由来
「なあ夕、夕方っていう文字と夕の文字っていっしょだな!」
授業中夕に対しての発言を再び繰り返す幸。
しかし今度はスルーすることなく、夕は返事をする。
先程は授業中だったが故の遠慮なのだろう。
「うん、なんか由来、らしいよ」
「「え?」」
夕の言葉に幸以外にも私や葉菜、凜も頭に疑問符を浮かべる。
授業と授業の間の時間は教室左前の席、凜の場所に集まるのがいつものパターン。
今回も変わらず凜を囲んでの会話が繰り広げられる。
「何か私、の名前は夕方から、取ったって」
「へえ、かっこいいな」
「夕方、きれいだから羨ましいわね」
「凜、夕方なんて見たことあるの?」
「いやいやあるわけないじゃない……」
多少の表現の誤りを葉菜に突かれて凜が拗ねる。
「でも、ほんとにきれいなんだろうなぁ」
葉菜が凜に「ごめんって」と謝るのを後ろに私も呟く。
「だってさ、空なんてとおっても広い大きなものがオレンジと黒にわかれるんでしょ?きっと圧倒されちゃうよ」
「夕だって圧倒されちゃうくらいきれいだもんなー」
幸が夕の頭をわしわしと撫でながの言葉に夕が真っ赤に「そんなことない……」と弱々しく否定する。
「それに、明るい所と暗い所があるっていうのもそっくりなんじゃないか?ほら、知らない人と喋る時とかなんて真っ暗だろ……あいてっ!」
夕が静止の意味を込めて幸の足を踏んづける。
「いつか見られるといいね、夕方」
と、私は夕に言う。すると夕は脚をどけ、私の方を向いて
「うん」
と夕方の明るい表情ってこのことなんだな、と思える表情でうなづいた。
放課後、普段は授業毎の放課のように凜の席に集まる。
そして今日も例に漏れず集まって会話をしていると夕から話題が提示される。
「ねえ、みんなの名前の、由来ってなに?」
「そういえば夕しか話してなかったねー」
そんなわけで始まった名前の由来発表会。
「それで?誰から発表するのかしら?」
「私!」
いちはやく手を上げたのは幸だ。
「私は読んで字のごとく!幸福な人生になりますようにだって聞いたぞー。次、葉菜!」
「あ、私?私はすくすくと元気に育ってほしい……みたいな感じだったかな?5月生まれだから〔葉〕と〔菜〕って漢字にしたんだって。あとは花みたいにかわいい子に……って、なんか恥ずかしいな……」
「なんだよ、葉菜は十分かわいいだろー?」
「……こくこく」
「やめてよ照れるじゃんか!はい次次!凜!」
葉菜が照れを隠すように次を促す。指名は凜だ。
「私は芯のしっかりとした知性のある子になってほしいっていう意味があるそうよ。私の漢字にそういう意味があるらしいわ」
「凜も名前、ピッタリ……だね」
「そうかしら?ちなみに誕生日は2月よ。はい、それじゃあ最後は新城さんね」
「私は何事にも対応できる柔軟な子にって意味だよ。〔紗〕っていう文字にそんな意味があるんだとか……あ、誕生日は9月だよ」
「そういえば中嶺さんと黒森さんの誕生日は?」
「私は8月!」 「あら、なんともお似合いね」
「そうだろ!」 「……」
「私は、12月の、24日」
幸と凜の掛け合いをよそに夕も誕生日を発表する。
「あれ、もうすぐじゃん!早いけどおめでとー夕」
「……うん、ありがと、葉菜」
「私からもおめでとうだよ、夕!そうだ、当日パーティしようよ!」
私の提案にみながいいね!と賛成してくれる。
当日主役となる夕もどこか顔が綻んでいる。
「当日黒森さんのお家にお邪魔できるかしら?」
「!?……いや……あの……」
凜からのお宅訪問案に驚いた様子で夕があわてる。
「5人でどこかでかけないか?夕の行きたいところを巡る、みたいなの!」
幸が別のプランを提示する。
「なるほど、それもいいわね」
「夕の行きたいところ……ペットショップとか?」
正直それしか思いつかなかった。
「夕、それならどうかな?」
「あ、うん……それなら大丈夫……ありがとう」
先程の大慌てから一転、嬉しそうな表情にかわる。幸が夕の頭に手を置いて、
「それで決まりだな!詳しくはおいおいで!」
「結構長いこと話してたわね……そろそろ解散しましょうか」
凜の言葉にみんなが各々の荷物を手に教室を出る。
昇降口に着くと誰からでもなくお互い手を振り合い、3方向の帰路につく。葉菜が先程の発表会を振り返り、ぽつりと呟く。
「自分の名前の由来ってなんか恥ずかしくなかった?」
「確かに少し……なんでだろうね、こんな事言うのもまた恥ずかしいんだけど、親からの……その……あ、愛情そのもの……だからなのかな?」
「おっ?おいおい紗愛ーなんかかっこいいなー」
「もうっ、恥ずかしいよ……」
葉菜からの冷やかしを受け、私は今耳まで真っ赤になっているだろう。
そんな他愛もない会話をしながら今日もいつもの帰り道をたどっていた。
「私に、芯なんてあるのかしら……」
自分の胸にある曇った感情に対する気持ちがつい口をついて表へと出る。
学級委員をやっている、という点で周りから見ればそう見えるのかもしれない。
自分で言うのも気が引けるが、勉強に関してもそう悪い成績ではない。
それでも……。
「芯がほんとうにあるなら、いつまでも過去にとらわれたりなんてしないわよね……」
私に芯なんてない。
そんなこと自分でわかっている。
自身で中途半端な解釈をしたところで気持ちが晴れるわけでもない。複雑な気持ちを携えたまま、私は家の扉に手をかけた。
「幸、さっき、ありがとね」
「うん?……あー、気にすんなって」
幸と私、2人並んで歩く。幸は脚の運びを遅くして歩みの遅い私に合わせてくれている。
「でも、危なかった、から。助けてくれた」
「危なかったのは私も同じだろ?だから顔あげなっ」
顔を上げなといいながら頭を強く撫でてくる幸。
だが特になにも言わずにそのまま続けてもらう。
幸に頭を撫でてもらっているときは最高に心地いい。
少しずつ元気が戻ってくるのを実感する。
「ありがと、もう大丈夫」
「元気でたか?……安心しな、夕は私が守るし、何かあっても、私は夕の味方だからさ」
幸はいつもそう言ってくれる。
その言葉にとても安心できる。
最も信頼している人からの頼もしい言葉。
これ以上心の支えになってくれるものが他にあるだろうか。
暫く歩いて、2人とも脚を止め、並んで道路を走る車をぼんやりと眺める。
数分の後、私たちの前に1台の車が止まる。
その車の運転席と助手席から見慣れたスーツ姿の男性が降りてきて私たちの前に立つ。
そしてその2人は「いつもと」同じ態度を取る。
そして私たちも「いつも通り」それに従うのだった。
遅れました、イロハです。遅刻です。
8日投稿予定だったのに……おおよそ
1時間半の遅刻です。すみませんでした。
……まあ、予定だからってことで(反省しろよ)
はい、反省してます。すみませんでした(2回目)
中身に目を向けましょう。
5人のお名前についてです。
前々から書きたいと思っていたくだりなので
書いていて楽しかったですね(現実逃避の目)
嘘じゃないです。次回は気をつけます……
それでは次回もよろしくお願いします!
次回投稿予定は 5月11日 です。




