幾年ぶりかの誕生日
オレの、名前か。
ここ数年一切必要性のなかったものだから、どんなものだったかすっかり忘れてしまっている。
いや、それは少し違うか。
あの過去を、楽しかった過去を思い出したくなくて意図的に記憶から忘却しているだけだ。
それをクイラに問われたが、当然答えることは出来なかった。
「そう……それじゃあ、あなたの誕生日は分かるかしら?」
「わから……いや、確か………7月、の14日とかだったような気がする」
誕生日。
これもまた名前同様、長い間縁の無かったものだ。
だが、今となっては顔もろくに思い出せない両親に何度か祝ってもらっている、大切な日だ。
名前とは違い、忘却しきれなかったのだろう。
「7月14日?ちょうど昨日じゃない。いったいいくつになったの?」
「……感覚がズレてなければ10、になったはずだ」
路地裏暮らしになってからは日付なんてものは意味をなさないものだったため、当然時計やカレンダーといったものは持っていなかった。
今まで迎えた冬の回数からして恐らく10歳であっているはずだ。
クイラが一連の会話を2人に通訳すると、リュトが何やらキャッキャと騒ぎ出した。
『10さいなの!ならわたしのおにいちゃんだね!』
『クイラ、昨日誕生日だったってんなら俺たちから何かプレゼントでもあげないとな』
『そうね、何がいいかしら?』
3人がミニマムな円陣を組み何やら会議を始めた。
蚊帳の外なオレは会議終了をボケーッと天井を見ながら待った。
数分して。
3人がオレの方へ向き直り、クイラが口を開いた。
「あなた、少し前に誕生日だったのよね。私たちから、誕生日プレゼントとして名前をプレゼントさせて貰えないかしら」
あまりに突然の申し出にオレは声をつまらせ困惑する。
いきなり何を言ってるんだ、こいつは。
「本気で言ってるのか……って、おいまたかいぎかよ」
オレが辛うじて声を絞り出した時には既に再び会議を開始するアホ家族。
15分後。
そこそこ長い間ソファに拘束されていたオレは若干キレ気味。
内心いつもの路地裏に帰りたかったが、一応助けてもらった手前こうして大人しく待っている。
会議を終えたクイラが真っ直ぐにオレを見つめながら真剣な眼差しで問うてきた。
「私たちからの誕生日プレゼント、受け取ってもらえるかしら?」
「………好きにしろよ」
こいつらには抗っても大した効果がないことはこの短時間の馴れ合いで十分に理解していた。
一応、助けてもらった恩もある事だしな。
この際、ぶっ倒れた原因はお前らだけど、なんて野暮なことは考えないことにした。
オレはクイラの目をじっと見つめ返し、発表を待った。
大して気になるようなことでもない。
だが、完全に無視できるほどオレの心はまだ野生化してはいなかった。
「私たち3人からのプレゼント、受け取ってくれてありがとう。これからよろしくね
――――――――――――――――――グリュック」
こんばんは!イロハです!
あるいはおはようございますこんにちは!
なんとなくキリの悪ーい感じの終わり方で
作者はなんとなく不服でございます(苦笑)
いつも通り短く切っても良かったんですが、
あまりにも短すぎたので妥協してしまいました。
今回はそこそこ大事なお話になりました。
この下りはもう1話続くのでお楽しみに!
それではこの辺りで終わろうかと思います!
ありがとうございましたー!
※ご報告
第1章の第3話、「上級生」、第4話「発端」、第5話「地下世界」の内容を一部改変致しました。
よろしければ確認の方よろしくお願いします。
【次回投稿予定日は 9月24日 です】




