表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/40

#025「目論見」

#025「目論見」

@シュエットの家、東海林の部屋

――チャーリーが去ったあと、入れ違いでフィッシャーが帰ってきた。期待に胸を膨らませて出掛けていったバイオリン青年は、意気消沈して帰ってきた。首尾は、わざわざ問うまでもなさそうだ。暴走して、撃沈したのだろう。

フィッシャー「聞いてくれよ、ショージ。いい線行ってると思ったら、全然駄目だった」

東海林「それは残念でしたね。何て言われたんですか?」

フィッシャー「『君の演奏は、ソリスティックで調和を乱す分子にしかならない。もっと周りの音を聴きながら弾けないと、オーケストラには相応しくない』だってさ。もう俺、穴があったら落っこちたいよ」

――歯に衣着せず、ズバッと一刀両断。なかなか手厳しい指摘をされたものだな。事実だとしても、もう少しオブラートに包んだ言いかたがありそうなものなのに。自分だったら、落ち込んだまま立ち直れない。

東海林「ずいぶんストレートに批判されたんですね」

フィッシャー「ウン。でも、悪いことばかりじゃなくてさ。テクニックは褒めてもらえたんだ。だから、そこを伸ばしつつ弱点を改めていこうと思うんだ。また明日から頑張るぞ!」

東海林「前向きだね。フィッシャーは不安にならないの?」

フィッシャー「何で不安になるの?」

東海林「自分は、世間一般からすれば、自分の才能は、それほど大したことないんじゃないかと、ふと考えることがあるんです」

――アレ? 何で自分が悩みを告白してるんだろう。フィッシャーを褒めて元気付けるつもりだったのに。

フィッシャー「自分で自分には才能があると信じなきゃ、大事な場面で充分にポテンシャルを発揮できないし、自分で保障しなきゃ、他に誰も保障してくれないよ?」

フィッシャー、東海林の背中側からソッと抱き付き、頭を撫でる。

東海林「そうですね。自分で才能を疑っていては、誰も信用してくれませんよね」

フィッシャー「よしよし。ショージは良い子だね」

東海林「フィッシャー。自分なら、もう慰めなくもらわなくて結構ですから」

フィッシャー「もうちょっとだけ、このままで居させて」

――何も考えず、悩みなんて一つも無いように見えても、心の内では深く思いを巡らせてるんだろうな。気持ちが落ち着くまで、させたいようにしておいてあげよう。

  *

@シュエットの家、キッチン

ビクトリア「この皿で良いのか?」

シュエット「いえ。今夜は中華料理なので、青磁の皿を出しましょう」

ビクトリア、手に持った皿を戻し、別の皿を出す。

ビクトリア「この八角形の皿か?」

シュエット「それです。そこに置いておいてください」

ビクトリア「了解」

ビクトリア、皿を作業台の上に置く。

ビクトリア「しかし、面倒なことになったな」

シュエット「お互い、厄介なことになりましたね」

ビクトリア「変なことを聞くようだけどさ。そのルーシーという女は、どういう男が好みなんだ?」

シュエット「明け透けにいえば、容姿が優れていて、資力に富んでいる人物ですね」

ビクトリア「性格に難があっても、眉目秀麗で大金持ちなら良いのか?」

シュエット「身も蓋もない言いかたをすれば、その通りです」

ビクトリア「なるほどな。そういうことなら、うまいこと片付けられそうだ」

シュエット「したり顔を浮かべてますが、何か妙案でも思いついたのですか?」

ビクトリア「あぁ。タイミングさえ間違えなければ、何とかなる。ちょっと耳を貸せ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ