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#027「山吹色」

#027「山吹色」

@シュエットの家、ダイニング

東海林「人が恋に落ちる瞬間を、初めて目の当たりにしました」

フィッシャー「俺も、あんなに分かりやすいフォーリンラブの光景は、一度も見たことがなかったよ」

シュエット「二人とも、いいところで帰ってきましたよね、ビッキー?」

ビクトリア「あぁ。これ以上ないベストタイミングだよ」

――ビッキーの作戦というのは、ルチアにチャーリーを引き合わせ、恋仲にさせてしまうというものだった。自分たちが見たのは、まさにルチアがチャーリーに一目惚れせんとする場面だったのだ。

シュエット「僕としてはルチアに追い回されなくなったのは有り難い限りですが、うまく行きますかね、あの二人」

ビクトリア「大丈夫。中身は残念だけど、見た目は一族一番のハンサムだから」

――ルチアは手頃な財布が見つけ、チャーリーは人形を手に入れた。破れ鍋に綴じ蓋、とでも言えば良いのだろうか? 扱いが酷すぎる気もするが、因果応報ということで。

東海林「そういえば、ドア越しに聞いてしまったのですけど、病気のお父さんに会いに行かなくて良いのですか?」

ビクトリア「良いの、良いの。どうせ嘘だから。一芝居打って騙そうったって、そう旨くはいかないさ」

シュエット「手紙を代筆した使用人が、メッセージを残してましてね。印のある単語を繋ぐと『旦那様は仮病をお使いです』という一文になるように細工されていたんです」

フィッシャー「フーン。悪いことを企んでも、うまくいかないもんだな」

――狡猾さで言えば、ビッキーの作戦も決して褒められたものではないけど。毒をもって、毒を制す。

シュエット「そのうち、ルチアの化けの皮が剥げて、チャーリーが後悔するでしょうね。お節介で、心配性で、世話焼きで、粘着質で、感情をコントロールするのが苦手。精神科を受診すれば、解離性障害とでも判断されそうな人物ですから」

――ビッキーの作戦に乗じたシュエットも、なかなかのワルだったようだ。助さん格さんかと思ったら、悪徳商人と悪代官だったみたいだ。越後屋、お主も悪よのぉ。

  *

@シュエットの家、一階廊下

シュエット「はい。……はい、わかりました。ショージにも伝えます。それでは、おやすみなさい」

シュエット、受話器を置く。東海林、シュエットに歩み寄る。

東海林「誰からの電話だったんですか、シュエット?」

シュエット「あぁ、ショージ。チュンリーからの電話で、シュエメイが無事に出産を終えたそうです。産まれたのは女の子で、母子ともに元気そのものなのだそうです」

東海林「ワァ。良かったです」

シュエット「それで、せっかくだからお祝いしようということになりまして、明日の正午、一度出版社に集合したあと、病院に向かうことになりました。つきましては」

東海林「自分も一緒に来てくれないか、ということですね?」

シュエット「その通りです。話が早くて助かります。いかがでしょう?」

東海林「良いですよ。ご一緒します」

シュエット「ありがとう。きっとチュンリーたちも喜びます」

シュエット、階段のほうへ歩き出す。

東海林「あのっ」

シュエット、立ち止まり、振り向く。

シュエット「何でしょう?」

東海林「フィッシャーと一緒でも良いでしょうか?」

シュエット「構いませんよ。僕は原稿を急いで仕上げないといけませんから、フィッシャーには、ショージから伝えてください」

東海林「はい。ありがとうございます」


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