グリュック・ヴェイク
―――――――――グリュック。
オレはクイラのその言葉を受け、ゴクッと唾を飲み込む。
4年振りに呼ばれた、しかし初めて呼ばれるオレの名前。
気になるようなことではない、なんて一丁前に強がったけれど、それは否応にもオレの心へじわりと染み込み、全身へと広がった。
広がりは全身に影響を及ぼし始めた。
膝の力が抜け、手は小刻みに震える。
瞳に溜まる涙を覆う膜はついに決壊へと至り、激しく頬を伝った。
「私たちの名前から一部を取ったのよ。気に入ってくれると嬉しいわ」
泪の止まらないオレに3人は温かな視線を向けてくれる。
やめてくれ。
涙が、止まらなくなるから。
リュトは4つ足でこちらへ這いより、
『グリュック、だいじょうぶ?』
と声をかけてくれる。
内容は分からなくても、それがオレを気づかってくれている発言であることは声音から理解出来た。
数分後。
グラフの元へ戻っていたリュトが再びハイハイとこちらへ寄ってくる。
『グリュック、げんきになった?』
カクッと首を傾げながらオレに問う。
「元気になった?って聞いてるわ」
「……ああ、とりあえず、落ち着いた」
オレの解答を今度はリュトへ翻訳する。
するとリュトはきゃあきゃあ飛び上がり、グイッと先程よりも顔を近づけてきた。
膝に当たる長い金髪がくすぐったい。
『グリュック、これからよろしくね!』
オレは翻訳を求め、泣いていたことで赤く充血する視線をクイラへ向けた。
「これからよろしくって」
今度はリュトへ視線を戻す。
弾けんばかりの笑顔を見せる無邪気なリュトにオレはたじろぐも、無意識に顔が綻んでいた。
「ああ…………え?」
リュトの発言を理解した途端、急激に真顔に戻るオレ。
さっきクイラも言っていたが、「これからよろしく」とはいったい………。
「なあ、これからよろしくってどういうことだ?」
訳を聞き、グラフがキュッと表情を引き締めた。
リュトはニコニコ笑顔を崩さない。
『これは俺たちからのお願い……になるのか?』
『そうね、私から伝えるわ』
一言二言の会話を交わし、2人揃って真剣な面持ちになる。
「グリュック――――――私たちの、家族になってくれないかしら」
衝撃が脳天からつま先までを光速で駆け抜ける。
いきなり何を………?という衝撃はもちろんあるが、一番の驚きはそこではなかった。
「こんな、オレを……………むかえてくれるのか?」
誇張があるかもしれないが、オレが誰かに必要とされていた事実の存在に。
そして何より、オレ自信がそれを、少なからず嬉しく思っていることに。
「もちろんよ。私たち、ヴェイク家の一員として、あなたを迎え入れたいわ」
一度は止まったはずの泪が、嬉しさ、温もりの結晶となって再び溢れ出す。
グラフがオレの隣へ来て、頭をゆっくりと撫でてくれる。
オレは泪を流したまま、必死にただ一言をつむぎ出した。
「よろしく、お願いします」
――――――――と。
こんばんは!イロハです!
あるいはおはようございますこんにちは!
このお話で第2章のうちの第1章が終わったような感じ……でしょうか。
とは言っても2章全体としてはまだまだ続きますので是非ともお付き合い下さい。
それではまた次回もよろしくお願いします!
ありがっとうございました!
【次回投稿予定日は 9月28日 です】




