修学旅行 #10
「朝だー!みんな、起きてー!」
「うわ!何!?………あ、永咲さんお早う。朝から元気ね」
葉菜のセルフ目覚ましにより、睡眠中の脳を攻撃されまくった凜がバっと飛び起きる。
「起床の時間だよ!6時だよ!おいそこのくっついてる2人!夕べはお楽しみでしたか!?そんなものは関係ない!起きてーー!」
「くっついてるって………? まあ」
寝起きとは思えないようなマシンガントークを浴びながら、葉菜の指差す方を凜が見る。
そこには、脚を絡めて眠る幸と夕の姿があった。
夕は幸の胸に顔をうずめ、さながら母の腕の中で穏やかに寝息をたてる、赤子のようである。
うっすらと頬を赤くし、なんとも幸せそうな表情である。
その様子に、凜の顔が無意識のうちにほころぶ。
一方、幸はそんな夕をしっかりと抱きしめている。まるで我が子を大切に守ろうとする母親の面影が見える。
そんな仲睦まじい光景など気にもとめていないのか、容赦のない葉菜の声が幸の鼓膜を刺激する。
幸は小さくうめきながら、薄目を開けて大きなあくびをする。
「んー………ふあぁぁ、おはよー………」
ゆっくりと幸が起き上がろうとするが、脚と胸に質量を感じて止まる。
布団をめくろうと右手を動かすと、右手が髪に触れていることに気づいた。
自分のではない。この髪質は―――――――――
「夕、起きなー、朝だぞー」
髪をほどいた右手の肘で夕の頭を優しく小突く。
夕が「ん」とか細く声を上げる。
それを起点に、だんだんと夢の世界から現実へと意識が帰ってくる。幸が夕の頬をつつくと、夕の目が開いた。
「あ、おはよう夕」
「うん、おはよーう………え?」
ぼんやりと返事をした夕だったが、今の自分の姿勢に気づき、未だ半分夢の中にある意識が完全に帰ってきた。
それもそうだろう。
今の夕はがっちり幸に抱きつき、脚まで絡んでいるのだから。
しかも人前で。
「おー、夕おはよー」「お早う黒森さん」
葉菜と凜の朝の挨拶に返事を返すことなく、顔を赤くした夕が照れていることを気づかれたくないのか、幸から離れて布団の中に潜り込んだ。
もう手遅れだが。とりあえず起きてよかった。
「で、そこの紗愛は起こさなくていいのか?」
のそのそと布団から出てきた幸が、ここまで一切触れられていない紗愛に気づく。
「あ………紗愛はとんでもなく寝起きが悪くて………」
「新城さーん、朝よー、起きなさーい」
凜が紗愛のもとへ寄り、優しく揺すりながら紗愛を起こそうとする。しかし反応は皆無。
「おい紗愛ー、起きろって」
幸が枕を投げるも、変わらず反応は無し。
仏もたじろぐ反応の無さ。
近い将来教祖になるのではなかろうか。
葉菜が紗愛の布団を掴み、全力で布団を翻し、紗愛の体を抱き抱えて耳元で、
「紗愛ーーー!起きろーーーー!」
と叫んだ。
普通に考えて目の前の人を起こす声量ではない葉菜の声。
それは部屋の壁をくぐり抜け、順に部屋を巡っていき先生の耳まで届いた。
その葉菜の爆音を受け、先生が無視するはずもなく。
やがてドタドタと廊下を駆ける音が今度は部屋の中へ。
駆けてきた先生は、紗愛が起きるよりも早く。
「何事ですか!」
と、ドアを吹き飛ばしそうな勢いで部屋に飛び込んできた。
「あ、先生お早うございます」
この状況、凜だけが冷静に朝の挨拶をする。
息を切らして慌てる先生をよそに、変わらず布団のなかでマイペースな寝息をたてる紗愛がいた。
どーもイロハですー。
およそ1ヵ月ぶりの投稿…申し訳ない!
かといって久しぶりの割には内容も
別に多くない…申し訳ない!(2回目)
ですけど………かわいいですよね?(反省しろ)
朝みんなが起きるだけの話なのに、
そこそこかわいく書けてませんか?(反省しろ)
とはいえ起きてないキャラもいますが………。
ちなみに筆者は紗愛タイプです。起きません。
はい、後書きが長くなりそうなので、
この辺で締めます!また次話にて!




