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鉄の世界に咲く花は  作者: イロハ
二捻生
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三半規管大打撃

先生が一旦グラウンドから姿を消している今。

葉菜は指示通りにP1の傍らに立ち、他のクラスメイト達が続々と乗り込んでいくのを、遠目にぼんやりと眺めている。


今から、自分もこれに乗って動かすのか――――――なんていうように気を張ることは一切なく、両手を後ろに組み、上体を左右に揺らし、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で先生が来るのを待っている。


『おい、随分と余裕そうだな』


挙句に鼻歌まで歌い出していた葉菜は、先生の接近に気付かず、声をかけられ漸く歌が止まった。


『わっ、ビックリした………。全然気付きませんでした』


『もっとオドオドビクビクしてるもんだとばっかり思っていたがな。まあやりやすい分には歓迎だ。よし、乗るぞ』


そう言って、カンカンと音をたてながらP1に取り付けられている梯子を登っていく。

葉菜も先生が登り終えるのを見届けた後に、ゆっくりと梯子の1段目に足をかけた。


=======================



『さて……………と、ヘルメットは被ったか?』


『はい、大丈夫です』


先生からの確認に、篭った声で返事をする葉菜。

顔の前も含め、バイザーによって首から上は全て隙なく覆われるタイプのヘルメットなため、自分の声が跳ね返ってきて少しうるさい。


『始めるぞ。最初は飛ばずに、エンジンだけ回してタイヤで前進するところからだな』


戦闘機型の兵器は、人型の兵器と比べれば格段に空中での姿勢制御は楽だが、幾らシミュレーションを重ねているとはいえ、素人の初操縦でいきなり飛翔するのはあまりにも危険すぎる。


『前進から、分かりました』


両脚の間に挟んでいるレバーを左手で握り、フンッと気合を入れる。

空いている右手で機体のエンジンを入れ、十分に温まったところで―――――――――――


『――――――――進め』


『はいっ!』


左手に力を込めることで、レバーが徐々に前へと傾いていく。

そして、レバーが倒れていくにつれて、ゆっくりと前へ進み出すP1。


『スピードは出しすぎずだ。今回は50km/hまでとする』


右側に取り付けられたメーターを流し目で確認しつつ、スピードを上げていく。


程よいスピードまで上がったところで、レバーを固定し、あとは機体が左右にブレないよう制御することに専念する。


『よし、止めろ』


という先生からの指示に対し、葉菜はレバーのロックを解除し、先程までとは逆に力を抜いていく。

そうすることでP1は少しずつ推進力を失っていき、やがては停止した。


『スピードの超過は無し、無駄な機体の揺れは…………まずまずってとこか』


口内で霧散するような小さな声で、葉菜の操縦の評価し、手に持つ資料へとメモしていく。


『っふーー……………………』


神経という神経を集中させていたため、半ば忘れられていた呼吸を再開する。

欠乏しかけていた酸素を全身へ巡らせようと一生懸命に横隔膜を上下させる。


『それじゃあ、一旦どいてくれ』


と、記録し終えた先生の声が背後から届いた。

汎用の戦闘機型は後退できるモデルが非常に少なく、このP1もその例に漏れない。

そのため、先生の操縦によって1度飛翔し、空中での旋回を行うのだ。


『初の飛行が私の操縦で…………というのは残念だろうが、そこはまあ我慢してくれ』


『いや、むしろ楽しみです』


葉菜が立ち上がり、入れ替わりで先生が座る。

練習機であるが故に、コックピット後ろの壁には本来教師が装着する安全ベルトが取り付けられている。

自分の操縦を終えた葉菜が、先程まで先生が装着していたそれをぎこちなくも装着する。


『飛ぶぞ。ひっくり返らないようにしっかり踏ん張っておけ』


そう言うと、返事をする間も与えず操縦を始める先生。

P1は短い滑走ののち、宙に浮いた。

P1は比較的長めの滑走路を必要とする機体なのだが、それよりも遥かに短い滑走で飛ぶことに成功している。


これは、実力のあるパイロットだからこそのなせる技だ。


「うわあああああああああ!?」


旋回する機体によって生まれる遠心力に体が強く左へと押し流される。


『どうだ?気持ち悪くなったりしないか?』


『大丈夫………………ですけど、キツイ!!』


遠心力に耐えながら返答する。

せっかくの初飛行だったが、予想外に筋トレをさせられているうえに距離が短ったため、楽しむことは出来なかった。





『おい、何やってるんだ、操縦席に戻れ』


『あっ………………はい』


コックピットの後ろでベルトに護られている………………というかもはや拘束されている様な葉菜へ、先生が慈悲なく次を促す。


三半規管へ猛攻をくらい、満身創痍の葉菜だったが、機体の揺れに負けていては兵士にはなれない。操縦技術の向上以外に、三半規管のトレーニングも兼ねて、再び操縦席に座った。

みなさまこんばんは、イロハです。

あるいはおはようございますこんにちは。


なんと、前回の投稿から今回までの間で、

『ブクマ50&累計PV10000』を達成しました!

本当にありがとうございます!!

今後も頑張っていきますので、

応援よろしくお願いします!!


感想やブクマなど、お待ちしております!


それでは、今回はここで終わります。

また次回もよろしくお願いします!


【次回投稿予定日は 7月5日 22時 です】

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