流せばいいのさ
ディラの発言を受けて、オレは目を閉じ、深く深く息を吐いた。
どうして歓迎されているんだ?
全くもって理由が分からない―――――――
『――――――――とか考えてる顔だな。まあ、レイの場合はよく分からんがな。いつでも明るい上に天然と来たもんだ。イマイチ当てにゃならん』
居ないところで天然呼ばわりされるレイに多少の同情をする。
悪口を言われてくしゃみをしているレイの姿が頭に浮かんだ。
そんなレイに脳内で大丈夫ですかと声をかけていたオレに対し、今までと比べ少し声のトーンを落としたディラが言った。
『グリュックくん、君がどう思っているのか詳しいことは何とも言えないが、これだけは言わせてもらおう。すこし、こっちを向きなさい』
そう言われ、オレは恐る恐るディラの方を向いた。
そこにいる老人の表情は未だ穏やかなままだ。
しかし、その老人の瞳に宿る力が前までのそれとは異なっている。
『うちの息子家族達はな、決して君を裏切ったりはしない』
厳かで圧のあるその物言いに、オレは一瞬怯んだ。
そして同時に得体のしれない申し訳なさがオレの心に混み上がってきた。
あれだけ好意的に接してくれているみんなに対して、心の壁を築いていたことにことにだ。
クイラ、グラフ、リュトの3人、特にリュトに対してはある程度心を許せねいるものだと思い込んでいた。
しかし、その3人が信頼を置いている2人、すなわちディラとレイを避けているということはつまり、先にあげた3人に敵対する感情を持ち合わせていたということには変わり無いのではなかろうか。
『そして当然、俺もレイも君を避けるなんてことは絶対にしない。息子家族が決めた、大切な孫なんだからな』
まるで銅像にでもなってしまったかのように、オレは体も脳も動かない。
かろうじて臓器、呼吸器、瞳が動いているのみである。
……………否、瞳は動いているように見えるだけ、というのが正しい表現だと言えるだろう。
錯覚の正体は既にこぼれ出している涙だ。
頬を伝う涙の筋に一時のラグがあってから気づき、右手の甲でそれを拭い取る。
『安心しなさい、グリュックくん。俺は、俺たちは君の味方だから』
止まれ、止まってくれ、恥ずかしいから。
今更隠しても遅いことは分かっているから、ならばせめて早く止めよう。
止まらない、止まってくれない。
止まらない、安心感と嬉しさのせいで。
『そうだ、流せばいいんだよ、涙なんてものは。せっかく溜まった涙なんだから、流してしまえばいいのさ。但し、嬉し涙を流しなさい。悲しい涙に費やしてしまうなんてのは、もったいなくて仕方がないだろう?』
まさか、もう絶対にと関わることはないと思っていた「家族」に、この短時間で2度も泣かされるとは思っていなかった。
1度目は、ヴェイク家がオレを迎えてくれたこと。
そして、今。
オレは安心感に満たされて、しばらくの間、温かい涙を溢れさせていた。
こんばんは、イロハです!
あるいはおはようございますこんにちは!
困った困った、何も書くことが思いつかない(苦笑)
本編はデリケートなお話になりました。
こういうお話は小説にとっては少なからず
大切な話になってくると思うので、
しっかり書けているかどうか不安になります(汗)
それでも自分なりには一生懸命書いたので、
いいものにはなっていると信じています!
それでは今回はここで終わろうと思います。
それではまた次回、よろしくお願いします!
【次回投稿予定日は 12月22日 です】