第21話「初ダンジョン・小鬼の洞穴、2日目(2)」
小鬼の洞穴を探索していた俺とテオは、6階層に下りる階段を見つけた。
ここからは、出現する魔物の種類が変わる。
5階層までは、棍棒や槍等を武器に、近接で戦う魔物しか出てこない。
だけど6階層からは加えて、短弓を装備した弓ゴブリンが出現する。
俺にとって初めての「遠距離攻撃相手との実戦」というわけだ。
とはいえゲームを思い出しての脳内シミュレーションだけは何度も重ねてきた。
相手はあくまで非力なゴブリン。
使う弓も小さいし、飛距離も威力も怖がる必要はないはずだ。
テオも引き続きフォローしてくれるわけだしな!
念のため、スキル【気配察知LV1】が発動しているのを確認する。
これさえあれば半径30m以内の気配が分かるから、さらに安全に進めるはずだ。
それから俺とテオは6階層へと階段を下り、石造りの通路を進んでいった。
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しばらく歩いた頃、【気配察知】にピコンッと何かが引っかかった。
俺は「あっ」とつぶやき立ち止まる。
「テオ、左方向30mに魔物が4体」
「…………棍棒2体、槍が1体……あ、弓も1体いるね」
俺が【気配察知】できるのは、だいたいの距離や位置ぐらい。
それ以上は分からない。
さらにテオは音を聞いて、魔物の種類や装備を判別していた。
「……移動早いな」
「こっちに気付いて走ってきてるね……来るよ、タクト」
「おう」
小声の早口でサッと会話し、素早く武器を構えた。
剣&盾装備の俺が前列、鞭装備のテオが後列。
恒例の隊列にて、10mほど先の曲がり角に注意を向けて待つ。
数秒後。
弓ゴブリンが姿を見せ、同時に俺目掛けてシュッと矢が飛んできた。
とはいえ事前に分かっていれば、何とかなる。
素早く右に避け、矢をかわしきった。
俺が矢に気をとられた一瞬。
棍棒ゴブリン2体が、ジャンプで同時に殴りかかってきた。
1体は盾で受け流して地面へ転ばせる。
もう1体を素早くかわしその背中へ剣を叩き込む。
バッサリ斬られた魔物は悲鳴とともに絶命した。
だが槍ゴブリンへの反応が少し遅れた。
低めの位置から、時間差で一直線に突っ込んできたのだ。
必死に右足を上げて避け、やや不格好だが何とか突きをかわす。
と同時に背後から斬りつけ消滅させる。
――その瞬間。
俺の背中に鋭い衝撃が走った。
「イテッ」
思わず短く叫び、のけぞってしまう。
すかさず横目で確認すると、矢が当たった模様。
幸いにも『革の軽装鎧』の上だったから、矢は刺さることなく地面に落ちた。
俺は咄嗟に、弓ゴブリンをキッと睨んで走り出す。
曲がり角にいた弓ゴブリンは驚いたらしい。
慌てて弓を射るものの、どう見ても構えがブレブレだ。
矢は明後日の方向へと飛んでいく。
その隙に、弓ゴブリンを斜め正面から剣で斬る。
即座に振り返り、背後から襲ってきた最後の1体も思いっきり斬りつける。
残った2体は同時に粒子となって消え去った。
襲ってきたゴブリン全てがドロップ品を残し消滅。
それをしっかり確認したところで、張り詰めていた緊張がやっと解ける。
「おつかれさん!」
いつの間にか背後に来ていたテオ。
爽やかな笑顔が少しむかつく。
「テオ……1体ぐらい手伝ってくれてもいいんだぞ?」
「だいじょぶだいじょぶ、タクトならまだ全然余裕だって」
「いやいや、ギリギリだったし――」
「何言ってんの? あんな低LVゴブリンなんかに負けるわけないじゃん、タクトの今のステータスならさっ」
「え?」
「とにかく1度、自分のステータス見てみな!」
「お、おぅ……」
言われるがまま、【偽装】を解除してからステータスウィンドウを開いてみる。
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名前 タクト・テルハラ
種族 人間
LV 7 → 11
HP 124 / 78 → 124
MP 74 / 54 → 74
物攻 58 → 82
物防 33 → 46
魔攻 32 → 58
魔防 31 → 37
■状態
発動中【能力値倍化LV5★】(HP+62、MP+37、物攻+36、物防+12、魔攻+29、魔防+11)
■称号
勇者、世界を渡りし者、神の加護を受けし者
■スキル
光魔術LV1、剣術LV1、能力値倍化LV5★、収納LV1、技能習得心得LV1、鑑定LV1、神の助言LV1、言語自動翻訳LV1、攻略サイトLV1、偽装LV1、防御LV1、≪NEW≫気配察知LV1
■装備
手作りの片手剣(物攻+10)、ミスリルバックラー(物防+15、魔防+15)、革の軽装鎧(物防+7)、布の服、革のブーツ、ある旅人のマント
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「……あ」
想定外の数値。
テオが笑顔で補足を入れてくる。
「ていうかこの能力値って、普通の剣士のLV20強ぐらいじゃん? 小鬼の洞穴に出てくるゴブリンはLV4以下の雑魚ばっかなのにさ……むしろどうやったら、あいつらがタクトにダメージ与えられるんだよっ!」
「……」
先日テオに聞いたところ、現実のステータス概念もゲームの設定通りだった。
能力値とは「本来の肉体能力」に「かかる魔力の補正」を加えたものだ。
見た目だけじゃ判断できず、か弱い子どもが高い攻撃力を持つパターンもある。
例えば物防なら、常時「物理攻撃を防ぐ魔力シールド」が張られたようなもの。
能力差が大きすぎる相手の攻撃は、そのシールドに傷すらつけられない。
さっきの弓攻撃のように、ダメージ量は0となってしまうのだ。
「……原因は、【能力値倍化】スキルか……」
称号『世界を渡りし者』で解放される【能力値倍化LV5★】。
常時、全ての能力値が2倍になるスキル。
その恩恵は、これからLVが上がっていけばいくほど大きくなるだろう。
ようやく納得した俺。
これなら、想像以上に安全な旅ができるんじゃないかと希望を持った。




