◇291 月輪の試練:「月を倒してみせよ」
第三の試練。これぞ最終形態。
「『我らはMa=ンゲツノミコト』」
な、な、な、何が起こったの?
ここまで眩し過ぎる光に煽られていたけど、それとはまた違う。
一回りも二回りも、それこそ私達なんて影に消されてしまいそうな程、白くて煌びやかな光が放たれると、現れたのは……男性、女性? 分からないけど、神様が降臨した。
「えっ、ミチル……シンナル……えっ?」
「『我らはMa=ンゲツノミコト。月の輪より顕現した、月そのものである』」
Ma=ンゲツノミコトさん(満月輪命)からは、二人分の声が聞こえた。
男性と女性。シンナルさんとミチルさん、二人の声が重なっている。
人格も混ざっているのかな? 何だか高貴と威厳が混ざり合っている。
「Ma=ンゲツノミコト、さん?」
「『我ら分身の試練を突破した人間達よ、よくぞここまで来た』」
話を聞いてくれる神様だった。
私達は恐れ多くて言葉が詰まっちゃった。
それだけ眩しい。直視が出来ない。光りそのものを受け、あらゆる世界の陰を影として浮き彫りにする。
「ありがとうございます」
「大変だったわよ」
雷斬とベルは調子を取り戻していた。
さっき一回Sin=ナルツキノミコトさんに喰らった威圧から解き放たれたおかげだ。
Ma=ンゲツノミコトさんは二人の神様が一つとなった姿。高貴と威厳の狭間で、包容力を宿していた。そんな感じに私は見えるけど、多分合ってるよね?
「ここまでの過程は果たした。そろそろ私達の望みは……」
「『分かっているのです。分かっているからこそ、我らはここに顕現した』」
全てを見越してここに居るんだ。流石は神様、凄すぎる。
私達の想像や思考なんて簡単に看破してみせると、両腕を広げた。
望みを、お願いを聞いてくれるらしい。やった、頑張った甲斐がある!
「それじゃあMa=ンゲツノミコトさん、私達は……」
「『ですが、月の祝福を欲すのであれば、最後の試練を超えてみせよ』」
まさかっていうか、このパターンだった。
もう慣れているけれど、最後の試練ってなんだろう。
凄く嫌な予感がすると、私達は気を引き締める。
「最後の試練?」
「えー、またつまんない奴―?」
フェルノはついボヤいた。うーん、そんなことないと思うけど。
でもフェルノにとってはあまり面白くなかっと思う。
解いてばっかりで詰まらなかったって思っても仕方がない。
「『つまらない……ですか。では、貴女に打ってつけの試練でも与えよう』」
「おっ、私に打ってつけ!?」
色んな試練のパターンがある。
また謎解きかなって思ったけど、配慮してくれたみたい。
それは……つまらなそうな人間がいたら、神様的にも面白くないよね。
「なになに、バトル!?」
シュンシュン、拳が空を切る。
シャドーを相手にボクシングっぽい動作を始めた。
ずっと戦いたかったんだ。遊びたいのがフェルノだから、気持ちも分かる。
それを加味してくれた神様は流石はだ。
フェルノの望む展開を用意すると、ニヤリと笑った。
何か考えている。もしかして、ヤバいことかな?
「『腕試しがしたいのですね。では、我が眷属の一角よ。あらゆる雑音を聞き分ける長耳を持ちて、月の頂まで昇ってみせよ——(パン!)』」
Ma=ンゲツノミコトさんは、パン! と拍手をした。
柏手になると、私達の体を駆け抜ける。
これには少しビックリしちゃった。体が動かなくなると、フラリと軸がズレる。
「あ、あれ?」
「『フン、我が眷属を顕現させた。存分に力を振るうがよい』」
「力を振るう?」
「やったぁ! それじゃあ早くやろうよー」
いやいや待ってよ、待って。フェルノは判断が早すぎるよ。
まだどんなモンスターかも分からない。
多分長手的に勝たないとダメだと思うけど、本当に勝てるかも怪しい。戦うけど。
「『そう焦らない方がいいですよ。我らが呼びし眷属は、悪意に敏感なのでな』
神様の眷属ってことは、凄く怖いしヤバそうだ。
私は身構えつつも、拳をギュッと握った。
何とか善戦出来ればいいけど、雷斬とベル、二人の武人は気が付いている。
相当嫌な気配が走っていたみたいで、私は見事に受け流す(知らないうちに)。
「悪意に敏感?」
「……なんだか、見られている気がするわ」
「はい。これが、モンスターなのでしょうか?」
雷斬とベルは怯えているのかな、武者震いがしていた。
二人共、同じ方向を見ている。登山道の更に先で、もしかしてこの先で待っている?
戦うために場所でも用意されているのかなって思うと、私の思考をMa=ンゲツノミコトさんは、読み切って言い当てた。
「『貴女、その読みは正しいな』」
「正しい、えっ!? もしかして、読んだんですか」
「『ええ、読んだに決まっている』」
ミチルさんとシンナルさん、二人の言葉が混ざり合う。
褒められているのか、怒られているのか、多分窘められている?
私は瞬きをすると、Ma=ンゲツノミコトさんは、スッと手を払った。
「『では、行け。この先に道があるんです』」
Ma=ンゲツノミコトさんは、腕をサッと払う。
すると光の一本道が作り出された。えっ、もしかして、神様が道を作ってくれた?
ゲームの世界、AIの力だけど、世界に影響を与えちゃうなんて、本当にカッコいい。
高貴な神様のようで、私達は実力を見せつけられる。
「この道を進めば、モンスターがいるんだな」
「『ふふっ、そうだな。人間達が何処までやるか見物だ』」
「見物って……」
「『まぁ、我らの祝福は与えられないですが、少し力を与えよう』」
私達は見世物にされるつもりはない。
ちょっとだけムッとすると、Ma=ンゲツノミコトさんが手のひらを出す。
淡い光が放たれ、私達に注がれる感覚が貰えた。
「うわぁ、なんだか力が湧いて来た……かも?」
「これは……バフか!」
「パラメータが上がってるわよ。これなら勝てるかもしれないわね」
「……それだけ厄介な相手ってことだな」
Ma=ンゲツノミコトさんが力を貸してくれた。
体がポカポカっていうか、サワサワする。
気持がよくて、ベルが見た限りだと、確かにパラメータが大幅に上がっていた。
「それじゃあ行ってきます、Ma=ンゲツノミコトさん」
「『ええ、しかと試練を受けるがいい』」
私達は宙に浮かんだ直通経路に足を踏み出す。
パッと宙に体が浮くと、不思議な感覚だ。
Ma=ンゲツノミコトさんに見送られながら、私達はモンスターに戦いを挑んだ。
多分強いと思うけど、みなぎる力で頑張ることにした。
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