時に意識が繊細に尖る。
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
私は両腕を振り上げた。
ツキトエを無事に倒した私は、つい嬉しくて拳を振り上げる。
なんだろう、いつにも増して達成感がある。もしかしなくても、みんなの能力を借りたからだよね?
これが【ユニゾンハート】の力。
高鳴る鼓動が胸を突き動かしてくれる。
衝動が全然冷め止まない中で、私は気持ちがよくて、つい夜空を見つめた。
凄く心が澄んでいて、戦って勝ったって言うちょっと残酷な中なのに、何故か一際月が綺麗だった。
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