才能
「…………………!?」
夕が座る操縦席席の後ろに立つ宮井先生は、あまりの驚きに喉が詰まり、音もなく口だけが開閉している。
エリスムの動きが止まり、静寂となったコックピット内に響くのは、先生がペンを取り落とした音のみだ。
「先生………………次は?」
己がとった行動が如何に衝撃的なものかを理解していない夕が、後ろを振り向き、先生に次の指示を仰ぐ。
「そ、そうですね………………ですが、そろそろ時間ですし、今日はこれまでにしましょう」
「わかり、ました。ありがとう、ございました」
操縦席から立ち上がり、ペコッと腰をおり曲げる夕。
それに対し、同じく頭を下げて応じる宮井先生へ、夕が細々と話しかけた。
「あの、先生………………お母さんは、元気ですか?」
悲しげな少女からの切実な問いかけに、先生は思わず硬直する。
その問に含まれる夕の気持ちを知っているが故に、胸を締め付けられる錯覚に陥る。
宮井は1度息をつき、自らを落ち着かせる。
その後、とても指導する立場である教師らしからぬような、優しい語調を心がけながら返答した。
「大丈夫ですよ。お母様は、今も第一線で活躍してます」
夕の表情に安心したようなものが混じる。
だが、悲しみを払拭するには至らず、複雑な面持ちのままに、夕はエリスムを後にした。
機内に1人残された宮井は、先程の目の当たりにした衝撃に鼓動を加速させながらエリスムを操縦し、元の位置まで戻す。
「もしかしたら……………とは思っていたけど、まさかあれほどとは……………………」
慣れた手さばきで機体を動かしながら感想を吐露する。
彼女は、今日行う予定だった基礎的な操縦技術を完璧すぎるほどにこなしただけでなく、空中での姿勢制御すらも難なくこなしてしまったのだ。
ある程度の操作方法やバランス制御の練習はシミュレーションによって予め学んではいるものの、それを実際の機体で、しかも初操縦で成功させてしまうのは、はっきり言って『異常』である。
「あれだけの才能、もしかすると…………………いや、もしかしなくても雛乃さん以上…………………」
自分の発言にすら思わず身震いする宮井。
エリスムの操作を終えたところで、再び己を落ち着かせようと大きく深呼吸をし、落としたままにしていたペンを拾い上げる。
「黒森さんと中嶺さん、あなた達2人がこれまで通り仲良く力を合わせていけば、必ず目的は果たされるわ………………」
バインダーを腕に抱き、愛する生徒を思い浮かべながらそう呟く。
カンカンカンと、次の生徒がやってきたことを知らせる足音が耳に届き、宮井は心を入れ替える。
改めて教師としての立場を思い出し、普段と同じ姿勢で次の生徒と向き合った。
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「夕、どうだった?」
「うん、結構、いい感じ、だったよ」
「そうか。こう言っちゃなんだが、流石だよ」
「お母さんパワー、かな」
シミュレーション室の端で、2人並んでこそこそと会話する。
内容はお互いの実機訓練の感想と結果、そして宮井先生との会話内容だ。
「先生と、お義父さんに、ついては、話した、の?」
「まあうっすらとだけどな。夕こそ、お母さんのことは話したのか?」
「私も、少しだけ。ちゃんと、元気だって」
「………………そうか、よかったな」
「まずは、専用機、試験、目標だね」
小さくガッツポーズをする夕。
意気込む夕の頭に手を置いて、幸が応える。
「そうだな」
と、小さく、一言。
みなさまこんばんは、イロハです。
あるいはおはようございますこんにちは。
全国的に梅雨入りしまして暫く、
青い澄んだ空を見ていないような気がします。
外に出れば淀んだ空か、それに付属する
雨のアンハッピーセット、気が滅入りますね(苦笑)
まあ天気が良かろうが悪かろうが、
休みの日は家で過ごすタイプの人間なので、
行動にさして影響は無いんですけどね……………。
天気という概念が形骸化しているこの
「鉄花」の世界では、雨で予定が流れるというのが
ない、というのは少し羨ましい気がします(笑)
それでは、今回はここで終わります。
お読みいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いします。
※Twitterもあります
https://twitter.com/iroha_TETUHANA
【次回投稿予定日時は 6月17日 22時 です】




