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ブレイブリバース!~二人で魔王倒せるの?会社員なゲーマー勇者と器用貧乏な吟遊詩人が、データ通りじゃないRPG異世界(101周目)を独自ルートで攻略した話~  作者: 鳴海なのか
第1章 初めての街、初めての仲間

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第19話「初ダンジョン・小鬼の洞穴、1日目(2)」


 小鬼(こおに)洞穴(ほらあな)1階層での初戦を終えた俺とテオ。

 その後しばらくは特にピンチな場面はなかった。


 探索と戦闘を繰り返す中で、2階層へ下りる階段を発見。

 そのまま次の階層へと足を踏み入れ、さらに奥へと進んでいく。




 ダンジョンに潜ってから数時間後。

 腰につけた懐中時計をのぞきこんだテオが気付く。


「もうこんな時間かぁ~……ねぇタクト、キリが良いところで晩ごはん食べない? 今夜の寝床も用意しなきゃだし」

「……そうだな」


 度重なるゴブリンとの連戦で心身ともに疲れ切った俺に、反対する理由はない。




 架空世界(ゲーム)のプレイ中は、戦闘中以外いつでもセーブ&中断できた。

 冒険を再開する時は、セーブ時点からスタートだ。


 だが現実世界(リバース)ではそうもいかない。

 しかも危険あふれる魔物の巣窟(そうくつ)・ダンジョンの中。


 休息をとるなら相応の準備が必要だろう、と覚悟する。





*************************************





 まもなく下階へと続く階段を見つけた。

 だけどあえて今日のところは、2階層に留まり休むことにする。


 目をつけたのは、階段近くの地面が平らで開けた場所。

 2人で協力し、周辺の魔物(ゴブリン)をサクッと殲滅(せんめつ)


「魔物が復活するまで1晩ぐらいかかるから、これでゆっくり眠れるはずだよ」

「へぇ~、そういうもんなのか……」

「念のため【隠密】も発動しとくね~」


 スキル【隠密LV1】は、自分中心に半径3mの気配を消せる。

 その効果範囲にドームテントを設営していく。




 野営(やえい)準備を終えたところで、テオが辺りを見回し、満足そうにうなずいた。


「んー……うん、こんなもんかなっ♪」

「意外と簡単なんだ……」


 予想外の事態に、ポカンとする。


 俺にとっては初めての野営。

 張り切って(のぞ)んだが、設営開始から終了まで、かかった時間はほんの1分。


 魔法鞄(マジカルバッグ)から取り出したのは、小さく畳んだテント。

 付属の魔石(ませき)に魔力を()めて膨らませ、地面に固定し終了。


 その工程もテオが全部終わらせたため、俺はただ見ていただけだった。



「ちっちっち、普通はもっと大変なんだよっ」


 拍子抜けしている俺に、テオが指をふる。


「そうなのか?」

「うん。だってまずそもそも、【収納(アイテムボックス)】や魔法鞄(マジカルバッグ)を持ってない冒険者のほうが圧倒的に多いんだからさ!」

「あ……」


 そういえば冒険者ギルドのダガルガも、そんなことを言ってたな。


 もし【収納(アイテムボックス)】が無かったら、大荷物を持って移動しなければならない。

 食料、予備装備、薬、野営用品……必要なアイテムは数多い。

 しかも帰りは、道中で入手したドロップ品も持つことになる。


「……荷物を運ぶだけでも大変ってことか」

「うん。だから普通の冒険者パーティは、荷物をなるべく軽くして分担したり、荷物持ち専門のメンバーを雇ったりするんだよ」

「なるほど」

「それにさー、野営初めてなタクトは知らないと思うけど……このテントって、実はすっっっっっっごく貴重な魔導具なんだからね?」

「へ?」


 多少お洒落な()()()()()()()()にしか見えないが……。


「あっ! その反応、やっぱりただのテントだと思ってたなっ」


 不満そうに口を尖らせるテオ。


(わり)ぃ……あ、【鑑定】してみていい?」

「もちろん! 鑑定したら、このすごさがよ~っく分かるはずだよっ」




 改めてテオのテントを眺めてみる。


 テントの布地に施されているのは、控えめな刺繍や金具・布の切り替えなど。

 決して派手すぎず、洗練された雰囲気を醸し出している。

 言われてみると、凄く良いものっぽい気もしなくもないような……。


 ……ま、見れば分かるだろ。


 俺はテントを【鑑定】し、開いたウィンドウをのぞき込んだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 ニルルクの究極天幕(アルティマテント)

種別 魔導具

売却目安価格 258000R(リドカ)


 ■説明■

ニルルク村の職人たちが技術を結集し製作したテント

火・水・風・土の最高級魔石を使用した魔導具

【耐久加工LV5★】【防汚加工LV5★】【防水加工LV5★】【防燃加工LV5★】【防音加工LV5★】【消臭加工LV5★】


 ■神の一言メモ■

よくもまぁこんなすごいもん作ったのう……ワシも泊まってみたいわい!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「!!!!!」


 俺の想像を遥か飛び越えた、まさに“究極”というべき性能の魔導具。



 ――驚きすぎて、何も言葉が出ない。



 『魔導具』は、『魔石』を使って作るアイテムの総称だ。

 魔石には特定の術式が刻まれていて、魔力を()めると発動できる。

 その効果は「術式」「組み込み方」「流し込む魔力量」等で決まる他、魔術スキルを持たない者でも使うことができる。



 また【耐久加工】などは、ゲームにも存在した生産スキルだ。

 アイテムへ特殊効果を付与できる『加工(コーティング)系』に分類される。

 その詳細はこちら。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

耐久加工:対象の耐久性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

防汚加工:対象の防汚性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

防水加工:対象の防水性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

防燃加工:対象の防燃性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

防音加工:対象の防音性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

消臭加工:対象の消臭性を上昇、上昇値はスキルLV・使用素材で変化

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ブレリバにおけるこの6つは、いわゆる“死にスキル”の代表格だった。

 だがゲームにはそもそも、「壊れる」「汚れる」「臭い」「うるさい」等の概念が存在しなかった。その影響で使いどころが見当たらなかっただけだろう。


 ここは現実だ。

 神様いわく「ちゃんと洗わないと服の汚れがとれない」世界。

 それを踏まえれば、非常に有用なんじゃないかと気付く。


「だとしても、『LV5★』が6つもついてるって、どういうことだよ……」


 頭が痛くなってくるものの「ニルルク村なら」と納得もする。

 あそこは生産技術の最高峰として知られる獣人の職人たちが暮らす村だった。

 金と時間に糸目をつけなければ、まぁ可能ではあるだろう。



 ちなみに一般的な売却目安価格は、購入価格の4分の1。

 街中で買えるテントの価格相場は、販売200R(リドカ)、売却目安50R(リドカ)程度だ。


 対して、このテントの売却目安価格は、258000R(リドカ)


 価格は一般的な物の5160個分。

 1R(リドカ)≒100円説を採用するなら、売却目安は日本円で2580万円。

 購入目安はその4倍で、約1億円。




「……余裕で家が1軒建っちまう値段だぞ……」


 桁が違いすぎて、もはや意味が分からない。


「まー、このテントにはそれだけの価値があるってことさ!」


 得意気に胸を張るテオ。

 

「そんで何が凄いかってことだけど、まず布部分の素材は全部『魔窟女王蜘蛛(まくつじょおうぐも)の糸』だよっ」

「まじかよ……」


 俺はまたもや目を見張る。




 最高級の生産素材として知られる『魔窟女王蜘蛛(まくつじょおうぐも)の糸』。


 魔窟女王蜘蛛は、良質な魔力があふれた特定エリアにのみ現れる。

 生み出す糸にもその魔力が宿っており、美しさや耐久力も最高品質である。


 ただし極レア魔物だから滅多に出会えない。

 糸を入手するならすぐ倒さず、吐き出させ続けたものを採取する必要もある。

 しかも素材が繊細すぎて、LV5の生産スキル持ち以外は扱えない代物(しろもの)だ。


 高級品の中でも希少かつ至高というべき逸品。

 それを惜しげもなくテント1つ分も……。


 常識を超えた贅沢っぷりに、俺は目眩(めまい)がしてきた。





*************************************





 テント内に入った後も、ただただ驚くことしかできなかった。



 そもそも『魔窟女王蜘蛛の糸』の布はそれだけで耐久性に優れている。

 加えて【耐久加工】【防汚加工】【防水加工】【防燃加工】が施されているので、外部から攻撃を受けてもほぼ壊れることがない。



 各種魔石を使った機能面も半端ない。



 ――『土の魔石』の魔法錠(マジカルロック)と、接地床(グランドシート)


 魔法錠(マジカルロック)は、テント入口に、内側から鍵をかけることができる。

 耐久効果と合わせれば襲撃の心配はほとんど無くなるといえる。

 だから他のパーティのように、寝ずの見張りを交代で立てなくてもよいわけだ。


 さらに接地床(グランドシート)は、床を調整する仕組みだ。

 魔力を籠めると、テント底の薄いミスリルと地面が吸着される。

 自動調整で床が安定するから、テント独特の不安定さが気にならなくなる。



 ――『風の魔石』の空調(サーモスタット)


 適温適湿な空気を発生させ、適宜循環させる効果がある。

 これにより一瞬でテントを膨らませられる他、【防音加工】【消臭加工】などと合わせ、自動で極上の快適空間を作り出せるのだ。



 ――『火の魔石』の魔法照明(マジカルライト)


 天井部分のガラス球に明かりが灯る仕組みだ。

 しかも一般的な安物とは異なり、2つの魔石に籠める魔力量を変えることで、灯りの色味や強さを、好みに合わせて自由にカスタマイズできる。



 ――『水の魔石』の寝床(ウォーターベッド)


 床に設置された魔石に魔力を籠めると、床下に収納された『魔窟女王蜘蛛の糸』製のベッド――ここにも【防水加工LV5★】付き――の中に水が流れ、程よい硬さの寝床(ウォーターベッド)が完成する。

 ベッドは最大5台で、必要数だけ配置可能だ。


 ここはテオが一番こだわった部分で、硬すぎず柔らかすぎず、体がすっぽりおさまって気持ちいい、理想の寝心地を実現したらしい。





「……とまぁこんな感じかな。タクト、どう?」


 ひととおりテントの案内を終えたテオが言う。


「もう……凄いとしか言いようが無いんだけど――」

「だよねっ♪ いや~、ほんと素材集めとか、お金稼ぎとか頑張ってよかった~」


 満足そうに笑顔を浮かべるテオ。

 ただ俺には、気になることがあった。


「そもそもなんでテオは、こんなにテント作りにこだわったんだ?」

「だって睡眠大事じゃん!」

「確かに大事ではあるけどさ……」


 元の世界で1人暮らしの会社員だった俺は、寝具にこだわりがなかった。

 ネットで買った最安すのこベッド&布団セット。

 正直それで十分だったし、不満に思ったこともない。


 とはいえ「何にお金や時間をかけるか」は人それぞれ。

 別にテオを否定するつもりはないけどな。


「……理由はそれだけか?」

「うん、そんだけっ!」


 嬉しそうに説明をするテオ。


「俺の場合『旅の吟遊詩人』だから、どっかに家を建てても帰れないんだよね。でもテントなら持ち運べて、旅の間いつでも使えるだろ? これだけ丈夫に作れば交代での寝ずの見張りもしなくていいし、全員でぐっすり寝れると思ってさっ!」

「なるほど……でも、それだけの資金力と技術力の当てがあるなら、なんで自分の戦闘力をアップするための魔導具を作らなかったんだ?」


「え?」


 目を丸くしたテオは、少し考えてから真顔で答える。



「……その発想は無かった」

「まじかよ……」


 俺は思わず、頭を抱えた。



 まぁここは逆に『戦力強化に伸びしろが見つかった』と考えることにしよう。

 人間、伸びしろは大事である。


 攻略サイトには戦闘用の魔導具の作り方(レシピ)も大量に載っている。

 具体的には、そのうちゆっくり検討するか。





*************************************





 そして翌朝。




「……日本に帰ったら、俺……ベッド買い換えようかな」


 あまりにも快適な寝心地に、俺はすっかり心を奪われたのだった。




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