ハッピーバースデー、夕 #1
今日は12月24日、夕の誕生日。
みんなで集まって夕の行きたいところを巡る予定になっている。
集合時間は10時半、行く場所は未定。
いや、未定と言うよりは知らないという方が正しいだろうか。
「当日夕から直接聞いた方が面白くないか!?」
という幸からの提案によってこのような状況になった。
今は10時15分。
私は髪を整えて荷物をまとめ、少し前に家を出た。
「あ、おーい紗愛!おはよー!」
「おはよう新城さん」
「二人ともおはよー。早いねーまだ25分なのに」
集合時刻の5分前。
集合場所の校門には既に葉菜と凜がいた。
幸と今日の主役さんはまだ着いていないようだった。
「二人はそろそろ来るかな?」
「恐らくは。さっき連絡があったわよ」
「おーーいみんなおはよー!」
「おはよう、なの」
凜と話していると背後から件の二人の声が聞こえた。
声のする方を向くと夕を背負った幸がこちらへ駆けてくるところだった。
「おはよう黒森さん中嶺さん、時間ギリギリセーフね」
「悪いなーちょっと髪におかしな寝癖がついててよ……」
「まあ、別に遅れてるわけじゃないからいいんじゃないかしら」
「夕、最初はどこにいくの?」
早速私が尋ねると夕は左肩にかけたおしゃれな黒いかばんから携帯を取り出し、メモ帳のアプリを開いて今日の予定を確認する。
「最初、はペットショップ、から」
「あはは、やっぱり」
確認をし終えた夕は携帯をかばんにしまい、早く行こうと私の袖を引いた。
「私、先に行くね」
「夕待って、私もついてく!」
我先にと動物のもとへ急ぐ夕に葉菜が後ろからついていく。
「それじゃあ私は魚でも見に行きますか……」
葉菜が一緒なら夕も大丈夫だろうと一人安堵し、幸は二人とは違った方向へ歩いていった。
「えっと、私はトイレへ……」
動物が苦手な凜は安全なトイレへ避難しようと、天井から下がる看板に従って歩き出す。
それを見ていた私はふと思った。
凜と動物を対面させてみたらどうなるんだろうと。
凜からの一方的なものであるとはいえ、言ってしまえば混ぜるな危険状態にあるふたつのものを掛け合わせてみたい欲にかられる。
「それじゃあ私たちも行こうか」
「え?私はトイレへ―――」
「行こうか?」
「……なんか新城さんが怖いよぉ……」
渋々諦めた様子の凜の腕を引き、私たちもまた別の方向へ歩きだした。
「夕!こっちにブタがいるぞ!」
「ほんとだ、ブタ、かわいい」
目の前のケージには小さくて丸っこい、ピンク色の子ブタが三匹。
しゃがんで手を差し出してみると鼻をぴくぴくさせながら近づいてくる。
鼻息がなんともくすぐったい。
ふと、左手側にあるドアからお客さんが出てくるのが目についた。
どうやらドアの向こうにも動物がいるらしい。
「あっちも行く……ってあれ?」
隣にいたはずの夕が見当たらない。
葉菜は立ち上がって周りを見渡す。
すると、既にドアノブに手をかける夕の姿を発見した。
早く行くぞと視線で示す夕に苦笑いし、葉菜は夕の後を追った。
「新城さん、どうしてよりによってここに……」
「どうしてって言われても困るけど、あえて答えるならかわいいからだよっ!」
私たちが今いるのは爬虫類スペース。
ヘビやらトカゲやらカメやらが入ったケージがたくさん置かれている。
私はその中の一つ、「セイブシシバナヘビ」というヘビをじっと見つめている。
その真っ黒でつぶらな瞳を眺めていると様々な疲れやら悩みやらが一発で吹き飛んで行きそうなほどかわいい。
「へ、ヘビなんて怖いだけじゃないの……ひいぃっ!」
凜の隣にあるケージの中にいる「グリーンパイソン」が這いずる音が聞こえ、凜は悲鳴をあげる。
背後を見ると虚無の眼差しで棒立ち状態になっている凜が目についた。
ここまでにしておこうかと愛しいヘビたちに別れを告げ、私たちは爬虫類スペースから出た。
「はあっ、ようやく終わったのね……」
「うん、爬虫類スペースは終わりだよ、次は犬猫のコーナーに行こうか!」
「まだ終わってなかった……」
動物はかわいいし、凜の反応は面白いし、なかなか楽しいところじゃないかペットショップ。
抵抗する気もなさげな凜を連れ、次は犬猫のもとへ。
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周りに視線を泳がす。
どこを向いても水槽。
その大きさは様々で、そのその中を泳ぐ魚達も大小様々である。
とある水槽が目に付いた。
「グラスブラッドフィン」とかかれた水槽には魚がいなかった。
店員に聞いてみると、もともとは9匹いたそうだが病気にかかってしまい、8匹が死んでしまったそう。
残りの1匹は別の場所で様子を見ているとのことだった。
死んでいった個体は籠鳥恋雲の念を抱いていたのだろうか、と無意識に自分と重ねてしまう癖が出ていたことに気づき、恨めしく思う。
私は、彼らに比べたらまだマシなのかもしれない。
彼らには同居人はいても、魚である以上会話を交わすこともない。
毎日を狭い水槽で過ごす。
今となっては、私には多少の自由がある。
いや、それは少し表現に誤りがあるだろうか。
私にはもともと「強制された自由」はあった。
私はそんなもので我慢なんてしたくない。
誰が悪いわけでもない。
むしろ私は本来なら感謝すらしなければならない。
でも、それだけで未来まで決められたくはない。
―――――――――だから私は兵士になるんだ。
「何一人でしんみりしてるんだ、私」
すっと立ち上がり、軽く頭を振る。
「とりあえず、葉菜と夕のところに行くか」
そう呟き、幸はゆっくりと歩き出した。
こんにちはこんばんはイロハです!
今回も読んでいただきありがとうございます。
えー、幸のシーンにさしかかったあたりでですね、
書いていたものが誤操作によって全部
一度消えまして。多少イラッとしながら
書いていました(苦笑)
無事書き終わってよかったです(笑)
本文に出てきたヘビさん達。
イロハはヘビが大好きなのです!
かわいいですよねー、ヘビ。
いずれはヘビを飼いたいと思っております(笑)
ここで一つご報告があります。
作者の都合により、次回の更新が少し遅れます。
ご迷惑をおかけします、すいません。
今回の後書きはここらで終わりたいと思います。
それではっ、ありがとうございました!
次回投稿予定日は 5月24日 です。




