第22話「初ダンジョン・小鬼の洞穴、2日目(3)」
ダンジョン『小鬼の洞穴』探索2日目の昼過ぎ。
6階層に足を踏み入れた俺とテオは、苦戦することもなく先に進んでいった。
能力差の関係でこの辺りの魔物にダメージを食らうなんてありえない。
そう分かった上で、戦い慣れた俺が毎回サクッと戦闘を終わらせたからだ。
夕方には、9階層の最深部に到達。
ダンジョンボスが待ち構える10階層へ続く階段も早々に見つける。
だが大事をとって下りるのは翌日に回し、早めにテントで休むことにした。
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その夜、テント内。
翌日のボス戦に向け、俺たちは作戦会議をしていた。
「……ってことでタクト。作戦を立てる前に、改めて情報を整理していくよ!」
「おう!」
広げたのは、事前に集めてきた『小鬼の洞穴』の情報だ。
基本のダンジョン情報は、冒険者ギルドから無償でもらえることになっている。
元々『冒険者』という職業は、何でも屋に近かった。
依頼内容は、掃除の手伝い、魔物討伐、素材採集などさまざまだ。
特に高額報酬が発生する依頼の場合、強さが必須となる。
冒険者には必然的に、高い戦闘力を持つ者が集まりやすくなっていた。
だが魔王が復活した3年前から状況が変わった。
依頼のほぼ全てが魔物討伐関連となったため、戦いに自信が無い者は冒険者を廃業し、残ったのは腕に覚えがある者ばかり。
国や街は魔物への対抗手段として、腕利きの冒険者に任せることを決めた。
その支援の一環が、ダンジョンに関する情報提供への懸賞金だ。
集まった情報は、ギルド側で真偽を確かめた後、無償で一般公開されるのだ。
「で、ダンジョンボスについての情報がこの辺だね」
目の前に広げた見取り図を前に、テオ主導で話し始める。
「まずこれが、小鬼の洞穴の最下層・10階層の見取り図。9階層に繋がる階段と通路、それと30m四方ぐらいの部屋が1つだけ。そんで、ここがダンジョンのボス部屋でもあるんだよね」
「この扉からはいつでも逃げられるんだよな?」
見取り図内の『ボス部屋』の扉部分を指さしつつ、俺がたずねる。
「うん。戦闘中危なくなったら、部屋から出さえすれば、ボスはそれ以上追ってこないはずだよ。ま、普通に逃げられりゃそれでいいんだけど、そううまく行かない状況の時もあるだろ? そういう時に便利なのが、この『発煙手榴弾』なんだぜっ」
とテオは魔法鞄から、手のひらサイズの『発煙手榴弾』を取り出した。
「あぁ……そういえば『逃走用に一応買っとけ』って言ってたもんな」
ゲーム中にも存在する『発煙手榴弾』。
刺さっているピンを抜くと煙幕が発生するから、逃走や奇襲でよく使われる。
「まぁこのボスなら使わなくても余裕だと思うけど……何があるか分かんないし」
「持っとくに越したことはないか」
「そうそう。で、10階層に出現するボスはLV5のゴブリンリーダーなんだけど、普通とはちょっと違うんだよね……」
テオは喋りながら、見取り図の下に重ねてあった情報メモを取り出した。
既に知ってはいるものの、俺も念には念を入れ目を通していく。
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【ダンジョンボス情報】
名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン
LV 5
HP 103 / 103
MP 24 / 24
物攻 44
物防 30
魔攻 11
魔防 18
■状態
健康
■称号
ゴブリンの統率者、土の魔物、魔王の僕
■スキル
剣術LV3、同族召喚LV3、土特性LV1、魔誕の闇LV5★、魔王の援護LV5★
■装備
錆びた剣(物攻+8)、破れた毛皮(物防+3)、ぼろぼろのマント
●出現
小鬼の洞穴10階層・ボス部屋
※一度倒した後は8時間程度出現しない模様
●特徴
戦闘開始時に【同族召喚LV3】を使用
※以降は仲間ゴブリンが3体以下になると使用
※LV4以下の棍棒・槍・弓ゴブリンをランダム召喚
※召喚できる仲間は、場にいる者と合わせ10体
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「……称号・魔王の僕……」
基本能力数値や特徴などは、普通のゴブリンリーダーと変わらない。
だけど特別な称号により解放された【魔誕の闇】【魔王の援護】が付いている。
この【魔誕の闇LV5★】こそがダンジョン化の要因だ。
周辺を濃い闇属性の魔力で支配し、狂暴な魔物が生まれやすいエリアに変える。
だから、このスキルを持つ魔物を『ボス』と呼ぶ。
倒せば復活までの8時間だけ、そのダンジョンでは魔物が生まれなくなる。
問題は【魔王の援護LV5★】である。
こちらは特定の条件下で、魔王の援護により自身が強化されるスキルだ。
ギルド情報では「どのような条件なら強化されるのか?」を過去に多くの冒険者たちが試したものの、結局誰も解き明かすことが出来なかったらしい。
苦笑いしながらテオは言う。
「そりゃそうだよね……まさか【魔王の援護】の発動条件が、『【光魔術】を使える者、つまり勇者が討伐パーティにいること』だなんてさ……」
勇者は、世界でただ1人しか存在しない。
普通の冒険者パーティでは発動条件を満たせるわけがない。
「……タクト、戦闘開始時にボスが自動強化されるんだよな?」
「ああ。どれぐらい強化されるかは、行ってみないと分かんないけど……たぶん、そんなに無茶な数値にはならないとは思ってる」
スキル【魔王の援護】は『その時点の魔王の能力値の10%』を加算し強化する。
魔王の能力値はLV999まで全て計測されていて、攻略サイトで確認可能。
そして『魔王』のLVは、有志の検証で「その時の勇者と同じ」と判明している。
つまり、ダンジョンボスの強化数値は、勇者の現在LVで確定するというわけだ。
現在の俺はLV11。
そしてあくまでゲームの攻略サイト情報にはなるが。
LV11勇者に対応する【魔王の援護LV5★】発動状態ステータスがこちら。
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名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン
LV 5
HP 653 / 653
MP 924 / 924
物攻 80
物防 135
魔攻 101
魔防 123
■状態
発動中【魔王の援護LV5★】(HP+550、MP+900、物攻+36、物防+105、魔攻+90、魔防+105)
■称号
ゴブリンの統率者、土の魔物、魔王の僕
■スキル
剣術LV3、同族召喚LV3、土特性LV1、魔誕の闇LV5★、魔王の援護LV5★
■装備
錆びた剣(物攻+8)、破れた毛皮(物防+3)、ぼろぼろのマント
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プレイヤー有志の検証では「各ダンジョンボスは、『各ダンジョンの攻略推奨LV勇者1人のソロパーティ』でも何とか倒せる強さ」であることも判明済みだ。
ダンジョン『小鬼の洞穴』の攻略推奨LVはたったの5。
今回はLV11の俺以外に、LV38のテオもいる。
しかも【能力値倍化LV5★】で俺は大きく強化されていて、相当有利なはずだ。
たぶん何とかなるとは思うけど、準備だけは入念にしておこう。




